Quantcast
Channel: 碓井広義ブログ
Viewing all 5267 articles
Browse latest View live

「直虎」より、「阿部サダヲの家康」が主役の大河が見たい!?

0
0



週刊新潮で、NHK大河「おんな城主 直虎」について解説しました。

「直虎」見るなら、
柴咲コウより阿部サダヲ
失速が伝えられるNHK大河ドラマが面白い!

ただし、主役の直虎こと柴咲コウではない。

「井伊家同様、今川の支配下にある徳川家康夫妻がいい。家康役の阿部サダヲは、昨年の『真田丸』で演じた内野聖陽よりもタヌキぶりにリアリティがある。その家康を尻に敷いていたと言われる築山殿も、auの“三太郎”CMでS嬢ぶりを発揮する菜々緒がキャラをそのまま持ってきたようで、上手いキャスティング。二人の大河のほうが面白そう」

とは上智大学の碓井広義教授(メディア論)だ。

2月26日放送の第8話「赤ちゃんはまだか」では、桶狭間の戦いに臨み、家康を叱咤激励する菜々緒が印象的だったが、直虎は?

「タイトルから分かる通り、出家中の直虎とは関係のないストーリー。直虎の実家の話であり、すっかり橋田寿賀子のホームドラマのようになっています。それだけ資料に乏しい主役で、ストーリーを作るのは難しいのでしょう」(同)

NHKはこのところ、1年おきに大河の主役に歴史上マイナーだった女性を抜擢しては、失敗している。新島襄の妻(2013年「八重の桜」)然り、吉田松陰の妹(15年「花燃ゆ」)然り。

「知らない人だからイメージも湧かないし、ストーリーがないからダイナミックにならない。安倍政権の“女性が輝く社会”にどれだけおもねっているのか知りませんが、大河の主役まで男女雇用機会を均等にする必要はないですよ」(同)

今週は桶狭間の戦いだが、むろん直虎の出陣はない。

(週刊新潮 2017.03.09号)

書評した本: スージー鈴木 『1984年の歌謡曲』ほか

0
0



「週刊新潮」に、以下の書評を寄稿しました。

スージー鈴木 『1984年の歌謡曲』
イースト新書 980円

NHK朝ドラ『あまちゃん』の主人公・アキ(能年玲奈)の母親、天野春子。彼女が家出同然に上京したのは1984年のことだ。

東京で暮しながらアイドルを目指していた春子は、この年ヒットした松田聖子『ピンクのモーツァルト』、中森明菜『飾りじゃないのよ涙は』、そして小泉今日子『スターダスト・メモリー』などをどんな思いで聴いていたのだろう。

スージー鈴木『1984年の歌謡曲』は84年のヒット曲を発売順に聴き直した批評集だ。歌謡曲の歴史的流れというタテ軸と、リアルタイムの音楽状況というヨコ軸を踏まえ、一曲ずつと徹底的に向き合っていく。

薬師丸ひろ子『Woman“Wの悲劇"より』のサビのメロディを「名曲性の根源」と呼び、この年の「音楽シーンにおける金字塔」だとしている。

また『涙のリクエスト』から『ジュリアに傷心(ハートブレイク)』まで4曲を連打したチェッカーズの革新性を高く評価し、「1984年はチェッカーズの年だった」と言い切る。この独断の妙こそが本書の真価だ。融合していく歌謡曲とニューミュージック。少女性から大人性へと軸をずらしていくアイドルたち。それらの転回点が84年だったのだ。

では、現在の音楽業界はどうなっているのか。柴那典は『ヒットの崩壊』(講談社現代新書)で、かつての「ヒットの方程式」が成立しない背景を精緻に分析した上で、過去にはなかった音楽の可能性にまで言及している。キーワードは「歌の持つ力」だ。


池澤夏樹ほか『作家と楽しむ古典』
河出書房新社 1404円

現代作家による新訳が並ぶ池澤夏樹=個人編集 日本文学全集』。本書では、『古事記』の池澤をはじめ、『日本霊異記』『発心集』の伊藤比呂美、『竹取物語』の森見登美彦などが自身の取り組みを語った。講義形式ならではの質疑応答も古典との距離を縮めている。


内田 樹 『街場の共同体論』
潮新書 890円

ベースは14年に出版された単行本だ。しかし、ほぼ「書き下ろし」と言えるほど手が入った。グローバル化の名のもとに、家庭や学校にも“ビジネスの論理”が蔓延した日本社会。これからの家族、教育、コミュニケーション、そして共同体をどう捉えていくべきか。

(週刊新潮 2017年3月9日号)

「ポスト堀北真希」は誰か、と聞かれて・・・

0
0

女優の平祐奈さん

NEWSポストセブンで、「ポスト堀北真希」について話をしました。


ポスト堀北真希 
平祐奈を筆頭に深川麻衣、桜庭ななみが有力
2月末をもって芸能界を引退した堀北真希(28)。今後は夫の山本耕史(40)を支えながら家庭に専念するということだが、彼女の空けた席にいったい誰が座るのか、「ポスト堀北真希」に注目が集まっている。

元テレビプロデューサーで上智大学教授(メディア論)の碓井広義さんは、ポスト堀北の条件を次のように述べる。

「堀北さんがなぜ特別な女優でありえたのかというと、美人であるのはもちろんのこと、清楚なイメージを保ち続けたからだと思います。透明感があってピュア、無垢なイメージ。とても近づけない、みんなで遠くから見守っていたい存在でした。演技に対してもとても勉強熱心な女優さんだったと思います。

ただ、どんな役でもOKというわけではありませんでした。たとえば超能力を持つような現実離れした人物を演じた時は、浮くことが多かった。堀北さんの良さが出るのは、普通の女性が懸命に生きる姿を演じる時。戦後復興期の時代を生きる女性を描いた『梅ちゃん先生』(NHK)などがまさにそれでした」(碓井広義さん、以下「」内同)

2003年にデビューした堀北は、2005年のドラマ『野ブタ。をプロデュース』(日本テレビ系)や映画『ALWAYS 三丁目の夕日』で一躍注目を浴びる存在となり、その後は主役を張るのが当たり前の人気女優として活躍し続けた。

デビュー当初は清楚キャラでもそのイメージを崩していく女優が多い中、堀北は引退するまでそのキャラクターを守り続けたといえるだろう。仕事以外ではほとんど外出せずに家で過ごしていたと言われる堀北は恋愛スキャンダルともほぼ無縁で、裏付けのないウワサ話が時折流れる程度。

結婚に際しても、「山本のストーカー被害者では?」という説まで飛び出し、イメージが保たれた形だ。また企業からのウケも良く、富士フイルムやNTTドコモなどは長期にわたり彼女をCMに起用し続けた。

「堀北真希の良さを丸ごと持っている女優はいない」と語る碓井さんだが、複数の条件をクリアしている女優はいるという。「ポスト堀北」の可能性を持つ筆頭が、女優の平愛梨(32)の妹としても知られる平祐奈(18)だ。

「その場に自然に立っている時に、堀北さんのような透明感とピュアさを感じさせる女優さんです。このところドラマや映画、CMへの出演が増えてきていますが、私は『ぼくが命をいただいた3日間』(2016)という作品を鑑賞した時に、これはいい女優が出てきたな、と思いました。生きるために動物の命をいただくという食育をテーマにした作品で、山村育ちの美少女を演じる彼女は鹿や鶏を捕らえるシーンにも挑戦しています」

映画『案山子とラケット 〜亜季と珠子の夏休み〜』、ドラマ『JKは雪女』(ともに2015年)で主役を演じた平祐奈は、『2016タレントCM起用社数ランキング』(ニホンモニター社調べ)の女性部門でも4位にランクイン(10社)。この春からは大学生にもなり、女優業と二足のわらじ生活が始まる。

次に挙げたのが、乃木坂46の元メンバーでもある深川麻衣(25)。アイドルグループ出身ということで、女優一筋でやってきた堀北とは経歴がまるで異なるが、

「女優を目指してアイドルグループを辞めた深川麻衣さんは、アイドルをやってきたのに全くスレた感じがしません。生真面目なところもあり、堀北さんに通じる清楚さを備えているように思います」

深川が乃木坂46卒業後に移籍した事務所は、田中麗奈(36)や香里奈(33)など人気女優を抱えるテンカラット。初主演を務める舞台『スキップ』(北村薫原作、4月26日〜)は、今後の彼女の活躍を占う試金石となりそうだ。

そして碓井さんが「ポスト堀北」3番手に挙げるのは、堀北が所属していた事務所の後輩でもある桜庭ななみ(24)だ。

「堀北さんに比べると活発すぎる印象がありますが、スキャンダルを想像させないのでおじさんウケ、企業ウケはいいでしょう。そうでなければ三菱地所のCMも長く続きませんから」

企業ばかりでなく、警視庁や消防庁のポスターにも起用されるなど、CM・広告キャラクターとしては各所から信頼を得ているといえる。しかし、まだ桜庭をブレイク女優に押し上げるようなドラマや映画には出会えていない。2018年公開予定、ジョン・ウー監督の香港・中国合作映画『追捕 MANHUNT』への出演が決まっているが、それまでにも女優としてインパクトを残しておきたいところだ。

最後に碓井さんはこう語る。

「堀北さんの特徴としてもう一つ大事なことを挙げるとすれば、ミステリアスな一面を持っていたという点です。誰も彼女の本音を聞けなかった。最近はバラエティー番組に積極的に出て素をさらけ出す女優さんも少なくありませんが、女優さんには『見えない部分』があることも大事です。本来は堀北さんのように、番宣で仕方なく出てくるという程度で十分だと思います。芸能界をスパッと辞めた山口百恵さんに憧れていたという報道もありましたが、本業以外で自分から表に出るのはあまり好まないという点では一緒でしたね」

そもそも人前に出たい人間が集まる芸能界でそのような人材は稀有な存在かもしれないが、芸能界にぽっかりと空いた大きな穴を埋める女優が現れることを期待したい。

(NEWSポストセブン 2017年03月12日)

『逃げ恥』石田ゆり子さんの清純とエロス、現在も進化中!?

0
0



『逃げ恥』石田ゆり子さんの「清純」と「エロス」、
現在も進化中!?
社会現象にもなったヒットドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)。新垣結衣さん、星野源さんはもちろん、ヒロインの伯母を演じた石田ゆり子さんも注目された。

先日、審査員を務めさせていただいている「コンフィデンスアワード・ドラマ賞年間大賞2016」が発表されたが、2016年を代表するドラマとしての作品賞は、やはり『逃げ恥』となった。主演女優賞も『逃げ恥』の新垣結衣さんかと思われたが、最終的に『トットてれび』(NHK)の満島ひかりさんに決定。しかし、助演女優賞には『逃げ恥』の石田さんが選ばれた。

あのドラマでの石田さんは、仕事のできるキャリアウーマンにして独身。部下を率いるしっかり者が、ふとした瞬間に見せる素顔や本音がチャーミングだった。

しかし、女優としての凄さはそれだけではない。たとえば『さよなら私』(NHK、2014年)では、高校時代からの親友(永作博美さん)の夫(藤木直人さん)との不倫関係を演じていた。

石田さんは独身の映画プロデューサーで、永作さんは専業主婦。ふとしたきっかけで、永作さんは夫の浮気相手が石田さんであることを知る。言い争う2人だったが突然、互いの心と身体が入れ替わってしまう。大林宣彦監督の懐かしい映画『転校生』みたいな現象だ。

なんと石田さんは、永作さんの意識を抱えたまま、藤木さんと抱き合うことになる。難しい芝居だ。不安と戸惑いの中で過ごすうち、今度は石田さんの心を持った永作さんがガンに侵されてしまい・・・という展開だった。

この年代の女性の微妙な心理を、本音と建前も含めて丁寧に描き出した脚本は、この4月からのNHK朝ドラ『ひよっこ』を手がける岡田惠和さんだ。石田さんと永作さんは複雑な役柄を繊細な演技で表現し、大人が見るべき1本になっていた。

また『コントレール~罪と恋~』(同、16年)は、過って自分の夫を死なせた男(井浦新さん)と禁断の恋に落ちる、切ないラブストーリーだった。

石田さんが演じたのは45歳の未亡人だ。幼い息子の母親としての自分と、一人の女性としての自分。その葛藤に揺れながらも、あふれ出す情念を抑えきれない。鏡の前で、久しぶりにルージュを手にする表情など絶品だった。

どちらのドラマも、石田さんが併せ持つ「清純」と「エロス」に驚かされた。

そんな石田さんが目の前にいる。そしてグラスに“大人のビターチューハイ”を注いでくれる。それが現在放送中のキリンチューハイビターズのCM「あなたの顔」編だ。

画面には、テーブルをはさんで“差し向かい”になった石田さんしかいない。しかもグラスを差し出しながら、あの笑顔で「ゆるんで、いいよ」とか、「もっと、ゆるも」なんて言ってしまうのだ。そりゃもう乾杯どころか、完敗です。


<参考>
「コンフィデンスアワード・ドラマ賞年間大賞2016」の結果

作品賞:『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)
主演男優賞:山田孝之/『闇金ウシジマくん Season3』(MBS/TBS系)、
 『勇者ヨシヒコと導かれし七人』(TX系)
主演女優賞:満島ひかり/『トットてれび』(NHK総合)
助演男優賞:草刈正雄/大河ドラマ『真田丸』(NHK)
助演女優賞:石田ゆり子/『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)
脚本賞:野木亜紀子氏/『重版出来!』(TBS系)、
 『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)
新人賞:ディーン・フジオカ/連続テレビ小説『あさが来た』(NHK)、
 『ダメな私に恋してください』(TBS系)、
 『IQ246~華麗なる事件簿~』(TBS系)
審査員特別賞:岡田将生、松坂桃李、柳楽優弥/
 『ゆとりですがなにか』(日テレ系)

http://confidence-award.jp/

(主催:エンタテインメントビジネス誌『コンフィデンス』)


Yahoo!ニュース「碓井広義のわからないことだらけ」
https://news.yahoo.co.jp/byline/usuihiroyoshi/

3月11日放送のNスペ「シリーズ東日本大震災」2本の見応え

0
0



日刊ゲンダイに連載しているコラム「TV見るべきものは!!」。

今週は、「3.11」のNスペ2本について書きました。


NHKスペシャル・シリーズ東日本大震災
「“仮設6年”は問いかける
 ~巨大災害に備えるために~」
「避難指示“一斉解除” ~福島でいま何が~」

見応え十分だった2本のNスペ

3月11日の夜、NHKスペシャル「シリーズ東日本大震災」が2本続けて放送された。どちらも重要な問題提起を行っており、見応えがあった。

1本目は「“仮設6年”は問いかける~巨大災害に備えるために~」。現在も3万5千人が仮設住宅で暮らしている。

しかし元々長期の生活には無理がある施設。亡くなる高齢者も多い。番組は、この事態を招いた原因として「災害救助法」を挙げていた。昭和22年に制定されたもので、仮設暮しが長期化する大規模災害には対応できないのだ。

かつてこの法律の見直しが検討されたことがある。だが、応急救助の厚生省と再建支援の国土省の折り合いがつかず頓挫した。“災害救助法の壁”と“省庁の壁”。2つの壁の存在と問題点を明らかにした意義は大きい。

2本目のNスペは「避難指示“一斉解除” ~福島でいま何が~」だ。

国の判断によって、間もなく広い地域で避難指示が一斉に解除される。しかし住民は、放射線量への不安、山積みの除染廃棄物、打ち切られる補償といった悩みを抱えたままだ。

一方、自治体は村や町の存続への危機感から避難指示解除を急いできた。そのギャップが行政と住民、住民同士、そして家族の間での“分断”を進行させている。

それは二重被災ともいうべきものであり、あらためて誰のための復興なのかが問われていた。

(日刊ゲンダイ 2017.03.15)

毎日新聞で、BPOのNスペ「人権侵害」判断についてコメント

0
0



毎日新聞の記事「記者の目」の中で、BPOのNスペ「人権侵害」判断についてコメントしました。


<記者の目>
BPO、Nスペに「人権侵害」
調査報道の萎縮、懸念
須藤唯哉(東京学芸部)
小保方晴子・元理化学研究所研究員らのSTAP細胞に関する論文を検証した番組「NHKスペシャル」について、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会(委員長・坂井真弁護士)は、名誉毀損(きそん)の人権侵害を認める重い判断を下した。しかし、委員の中には「人権侵害があったとまでは言えない」との意見があり、NHKも直ちに反論した。この異例の事態に、私はBPOの今後の課題を垣間見たように感じた。

審理に約1年半、委員2人は異論

STAP細胞の存在は小保方氏らが2014年1月に発表し、新聞やテレビなどは「万能細胞」として大々的に報じた。しかし、間を置かず、英科学誌ネイチャーへの掲載論文に疑問が相次ぎ、理研は調査委員会を設置。同年7月に論文は撤回された。

当時、世間では「STAP細胞はあるのか」との疑問が宙に浮いたままだった。その疑問に応えるようにNHKは同月27日、今回のNスペを放送した。私も放送時に視聴した。NHKの綿密な取材に裏打ちされていると感じた。

しかし、放送から約1年後、小保方氏が番組を「ES細胞(胚性幹細胞)を『盗み』、それを混入させた細胞を用いて実験を行っていたと断定的なイメージの下で作られたもので、極めて大きな人権侵害があった」と申し立てた。同委員会は15年8月に審理入りを決め、両者へのヒアリングや19回にも及ぶ審理など、約1年半もの時間を費やして意見書を作成。今年2月10日に公表し、小保方氏に対する名誉毀損の人権侵害があったと結論付けた。一方で意見書には、2人の委員による少数意見が付された。いずれも名誉毀損は認められないという、委員会とは異なる意見だった。

意見書では主に「配慮を欠いた編集上の問題」によって人権侵害を招いたと指摘された。そのため、2時間半近くにも及んだ意見書公表の記者会見では、記者から人権委員会が考える「正しい編集」とは何かを問う質問が相次いだ。坂井委員長は「番組の作り方をこうしろという立場にはない。作った結果について重大な問題があったと言える。作った番組に対して、(人権侵害に当たる表現を)回避できたのではないかと指摘している」などと説明した。

一方、NHKは即日、「番組の中の事実関係に誤りはない。客観的事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作した。人権を侵害したものではない」などと反論。長い時間を費やした審理、委員会判断とは異なる少数意見、約2時間半の記者会見、NHKからの反論など異例の対応が相次いだことは、今回の判断がいかに難しかったかを物語っている。

NHKの番組制作過程に行き過ぎた点があったのは事実だ。放送前に取材を試みようと、記者やカメラマンが神戸市内のホテルで小保方氏を執拗(しつよう)に追跡。その時に小保方氏は全治2週間のけがをした。NHKは謝罪しており、今回の意見書公表後も「再発防止を徹底する」としている。

NHKに反省すべき点はあるが、私は視聴者のニーズに応えようとする報道姿勢に大きな誤りはなかったと考えている。碓井広義・上智大教授(メディア論)は「NHKは取材を経た上で自分たちの見解を番組として提示した。これで人権侵害が成り立つとしたら、現場の制作者たちは難しいテーマを取り上げることをためらってしまう。その結果、視聴者にとって本来なら伝わるべきことが伝わってこなくなり、マイナスになるのではないか」との懸念を示した。同委員会の判断が、政治家ら大きな権力を持つ者や企業の不正疑惑などを報じる調査報道を萎縮させると危惧したもので、私も同意する。

番組の質向上へ放送局と議論を

NHKと日本民間放送連盟によって設置された第三者機関のBPOが問題に対応することで、放送界は自律を保とうとしている。BPOが下す判断を、放送各局は重く受け止めなければならない。一方で、その判断が必ずしも絶対ではないことが、今回の意見書で露呈したように感じる。砂川浩慶・立教大教授(メディア論)は「BPOは『向上』の部分についての取り組みが見えていない。起こった事象に対して意見を言うところばかりクローズアップされ、現場は怒られてばかりになる。具体的な向上策を例示の形ででも示していかないと、現場とのギャップが広がっていってしまう」と話す。

BPOが放送内容に重大な問題があると判断するならば、報道や番組制作の現場を納得させるだけの説明が求められる。難しい場合は、BPOと放送局の活発な議論によって埋めるしかない。それが、視聴者のニーズに応える質の高い番組作りにつながっていくことは間違いないだろう。

(毎日新聞 2017.03.16)

【気まぐれ写真館】 春休み中のキャンパス 2017年3月17日

0
0


完成したソフィアタワー

実相寺昭雄研究会で、「コナン」の松園公(まつぞのひろし)監督と・・・

0
0

松園監督が、わずか1分で描いてくださったコナン君








『名探偵コナン』『ケロロ軍曹』などの松園監督



「コンフィデンス」で、秋の朝ドラ『わろてんか』について解説

0
0

朝ドラ『わろてんか』の主演が決まった、葵わかなさん


エンタメ専門誌「コンフィデンス」で、今年秋の朝ドラ『わろてんか』と、そのヒロインに決まった女優・葵わかなさんについて解説しました。


葵わかな、朝ドラ・ヒロインの資質
平成29度後期のNHK連続テレビ小説第97作目『わろてんか』(月~土 前8:00 総合ほか)のヒロイン・藤岡てん役に抜擢された若手女優・葵わかな。

今年4月から慶應義塾大学総合政策学部に入学し、5月から来年3月まで行われる朝ドラの撮影と学業を両立させていく。同作は吉本興業創業者で女性興行師・吉本せいがモデルとなっているだけに、そのプレッシャーは過去の朝ドラ女優以上とも言われている。

◆“ナチュラル”眉のショートヘアが印象的な葵、美少女ぶりがCMで注目

『わろてんか』は、明治の後半から第二次世界大戦直後の大阪が舞台。藤岡てんが、ひょんなことから小さな寄席経営をはじめ、日本で初めて“笑い”をビジネスにした女性と言われるまでになるまでのストーリー。

主人公のてんは、京都の老舗薬種問屋「藤岡屋」の長女。いつも周りを朗らかにしながら自分もよく笑う、いわゆる笑い上戸(=ゲラ)で、強く、明るく、ありのまま、天真爛漫に人生を突き進む。

脚本は、ドラマ『学校のカイダン』(日本テレビ系)『働きマン』(同系)『美女か野獣』(フジテレビ系)、映画『僕等がいた』『ホットロード』『アオハライド』などを手掛けた吉田智子氏が担当する。

葵は、神奈川県出身の18歳。2009年に「天然水」のCMでデビュー。映画『陽だまりの彼女』のヒロイン・上野樹里の中学生時代役で話題となり、その後も『東京海上日動火災保険』や『ヤマザキナビスコ』のCMで「この美少女は誰?」と注目を集めた。

映画『ホラーの天使(2016年公開)やドラマ『女優堕ち』(BS朝日/2016年放送)などに出演。太めの“ナチュラル”眉に爽やかなショートヘア、愛らしい笑顔が印象的だ。

同番組会見で葵は「ヒロインという大役に決めていただいたというのが自分でも受け止めきれず…きのう聞いたものでまだ夢のよう」(2017年3月9日/ORICON NEWSより)と出演を喜んだ。

その一方で、「至らないところもあると思うし、絶対乗り切ってみせるみたいなことは言えませんが、少しずつ成長しながら見てくださる方に笑顔を届けられるように精一杯頑張っていきたい」と気を引き締めた。

◆前期・朝ドラ主演の有村架純との知名度ギャップもNHKの狙い

ブレイク間違いなし、新たなシンデレラガール誕生と手放しで喜びたいところだが、今回葵が乗り越えなければいけないプレッシャーは、過去の朝ドラ主演女優以上かもしれない。

上智大学文学部新聞学科教授・碓井広義氏は、その理由をこう説明する。「朝ドラはこれまでも実在の人物を主人公に、数々の作品を発表してきましたが、今回の主人公は特別です。何と言っても吉本興業の創業者・吉本せいなんですから。たじろいでしまっても仕方ないと思います」

NHKの大阪制作で、主役が大阪の笑いの文化を創ったゴッドマザーとなれば、「吉本せいとは一体どんな人物なのか?」と世間の興味関心もケタ違いに大きくなるに違いない。18歳の葵に、その重圧は背負えるものなのだろうか。

「世間的には、葵さんの知名度はまだまだでしょう。しかし私はそれがいいと思っています。中途半端に知られている人ではダメ。制作サイドも、オリジナルな人物像を作りたいと思っているでしょうし、明るくて芯の強さを感じさせる葵さんなら、それができると確信したから選んだのだと思います」(碓井氏)

番組会見で葵の起用理由について制作統括の後藤高久氏は、「若いけど大人、キュートだけど強い、笑顔だけどコワい…そんな両極の魅力で周りの人を虜にしてしまう、これぞヒロイン藤岡てんそのものの資質を持った女優」(2017年3月9日/ORICON NEWSより)と説明していた。

どんな演技を見せるのか、今から興味津々だが、奇しくも前クールは有村架純主演の『ひよっこ』。バリバリの人気女優の後だけに、そのギャップもまたNHKの狙い通りかもしれない。

(コンフィデンス 17年3月20日号)

間もなく幕が下りる、NHK朝ドラ『べっぴんさん』を振り返る

0
0


来週末に終了となる『べっぴんさん』、見てますか? 平均視聴率が約20%ですから、私も含め、それなりの数の人たちが、日々このドラマを見ているはずです。

では、「この半年間、『べっぴんさん』は面白かったですか?」と聞かれたら、どう答えますか? 「もちろんです!」と元気に応じる人も相当な数でしょう。しかし、その一方で、「なんだかなあ」「どうにもなあ」と言いながら、ここまで見てきた人もかなりいるのではないかと思います。実は私もその一人です。

『べっぴんさん』のビフォーアフター

正直言って、このドラマが始まる前、結構楽しみにしていました。主な理由は2つあって、1つは『べっぴんさん』が近年の朝ドラの“成功パターン” を継承していたこと。具体的には、「女性の一代記」、「職業ドラマ」、「成長物語」、そして「実在の人物」ですね。さらに、戦争と戦後という「時代背景」も、これまで視聴者の共感を呼ぶ要素でした。

2つ目の理由は、主演に選ばれた新進女優・芳根京子さんへの期待です。2015年の夏、初主演ドラマ『表参道高校合唱部!』(TBS系)を見て、「面白い子が出てきたなあ」と思い、コラムで取り上げたり、座談会で話題にしたりと注目してきました。

『表参道』では、ヒロインとしての明るさや意志の強さだけでなく、感情の細やかさまで表現していたこと。何より表面的な美少女ではなく、地に足のついた骨太な少女像を体現している点に注目しました。

さて、昨年10月に始まり、間もなく幕を下ろす『べっぴんさん』。戦後、子供服メーカーを興し、現在まで続く企業の基盤を造った女性・坂東すみれの半生記でした。ただ全体としては、物語に起伏が乏しくて平板、ストレートに言えば、かなり退屈な展開でした。

神戸のお嬢さんとして生まれ育ち、戦争中はそれなりの苦労もしましたが、夫も無事帰還し、戦後は女学校時代のお嬢さん仲間と一緒に起業。初期には多少の波乱もありましたが、会社としては大きな危機もなく、まずは順調に成長してきました。

家庭内にも心配事はありましたが、しかしそれも一人娘が自我に目覚めて、ちょっとだけ不良の真似事に走った程度です。その後、娘のさくらはアメリカ留学を果たし、親の会社に就職。さらに母親の創業仲間の息子と結婚して、今や一児の母です。

主人公のすみれ本人はどう思っているのか知りませんが、客観的には仕事にも家庭にも恵まれ、“生涯お譲さん”を通すことのできた幸福な人生と言えるでしょう。

『べっぴんさん』で残念だったこと

ただ、ドラマとして不足していたのは、やはり物語の起伏であり、メリハリです。ストーリーに起伏やメリハリを与えるのは、主人公が抱える葛藤だったり、立ちはだかる壁だったりしますが、それもあまり感じられません。なんとなく“ぬるま湯”的なエピソードが続くばかりでした。

それに半年間、いつも“内向き”な話ばかりだったような気がします。仕事も恋愛や結婚も、“仲間うち”で回っているような印象で、社会に対して開かれた、広がっていく感じが希薄でした。

実在の企業「ファミリア」、そして実在の創業者たちを、モデルなりモチーフなりにしているわけで、実際に起きなかった“波瀾万丈”は描けなかったということかもしれません。いや、それにしても「事実に基づいたフィクション」という形で、多少の脚色はできたはずです。それを「ファミリア」側が許さなかったのか、それとも制作側が自制したのか、それはわかりません。

事実の枠からはみ出すことが出来ず、平板な展開が予想され、しかもそれを補うことが難しかったのであれば、「ファミリアの創業者」という今回の選択自体に、どこか無理があったと言わざるを得ません。

次に主演の芳根京子さんです。これは本人というより、脚本と演出の問題になりますが、なぜ、あんなにヒロインの表情が暗いのか。「仕事のこと、家庭のこと、あれこれ考えることが多いんですよ」という表現かもしれませんが、いつも悩んでいるような顔をした、笑顔の乏しいヒロインと毎朝向き合うのは、視聴者にとって結構シンドイことでした。

そもそも、このすみれというヒロインの性格も、いまいちハッキリしません。周囲に流されるというほどではありませんが、どこまでも自分の意思を通すタイプでもなく、これまた中途半端で微温的。ただ家族のこととなると変に独善的にふるまう。

創業に関わった4人の女性の中で、主人公だけが突出した存在になることを避けたかのようです。もしそうなら、ここでも実録路線であることが足を引っ張ったことになります。いずれにせよ、あまり人間的魅力にあふれた人物に見えなかったことが痛いです。

また環境的にも恵まれているので、視聴者にしてみれば、応援しようにもあまり力が入りません。結局、最後まで坂東すみれは、魅力的な主人公として成長できませんでした。芳根さん自体は可能性をもつ女優さんなので、今回はとても残念です。

そしてもう一人、すみれの夫である「のりお君」こと坂東紀夫(永山絢斗さん)も影が薄かったですね。『あさが来た』における白岡新次郎(玉木宏さん)のキャラまでは望みませんが、もっと存在感を持たせてもよかったのではないでしょうか。何十年も連れ添った夫婦に見えない、あの妙なよそよそしさがずっと気になりました。

朝ドラの登場人物とは、ドラマの中だけの存在ではありません。半年間、毎朝、毎日、顔を合わせる隣人であり、知り合いであり、時には家族や親せき同然だったりします。単なるドラマ作法としてだけではなく、その人物造形には視聴者が共感し、思いを寄せることのできる要素、入り込めるすき間、いや余地を残しておいて欲しいのです。

ドラマで大事なのは、見ている人たちの気持ちが“動く”ことです。泣くであれ、笑うであれ、怒るであれ、何かしら気持ちが揺り動かされること。それが、いいドラマです。

実在の人物を軸とするドラマにおける、肝心の“人物の選択”と“ストーリー作り”の難しさをあらためて感じたのが、この『べっぴんさん』でした。

4月からの朝ドラ『ひよっこ』への期待

4月からは、有村架純さん主演の『ひよっこ』が始まります。1964年に行われた東京オリンピックの頃、集団就職で上京してきた娘・谷田部みね子が主人公。『べっぴんさん』とは違い、架空の人物、架空のお話ですが、脚本は『ちゅらさん』などを手がけた岡田惠和さんなので大いに期待したいところです。

なぜなら、このところ『実在した人物』という実録路線が続いているのは、裏を返すと、『架空の人物』を魅力的に描けていないということでもあります。『純と愛』(2012年度後半)や『まれ』(15年度後半)では、ホテルウーマンやパティシエを目指していたはずの主人公が迷走してしまいました。だからといって、ここまで実在の人物に頼り続けるのも偏(かたよ)り過ぎです。

それに、架空の人物を主人公にして、波瀾万丈の物語が構築できないかというと、そんなことはありません。『あまちゃん』(13年度前半)ではそれができたのです。しかも王道の一代記でなく、わずか数年間の物語。現実の東日本大震災を、どう取り込むかという難題にも果敢に挑戦しながら、あれだけ笑えて泣けて応援したくなるドラマになっていました。

そんな『あまちゃん』を超えるのは並大抵のことではありませんが、実在の人物だけでなく、架空の人物の物語でも、視聴者を気持ちよく笑わせたり泣かせたりしてほしいと思います。ぜひ、見る人の気持ちを動かして下さい。『ひよっこ』への期待です。

Yahoo!ニュース「碓井広義のわからないことだらけ」
https://news.yahoo.co.jp/byline/usuihiroyoshi/

「亀梨と山P」春ドラマ 出演を断った「上野樹里」「北川景子」

0
0



週刊新潮で、春ドラマと「女優・上野樹里」についてコメントしました。


「上野樹里」「北川景子」は
「亀梨と山P」春ドラマをなぜ袖にした
映画「氷の微笑」で知られるシャロン・ストーンは、気に入らないスタッフがいると撮影中でもプイッと帰ってしまうという。女優とはかくも気難しい“生き物”だが、上野樹里や北川景子が、日テレの春ドラマをあっさり袖にしたのにはいかなる事情があったのか。

日本テレビ系の4月期ドラマ「ボク、運命の人です。」の出演者が明らかになったのは、2月18日のこと。KAT-TUNの亀梨和也と元NEWSの山下智久(山P)によるダブル主演で、ヒロインは木村文乃という豪華メンバーである。

「亀梨と山Pは2005年の『野ブタ。をプロデュース』(日テレ系)をヒットさせたコンビということもあって、春ドラマの目玉と言えます」(芸能デスク)

ところが、発表の直前までヒロイン役が二転三転していたことは、ここだけの話である。

制作会社の関係者が言う。

「ドラマというのは、企画の段階から、俳優さんに声をかけてゆくのですが、ヒロインには当然、視聴率の取れる女優さんが欲しい。そこで、日テレは北川景子、上野樹里などをリストアップして順番に声をかけたのです。これに対し “スケジュールの都合がつかない”と断って来たのが北川でした。一方、早い段階で“やらせてください”と手を挙げていたのが、上野の所属するアミューズです」

ご存じのように上野は「のだめカンタービレ」や大河ドラマ「江~姫たちの戦国~」が当り役となった人気女優。昨年5月にはロックバンドのボーカルとの結婚が話題になったが、最近は作品に恵まれていない。

「上野は、結婚もあって1年以上ドラマに出ていません。スケジュールにも余裕があることから、彼女のヒロインで撮影に入る準備をしていたのです。それが2月になって、突然断って来た。上野を説得し切れなかった、というのがアミューズの説明でした」(同)

番組の関係者は“またか”と顔を見合わせたという。

■モンスター

関係者が続ける。

「上野といえば、そのモンスターっぷりで知られている女優です。たとえば『江~姫たちの戦国~』の発表会見では“大河を見たことがない”とか、事務所の先輩の福山雅治が主演している『龍馬伝』について“面白さが分からない”と言い放って、周りを凍りつかせたことがありました」

インタビューの席でも気に入らない質問にため息をついたり、無言を続けることもたびたび。撮影の現場ではベテラン俳優に平気でタメ口を利くかと思えば、年上の女優に演技指導することも。そんな彼女は、新ドラマの何が気に障ったのだろうか。

芸能プロの関係者が言う。

「もともと、新ドラマは亀梨の単独主演で進められていたようです。ところが今年に入ってジャニーズ事務所が山下とのダブル主演を求めてきた。スポーツニュースで亀梨を起用しており、『野ブタ~』の成功例もある日テレとしては、断る理由がありません。ところが、上野からすれば山Pの加入で内容が変わることが納得できない。彼女もスケジュールが合わないというのが表向きの理由でしたが、“アイドル2人の都合に振り回されて仕事をしたくない”というのが本音だと言われています」

結果、ヒロインは木村文乃に落ち着いたのだが、上智大学の碓井広義教授(メディア論)が言うのだ。

「上野は、亀梨と山Pの添え物みたいな立場に収まることにプライドが許さなかったのでしょう。最近の上野は、自分自身への評価と、世間の評価がズレてしまっていると感じますね」

演技にこだわりを持つからこそ女優は気難しい。だが、気難しすぎると「過去の人」になってしまうのが芸能界である。

(週刊新潮 2017年3月16日号)

書評した本: 堀江敏幸 『音の糸』ほか

0
0



「週刊新潮」に、以下の書評を寄稿しました。

堀江敏幸 
『音の糸』
小学館 980円

雑誌『クラシックプレミアム』の連載をまとめた、著者初の音楽エッセイ集。休日のFM放送に始まり、音楽教室で聴いたLPレコード、修道院の慈善コンサートで体験したプロの演奏など50のエピソードが並ぶ。著者の記憶の中から音楽が聴こえてくる静かな一冊だ。


高田 明 
『伝えることから始めよう』
東洋経済新報社 1728円

著者は「ジャパネットたかた」の創業者だ。会社勤めをしていたが、26歳で家業のカメラ店に入った。20年後にはテレビショッピングに進出。以降の発展ぶりは言うまでもない。著者の原動力はスキル、ミッション、パッションの3つ。そこから何かが伝わっていく。


武田 徹 
『なぜアマゾンは1円で本が売れるのか』
新潮新書 864円

副題である「ネット時代のメディア戦争」のほうが内容をよく表しているかもしれない。印刷本とデジタル本。スマホとジャーナリズムの関係。そして「ネットはコンテンツを殺すのか」という刺激的な命題。多くの取材を元に書かれた、奥行きのあるメディア論だ。

(週刊新潮 2017年3月16日号)

相楽樹は“主演作”でひと皮むけるか

0
0



日刊ゲンダイに連載しているコラム「TV見るべきものは!!」。

今週は、相楽樹の初主演ドラマについて書きました。


テレビ東京系「こんにちは、女優の相楽樹です。」
“主演作”で、ひと皮むけるか
もうすぐNHK朝ドラが「べっぴんさん」から「ひよっこ」へとかわる。昨年の「とと姉ちゃん」など、もはや懐かしの一本だ。その「とと姉ちゃん」で主人公・小橋常子を演じていたのは高畑充希(25)。では、次女の鞠子役を務めた女優の名前、言えますか?

正解は相楽樹(22)。背が高くて和風の顔だったという記憶はあるが、街ですれ違った時、「あ、相楽樹だ!」と気がつく自信はない。今期ドラマ「嫌われる勇気」や 「三匹のおっさん3」にも出ていたが、印象は希薄だった。

深夜ドラマ「こんにちは、女優の相楽樹です。」はタイトル通り相楽の初主演ドラマだ。「朝ドラに出たことで有名人気取りだったが、実はほとんど知られていない」女優・相楽樹を本人が演じているところがミソだ。

ある喫茶店ではメイド服姿の店員(ももいろクローバーZの佐々木彩夏)が、「マスクやサングラス、取りな。一般人が全員、芸能人見て興奮すると思ったら大間違いだ!」と一喝。また別の店でも、銀座のママの壇蜜に、「変なプライド捨てて、どんな仕事もちゃんとやりなさい」と諭されてしまう。

ちょっと自虐的なパロディードラマだが、かなり真実を突いている。「とと姉ちゃん」以降、ドラマの脇役も週刊誌のグラビア写真もどこか中途半端な出来だった相楽。

この“主演作”で、ひと皮むけることを祈りたい。

(日刊ゲンダイ 2017.03.22)

慶應義塾大学 卒業式 2017.03.23

0
0



慶應義塾大学の日吉キャンパスへ。

学部の卒業式でした。

OBでも、元教員でもなく、親としての参加です。

息子が、卒業しました。


付属中学に入ってから10年間、ずっとSFC(湘南藤沢キャンパス)でお世話になりました。

いわば10年分の卒業(笑)。

本人はもちろんでしょうが、親としても、それなりの感慨があります。


6年前、娘が卒業したのですが、東日本大震災の直後だったため、同じ日吉キャンパスで予定されていた卒業式は、行われませんでした。

彼女たちは、卒業式なしのまま、社会に出ていきました。


たくさんの学生たちが並木の坂道を上がっていく様子を眺めながら、40年前の自分たちの卒業式を思い出しました。

仲間とわいわい言い合いながらも、「学生じゃなくなるんだなあ」という、かすかな感傷。

それと数日後には、当たり前ですが、初めて「社会人なるもの」になってしまう自分。

そのことへの不安というとオーバーですが、少したじろいでいる感覚も、一緒によみがえってきました。


それでも、息子も含めた6千数百人の卒業生たちに、言ってあげたくなります。

「社会人になれば、それなりに大変なこともあるけど、結構面白いよ」と。


卒業、おめでとう!







































【気まぐれ写真館】 札幌 気温1度 2017.03.24


HTB北海道テレビ「イチオシ!」 2017.03.24

0
0







高橋春花アナとヒロさん

オクラホマ藤尾さん



ヒロさんが描いた大谷選手

今週の「高橋春花アナウンサー」

HTB「イチオシ!モーニング」 2017.03.25

0
0




愛里さん、依田アナ

岩本さん

五十幡アナ

柳田アナ、藤尾さん、谷口さん

今週の「愛里さん」

【気まぐれ写真館】 北海道千歳市「柳ばし」でメンチ!

0
0

人気の「しょうが醤油でいただくメンチカツ」

書評した本:今野勉『宮沢賢治の真実~修羅を生きた詩人』他

0
0



「週刊新潮」に、以下の書評を寄稿しました。

今野 勉 
『宮沢賢治の真実~修羅を生きた詩人』
新潮社 2160円

放送界における今野勉は巨匠と呼ばれる演出家の一人だ。1959年、TBSに入社。64年のドラマ「土曜と月曜の間」でイタリア賞大賞を受賞。70年、仲間と共に日本初の番組制作会社「テレビマンユニオン」を創立する。以後、“ドキュメンタリードラマ”という手法を駆使して実在の人物を描いてきた。

戦争中に和平工作を担った軍人、藤村義朗(「欧州から愛をこめて」)。二・二六事件で暗殺された大蔵大臣、高橋是清(「燃えよ!ダルマ大臣 高橋是清伝」)。日本海軍の父、山本権兵衛(日本の放送史上初の3時間ドラマ「海は甦える」)。さらに「こころの王国~童謡詩人・金子みすゞの世界」、「鴎外の恋人~百二十年後の真実」などもある。共通するのは、その人物に関する事実の発見と新たな解釈の提示だった。

新著『宮沢賢治の真実~修羅を生きた詩人』もまた驚きに満ちている。一編の文語詩に見つけた言葉への疑問をきっかけに始まる探査行だ。賢治がいつ、どこで、何をしていたのか。その時、何を思い、何を書いたのか。今野はドキュメンタリー制作の場合と同様、資料を読み込み、ひたすら考え、仮説を立て、その上で現地に足を運んで調査を行い、また資料に戻って考察を続ける。

浮かび上がってくるのは妹・とし子の恋であり、賢治自身の恋だ。しかも、それぞれの恋に隠された苦悩があった。今野が明らかにしていく“事実”によって、誰もが知る「春と修羅」や「永訣の朝」などの詩、また「銀河鉄道の夜」の解釈がまったく変わってくる。いや、作品だけではない。賢治像の定説をくつがえすだけのインパクトがあるのだ。

この取り組みを可能にしたのは、今野がもつドキュメンタリー的緻密さとドラマ的想像力であり、その幸運な融合である。いわゆる研究者とは異なるアプローチでもあり、今後同意であれ反論であれ、国文学界の反応が楽しみだ。


藤田直哉 『シン・ゴジラ論』
作品社 1944円

この国はなぜゴジラという名の神を必要とするのか。気鋭の批評家がタブーと化した東日本大震災の「スペクタクル」の快にも触れながら考察する虚構と現実。フィクションであるはずの映画の中から、3・11、天皇、科学、宗教などのリアルが浮彫りになってくる。


大崎梢ほか『アンソロジー 隠す』
文藝春秋 1728円

女性作家11人が同じテーマで書き下ろした競作集だ。女性被疑者が隠す刺傷事件の動機(柴田よしき「理由」)。亡き祖母が箸と櫛に込めた過去(新津きよみ「骨になるまで」)。他人の物を欲しがる性癖の結末(近藤史恵「甘い生活」)。女は皆、秘密を持っている。

(週刊新潮 2017.03.23号)

卒業、おめでとう!(1) 2017.03.27

Viewing all 5267 articles
Browse latest View live




Latest Images