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産経ニュースで、「小林麻央さんとブログ」について解説

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【死去から1カ月】
いまも増え続けるブログ読者 
壮絶がん死、
小林麻央さんが私たちに残してくれたもの
歌舞伎俳優、市川海老蔵さん(39)の妻で、フリーアナウンサーの小林麻央さんが6月22日に34歳の若さで亡くなって1カ月が過ぎた。乳がんと闘いながら「生」を見つめ続けたブログは反響を呼び、読者登録者数は、その死後も増えている。1カ月前は250万人だった読者登録者数は270万人を超えている。麻央さんは、私たちに何を残して旅立ったのだろうか。【文化部 玉崎栄次】

心のうち、包み隠さず

《今、口内炎の痛さより、オレンジの甘酸っぱさが勝る最高な美味(おい)しさ!朝から 笑顔になれます》(「オレンジジュース」)

麻央さんが最後にブログを更新したのは、亡くなる2日前の6月20日。生き生きとした書きぶりで、毎朝、母親がしぼってくれるオレンジの果汁のおいしさをつづっていた。
《皆様にも、今日 笑顔になれることがありますように》

文章は読者へのいたわりの言葉で結ばれた。

麻央さんが「KOKORO.」と題する闘病ブログを書き始めたのは昨年9月。主治医の「がんの陰に隠れないで」との言葉に後押しされてのことだった。夫への感謝、子供への愛情、進行する病状への不安…。ブログでは、妻として、母として、そして1人の女性としての、心のうちを包み隠さず記していた。

家族に支えられ

自身が「ステージ4」であることを告白したのも、ブログ上でだった。昨年10月のことだ。

《前の私なら、言えなかったことも今は言えたりします。私はステージ4だって治したいです!!!》
《だから、堂々と叫びます!5年後も10年後も生きたいのだーっ》(2016年10月3日、「心の声」)

「麻央さんのブログは、それを読んだ多くの人が自身の生き方を振り返り、考え方や行動を見つめ直すきっかけにした。それほどの影響力を、仕事で活躍する様子などではなく、『闘病』を通じて伝えたのは、すごいことだと思う」

女性の生き方アドバイザーとして、悩みを抱える女性やその家族の相談に乗る山脇由貴子さんはこう指摘し、「麻央さんから使命感のようなものを感じた」と語る。

闘病は、ときに自身の弱々しい姿をさらけ出さざるをえなくなることもある。それ故、見られたくないと感じる人も多いだろう。

「しかし、麻央さんは闘病から絶望を感じさせず、明るく前向きに発信した」と山脇さん。

「『強さ』なしにはできなかったこと。そして、家族の愛に支えられたからこそ実現できたのではないだろうか」

励まし、励まされ

もちろん、ときに不安を吐露することもあった。

《家族は皆、「大丈夫だよ」と笑顔でいてくれますが、これからどうなっていくのか不安はつのります》(2017年6月4日、「不安」)
《鏡の前に立ってみると、私が恐れていた姿に近い身体が写っていて、一瞬衝撃を受けたあと、泣いてしまいました》(5月21日、「痩せる」)

麻央さんは、ブログで自身の思いを発信することをどのように考えていたのだろうか。6月9日には、次のような文章を投稿している。乳がんであることが公になって、ちょうど1年となった日の記述だ。

《私は、舵(かじ)をとられて、その後隠れて隠れて真っ暗になったので、新しく舵を取り返しました。それが、ブログでした。今の私の道を作ってくれたブログです》(「6月9日。」)

ブログは麻央さんの心の支えとなっていた。それは同時に、多くの人の心にも響いた。

「生きている喜びに気づかせてくれた」
「麻央さんの思いが原動力になる」

麻央さんの書き込みには、数え切れないコメントが寄せられ、さらに、それが麻央さんを勇気づけることになる。

《皆さまとつながり、本当に励まされていました。いつも》(同)

闘病の「プロセス」発信

ブログは「肉声を伝えるメディア」だ。新聞やテレビなどのように記者や編集者を通さずに、情報の発信者が受け手に直に訴えかけることができる。麻央さんはその可能性の大きさを証明した。

上智大の碓井広義教授(メディア文化論)は次のように指摘する。

「麻央さんはブログで、同じ病気を持つ人やその家族、また生き方に悩みを抱える多くの人たちが、決して孤独ではないことを確かめられる『場』をつくった」

碓井教授によると、有名人の闘病報道はこれまで、病を「克服した」、あるいは「死去した」という「結果」だけが、マスメディアを通じて報じられるのが一般的だった。しかし、麻央さんの場合は、ブログによって、苦しみや喜びなどの生(なま)の声を伴う闘病という「プロセス」が発信され続けた。

「麻央さんが伝え続けたのは『生きる』という意志だった。そして、読者とともに、共感によるゆるやかなコミュニティー(共同体)がつくられたのではないだろうか」

英訳して世界に発信も

今月3日、ブログを運営するサイバーエージェント(東京都渋谷区)が、麻央さんのブログを生前と同じ形で残すことを発表した。文章や写真は残り、コメントも書き込めるという。

「今はまだ読んでいない『未来の読者』にも、麻央さんの体験が手渡されていくのは素晴らしいことだ」と碓井教授は話す。

麻央さんの訃報はBBC(英国放送協会)でも報じられ、ブログの反響などが取り上げられた。英訳も進められており、より多くの人が読むことができるようになっている。

「世界中の私たちと同じように乳がんで苦しんでいらっしゃる方やそのご家族の力に少しでもなれたら」

夫の海老蔵さんは6月30日に自身のブログでこう語り、続けた。

「これもブログを通してまおがやりたかったことかなと思ってます」

(産経ニュース 2017.07.22)

ドラマアワード「主演男優賞」受賞の小栗旬さんについて

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小栗旬(「CRISIS 公安機動捜査隊特捜班」)が
ドラマアワードで主演男優賞受賞
オリコンが質の高いドラマを表彰する“第8回『コンフィデンスアワード・ドラマ賞』”の各賞が発表され、主演男優賞を小栗旬(「CRISIS 公安機動捜査隊特捜班」 KTV/CX系)が受賞したことが明らかになった。

『コンフィデンスアワード・ドラマ賞』は、株式会社oricon ME発行の週刊エンタテインメントビジネス誌「コンフィデンス」主催のもと、主な国内ドラマを対象に有識者と視聴者が共に支持する“質の高いドラマ”を表彰するもの。

今回は2017年4月期の主な地上波ドラマ計30作品を審査対象に、「オリコン・モニターリサーチ」の登録者を対象とした視聴者満足度調査「オリコンドラマバリュー」の結果と、ドラマに関連する有識者およびマスコミのドラマ・テレビ担当者(審査員)の意見をもとに、2017年6月30日開催の審査会で各賞が決定した。

主演男優賞は、国家を揺るがす規格外の難事件に立ち向かう特捜班の活躍を描いた「CRISIS 公安機動捜査隊特捜班」にて、仲間と共に命がけで任務を遂行する捜査官・稲見朗役を好演した小栗旬が受賞。

心に深い傷を負った元自衛隊員である稲見が抱える、本当の正義と現実との葛藤を目や表情などの細かな演技でリアルに表現したほか、原案・脚本の金城一紀氏が描く迫力のアクションシーンも見事に体現し、審査員からも「人には言えない葛藤を抱えた難役にもかかわらず、どっぷりと役にハマっていた。稲見が憑依したかと思うほどの凄絶な演技に拍手」碓井広義氏(上智大学文学部新聞学科教授/メディア文化論)などの絶賛の声が寄せられた。

その他、第8回『コンフィデンスアワード・ドラマ賞』の詳細については、受賞者動画コメントの配信も行われている公式サイトを参照されたい。

■主演男優賞受賞・小栗旬(「CRISIS 公安機動捜査隊特捜班」)コメント

今回、主演男優賞をいただけるということで、本当にありがとうございます。この作品にはかなり長い期間をかけて携わってきたので、こういう形で評価してもらえて非常に嬉しいです。

アクションに関しては、本当に目指していたものが出来たかわかりませんが、事前からしっかり準備をして、いつも以上に良いものを作ろうということでチャレンジをしてきました。その結果、ほかのキャストやスタッフにもそれが伝わって、皆さん本当に時間をかけてトレーニングや体作りをしてくれたので非常に助けられました。

また、いろいろなことを事前に何度も何度もシミュレーションができたので、確実にいつもアクションを撮るよりも数倍早く撮影を進めることが出来ました。今後もまた、こういうアクションものを作れたらいいなと思います。

■第8回『コンフィデンスアワード・ドラマ賞』

http://confidence-award.jp/

■CRISIS 公安機動捜査隊特捜班 | 関西テレビ放送 カンテレ

https://www.ktv.jp/crisis/index.html

(music.jpニュース 2017年07月22日)

書評した本: 池田晶子 『絶望を生きる哲学』ほか

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「週刊新潮」に、以下の書評を寄稿しました。

池田晶子 
『絶望を生きる哲学~池田晶子の言葉』
講談社 1080円

没後10年、残された哲学エッセイからテーマ別に言葉が選ばれた。たとえば「不安の正体」。形なき幸福を形あるものと捉えることで不幸になると著者は言う。また未来への不安も過去への後悔も、時間認識の勘違いであると。悩むことを楽しむ心の構えを知る。


茶谷誠一 
『象徴天皇制の成立
 ~昭和天皇と宮中の「葛藤」』
NHK出版 1728円

今年6月に天皇退位の特例法が成立。約200年ぶりの生前退位が実現することになった。今あらためて天皇制について考える際、大いに参考となるのが本書だ。象徴天皇制はいかにして生まれたのか。成立後の混乱は何を意味するのか。憲法との関係も示唆に富む。

(週刊新潮 2017年7月20日号)

“大根マジック”全開! 瑛太主演「ハロー張りネズミ」

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日刊ゲンダイに連載しているコラム「TV見るべきものは!!」。

今週は、ドラマ「ハロー張りネズミ」について書きました。


TBS系「ハロー張りネズミ」
“大根マジック”全開
瑛太主演のTBS系連続ドラマ「ハロー張りネズミ」。弘兼憲史の原作漫画は80年代の作品だ。

何度か映像化されているが、再び実写で見られるとは思わなかった。しかも演出・脚本は、「まほろ駅前番外地」(テレビ東京系)や「リバースエッジ 大川端探偵社」(同)の大根仁監督である。

あかつか探偵事務所は東京・下赤塚(東武東上線)にある。所長の風かおる(山口智子)、調査員の七瀬五郎(瑛太)と木暮久作(森田剛)。3人だけの小さな所帯だ。大手が請け負わない「こぼれ仕事」や「汚れ仕事」が回ってくる。

第1話に登場したのは交通事故で娘を失った男(伊藤淳史)。同じ事故で危篤状態の妻に、娘の元気な姿を見せたいというのが依頼だ。五郎たちは、その娘によく似た女の子を求めて奔走する。

また第2話では、自殺した父親(平田満)の汚名をそそごうとする娘・四俵蘭子(深田恭子)が現れた。こちらは前後編で、爆破シーンもある豪華版。深田の“謎の美女”ぶりも楽しめる。

瑛太はいつもの瑛太だが(いや、そこがいいのだ)、森田と山口は大根演出のおかげで、再評価したくなるような“いい味”を出している。さらに情報屋がリリー・フランキー、父親の右腕だった男が吹越満といったキャスティングも効果大だ。

猥雑さや品のなさを作品のエネルギーに転化させる、“大根マジック”全開の一本となっている。

(日刊ゲンダイ 2017年7月26日)

今期もまた、女優「松岡茉優」の進化は止まらない!?

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『鈴木先生』から『あまちゃん』へ

女優・松岡茉優さんに初めて注目したのは、2011年に放送された、長谷川博己さん主演のドラマ『鈴木先生』(テレビ東京系)でした。それ以前、「おはガール」として出演していた『おはスタ』(同)は、さすがに見ていませんでしたから。

鈴木先生(長谷川さん)が担任だった2年A組の生徒たちの中では、謎の美少女「小川蘇美」を演じた土屋太鳳さんが目立っていましたが、「堀の内七海」役で、当時16歳だった松岡さんも出ていたのです。しかも「その他の生徒」ではなく、きっちり存在感を示していました。

それから2年後の2013年、NHK朝ドラ『あまちゃん』に、地元アイドル「GMT47」のメンバーとして登場します。「埼玉県出身の入間しおり」役ですね。このドラマで、かなり顔と名前が知られるようになったはずです。


『銀二貫』から『限界集落株式会社』へ

次はNHK木曜時代劇『銀二貫』(14年)。戦国でも幕末でもなく、有名な歴史上の人物も登場しない。仇討ちで父を失った武家の子・鶴乃輔(林遣都さん)が、縁あって大阪で商人として生きていく物語です。

鶴乃輔を慕いながらも、孤児になった自分を育ててくれた養母のために、その思いを封印して生きる真帆(松岡さん)。その健気さが、抑えた演技によって強く印象に残りました。

翌2015年に、今度はバリバリの現代劇、NHK土曜ドラマ『限界集落株式会社』に出演します。

舞台である「止村(とどめむら)」は、まさに限界ギリギリの状態。農家の老人たちの、ある者は病に倒れ、またある者は村を去っていきます。

そんな村に帰ってきたのが大内正登(反町隆史さん)。かつて有機農業の夢に破れ東京へと逃げた正登ですが、母親(長山藍子さん)や娘の美穂(松岡さん)と共に、再び農業にトライするのです。

田舎と都会の間で揺れる“屈折女子”が、これほど似合う若手女優はいないと思いました。


『she』から『水族館ガール』へ

『限界集落株式会社』と同じ2015年、松岡さんは異色の深夜ドラマ『she』(フジテレビ系)で、「主演」を果たします。

「she」の舞台は高校で、突然、学年一の美少女、あずさ(中条あやみさん)が姿を消してしまいます。学校側は生徒から事情を聞きますが、原因や行き先を知る者はいません。

しかし、ジャーナリスト志望の涼子(松岡さん)が真相を探るうち、あずさだけでなく、クラスメイトたちの秘密も明らかになっていくのです。

高校生同士のリアルな距離感と関係性を見せた、松岡さんたちの好演。ドキュメンタリーのような手持ちカメラの映像。また、問題の当事者が不在のままの推理劇という点も異色でした。

2016年、今度はNHKの連ドラ(しかもプライムタイム)で初主演。NHKドラマ10『水族館ガール』です。

ヒロインの由香(松岡さん)は商社3年目のOL。上司(木下ほうかさん)から「使えないヤツ」の烙印を押され、水族館へと出向となります。

水族館といえば、「生きもの好きにはたまらない職場なんだろうなあ」くらいに思っていた由香。しかしどっこい、24時間全力で命を守る、大変な仕事だとわかってくるのです。

担当することになったイルカとのコミュニケーションも難しい。厳しいチーフ(桐谷健太さん)や先輩(西田尚美さん)などから叱られ続ける毎日でした。

商社を追われ、水族館にも簡単に溶け込めないヒロイン。このドラマは、いわば自分の「居場所」探しの物語です。それは単に生活の糧を得る職場という意味ではなく、自分が自分であることを実感できる「場」のことです。

松岡さん自身にとっても、どんなドラマでも存在感を放つ貴重な若手女優から、ドラマ全体を引っ張る演技派女優への本格的トライでした。


そして、『ウチの夫は仕事ができない』

現在、松岡さんが出演しているのは『やすらぎの郷』(テレビ朝日系)と、土曜夜の『ウチの夫は仕事ができない』(日本テレビ系)です。

『やすらぎの郷』では、女性バーテンダーの「ハッピーちゃん」こと財前ゆかり。入所者はもちろん、見ている私たちも和みます(笑)。

そして『ウチの夫は―』では、イベント会社勤務の夫・小林司(錦戸亮さん)と暮らす、妊娠中の妻・沙也加(松岡さん)を演じています。

司は真面目で人柄もいいのですが、バリバリ仕事! というタイプではありません。むしろ上司や同僚から「お荷物」扱いされる崖っぷち社員です。

そんな司のことを「仕事もできる理想の夫」だと思っていた沙也加は、夫の会社での評価知ってしまいます。何とか夫の役に立とうと、仕事のハウツーを即席で学び、アドバイスしていきます。

錦戸さんが演じる司は、いわば“無垢なる魂”の持ち主ともいえる人物。手柄を後輩に横取りされても黙ってほほえんでいます。そんな男が厳しい競争社会をどう生き抜いていくのか。また、沙也加がひねり出す“仕事のヒント”が見どころとなっています。

第2のポイントは驚きのミュージカル場面でしょう。錦戸さんや松岡さんが、「♪ない、未来がない」などと歌って踊るシーンがいきなり挿入される、プチ「ラ・ラ・ランド」仕様(笑)に、拒否反応を示す視聴者もいるはず。しかし、ここは制作側のチャレンジ精神を支持したいと思います。

振り幅は大きく、コメディからシリアスまで。今期もまた、女優「松岡茉優」の進化は止まらない!?



ヤフー!ニュース「碓井広義のわからないことだらけ」
https://news.yahoo.co.jp/byline/usuihiroyoshi/

7月30日(日)「TBSレビュー」に出演します

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TBSのスタジオで、秋沢淳子アナウンサー&見学のゼミ生と。


今週末、「TBSレビュー」に出演します。


7月30日(日) 午前5時30分~6時
「TBSレビュー」
テーマは、ドラマ「あなたのことはそれほど」です。


「あなたのことはそれほど」が
若い女性たちを中心に話題となった。

このドラマの主人公は結婚してすぐ
“運命の人"と再会し、深い関係となる。
よくある不倫ドラマか…。
だが少し違っていた。

そのひとつは、主人公が
後悔や罪悪感を持たない
世間体や社会常識とは無縁
という妙に突き抜けた生き方だ。

さらにこのドラマは、
SNSを介して話題となり
特に若い世代のリアルタイム視聴を
加速させた。

番組では“あなそれ"を例に
なぜこのドラマは話題となったか。
なぜ若者たちの視聴を呼び込んだのか。
その要因と背景について探り
新しいドラマの形について考えていく。

(番組サイトより)


例によって
早朝ですので、
録画予約を
お忘れなく!(笑)

フジテレビ「ホウドウキョク」で、「阪大文学部長の式辞」について解説

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フジテレビ「ホウドウキョク」に、電話で生出演しました。

テーマは、
「文学部は役に立つ? 阪大文学部長が卒業生に語った思い」。

MCは、社会学者の古市憲寿(ふるいちのりとし)さんと鈴木理香子さんです。




△最近、「文学部って何の役に立つの?」と題された記事がネットで話題になっている。

△この記事では、大阪大学文学部長で、大学院文学研究科長も務める金水敏さんが、今年3月、文学部・文学研究科の卒業・修了セレモニーの式辞で話したことがツイッターで広まったというもの。

△ツイッターによると金水さんは「みなさま、本日はご卒業・修了まことにおめでとうございます」から始まり、「ここ数年間の文学部・文学研究科をめぐる社会の動向を振り返ってみると、人文学への風当たりが一段と厳しさを増した時期であったとみることが出来るでしょう」と、大学の文学部の現状を卒業生たちに述べている。

△また、文学部は何の役に立つのか?という世間からの目に対し、「しかし、文学部の学問が本領を発揮するのは、人生の岐路に立ったときではないか、と私は考えます」と、文学部の意義を伝えている。

△金水さん自身のブログで公開された式辞が、ツイッターユーザーによって広まり、「文学部出身者として心に響く」などコメントが寄せられた。
会の動向について、「人文学への風当たりが一段と厳しさを増した時期であったとみることが出来るでしょう」とふり返ります。



<論点へのざっくりした回答>
①阪大学部長の式辞、伝えたかったことは?

文学部とか人文学の危機というより、その先にある(奥にある)大学の危機について語っていたのだと思います。

その危機をひとことで言うなら、「怒涛のように大学に押し寄せている、ビジネスの論理」ではないでしょうか。大学のビジネススクール化、就職予備校化、です。

今や企業も文科省も大学経営陣も、経済の論理や企業の論理をストレートに大学へと持ち込み、大学を「すぐにお金になる識や技術」を身につける場にしようとしているかのようです。

また逆に「すぐにお金になる知識や技術」に直接つながらいように見える文学部や、その文学部で学べることを、とことん軽視する風潮があります。それに対する抵抗であり、抗議であると思うのです。目の前の実用性や実利性にばかり目を奪われていてはいけない、と。



②“文学部”で学ぶ意義は?

本来の意味での「教養」を身につけること。もしくは身につけ方を知ること。それをベースにした、いわゆる「実学」では得られない、柔軟な「発想力」。多角的で、広がりと奥行をもった「視野」などの獲得だと思います。

③「人文学は人生の岐路に立ったときに真価を発揮する」のか?

そう思います。金水先生がおっしゃったように、人文学に触れたことが「問いを見出し、それを考える手がかりを与えてくれる」はずだから。

④大学の人文系学部の存在意義は?

人間と社会と自然をトータルで理解するための「人文学的想像力」の獲得。





この日の放送は、以下の番組サイトで動画が見られます。

「ホウドウキョク」番組アーカイブ:
https://www.houdoukyoku.jp/archives/0009/chapters/28980

北海道新聞で、スポーツ選手の「冠番組」について解説

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スポーツ選手ら、道内局制作の番組に続々
気負いなく語る姿や声 魅力
日ハム西川選手 反響は想像以上
藤田元騎手 「自由でヤンチャに」
スポーツ選手らが司会などを務める道内局制作のテレビ・ラジオ番組が今月、相次いで始まった。試合から離れて気負いなく語る姿や声、時折のぞかせる素顔に魅力を感じ、ファンならずとも見聞きする視聴者が多いという。(中出幸恵)

テレビ北海道(TVH)で今月1日、北海道日本ハムファイターズの西川遥輝が出演する番組「週刊ナンバー7(セブン)~西川遥輝~」(土曜、午前11時55分)が始まった。「7」チャンネルの同局が、背番号7の西川を応援し、素顔に迫る5分間の番組だ。放送前から注目され、番組のツイッターのフォロワーは4600人を超えた。同局には「放送時間をもっと長く」「全国放送を」など要望が寄せられ、反響は想像以上という。編成部の細川祐司さんは「西川選手とファンをつなぐ企画も予定している」とアピールする。

HBCラジオでは2日、元JRA騎手の藤田伸二(日高管内新冠町出身)の番組「藤田伸二の生涯、ヤンチャ主義!」(日曜、午後8時)がスタート。G1レースで17勝し、2015年に引退。ラジオのパーソナリティーは初挑戦で、「正直、俺でいいの?と思ったけれど、番組を持つのはうれしいね」。元“剛腕”騎手ならではの飾らないトークが魅力だ。初回はレバンガ北海道の選手兼代表折茂武彦がゲストで登場。「正直、バスケは分からないけど、俺だから聞き出せる話もある」と収録を盛り上げた。今後も幅広い人脈を生して多彩なゲストを呼ぶ予定で、「自由でヤンチャな番組にしたい」と目標を掲げる。

一方、STVラジオでは、4月から始まった「GO!GO!コンサドーレ」(土曜、午前7時半)に、北海道コンサドーレ札幌を運営するコンサドーレの野々村芳和社長が出演している。「予定調和は好きじゃない。自然体でいるのが面白い」と収録ごとに番組の進行を変える。取り上げる話題もツナ缶、将棋の藤井聡太四段、競馬の予想など多岐にわたる。もちろん、コンサドーレ社長として真剣に語ることもある。「サッカーと同じで瞬発力が事。その時々に面白いと思ったことを、自分の言葉で伝えたい」と話す。

スポーツ選手が中心的な役割を務める番組について、上智大文学部新聞学科の碓井広義教授(メディア文化論)は「現役、元を問わず、スポーツ選手が番組を持つことは全国的に珍しいのではないか」と語る。さらに「彼らのファンだけでなく、日ハムファンや競馬ファンなども注目する。話題性も大きい」とし、「自分の言葉で思いを語ることができる選手が道内にいることや、彼らを番組に起用するテレビ局、ラジオ局の攻めの姿勢も興味深い」と話している。

(北海道新聞夕刊 2017.07.12)

確か今夜は隅田川。花火大会の夜に起きた殺人事件『罪火』

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確か、今夜は隅田川の花火大会。

雨は大丈夫なんだろうか。

「花火大会の夜」に殺人事件が起きるのは、大門剛明:著『罪火(ざいか)』(角川書店)です。 

この作品、『雪冤』で横溝正史ミステリ大賞とテレビ東京賞をダブル受賞した著者の受賞第1作でした。

殺人事件を犯人の側から描く「倒叙ミステリー」に挑戦しています。

事件が起きたのは「伊勢神宮花火大会」の夜でした。犯人は35歳の元派遣社員・若宮忍。被害者は恩師である町村理絵の娘で中学生の花歩です。

若宮には、少年時代に過失で人を殺してしまった過去があります。一人で暮らす彼を、何かと支えてくれたのが町村母娘でした。では、なぜ花歩を殺したのか。

町村理絵と若宮が知り合ったのは、「修復的司法」と呼ばれる、事件の加害者と被害者の関係を調整する活動を通じてでした。

若宮を援助し、その更生を信じてきた理絵。一方、人生を諦め、荒んだ心のままに生きてきた若宮。二人の対比が鮮やかです。

緻密に描かれる、犯人の心理や犯行のプロセスも、「倒叙物」ならではの緊張感に満ちています。

NHK朝ドラ「ひよっこ」は、市井に生きる私たちの物語

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毎日新聞のリレーコラム「週刊テレビ評」。

今回は、NHK朝ドラ「ひよっこ」について書きました。


【週刊テレビ評】
NHK「ひよっこ」 
市井に生きる私たちの物語
後半戦に入ったNHK連続テレビ小説「ひよっこ」が猛暑に負けないほど熱を帯びている。茨城から集団就職で上京した主人公、谷田部みね子(有村架純)。勤めていたラジオ工場が閉鎖され、現在は赤坂にある洋食店のホール係だ。

舞台が赤坂に移ってから登場人物の厚みがぐっと増した。みね子が働く「すずふり亭」の女主人(宮本信子)やシェフ(佐々木蔵之介)たちが、地に足をつけて生きる大人の世界を見せてくれる。また、みね子が住むアパート「あかね荘」では、謎の会社員(シシド・カフカ)や漫画家志望の男たちなど多彩な青春像が描かれている。

しかも、みね子はこの町で恋をした。相手は同じアパートの住人で、慶応大学の学生である島谷純一郎(竹内涼真)。地方で会社を経営する名家の後継ぎ息子だ。しばらくは幸せな2人だったが、純一郎の実家が傾き、父親から政略結婚の話がくる。純一郎は親と縁を切ってでも、みね子と一緒にいることを選ぼうとする。

24日放送の第97回。純一郎は、みね子に事の経緯を説明し、たとえ貧乏になっても自分らしく生きたいのだと言い出す。

そんな純一郎に対し、今度はみね子が決意を込めた表情で語り始める。それはこのドラマの本質に迫る一人語りであり、2分を超える長ゼリフだった。流れては消えてしまうドラマの言葉を、あえて以下に再現してみたい。

「そんな簡単なことじゃないです。貧しくても構わないなんて、そんな言葉、知らないから言えるんです。貧しい、お金がないということがどういうことなのか、わからないから言えるんです。いいことなんて一つもありません。悲しかったり、悔しかったり、さみしかったり、そんなことばっかしです。お金がない人で、貧しくても構わないなんて思ってる人はいないと思います。それでも明るくしてんのは、そうやって生きていくしかないからです。(中略)私は貧しくて構わないなんて思いません。それなのに島谷さんは持ってるもの捨てるんですか? みんなが欲しいと思っているものを自分で捨てるんですか? 島谷さん、私、私、親不孝な人は嫌いです」

近年の朝ドラで、これだけ真実味のあるセリフを聞いたことがない。 ドラマというフィクションだからこそ伝えられる人生のリアルであり、生きることの重みだ。

脚本は「ちゅらさん」などを手がけた岡田恵和。みね子は「とと姉ちゃん」や「べっぴんさん」のように、功成り名遂げた実在の人物がモデルではない。市井に生きる、私たちの物語なのである。

(毎日新聞 2017年7月28日夕刊)

TBSレビュー「あなそれ」篇、無事オンエア 2017.07.30

書評した本: 『Mr.トルネード 藤田哲也 世界の空を救った男』ほか

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「週刊新潮」に、以下の書評を寄稿しました。

勇気づけられる天才気象学者の軌跡
佐々木 健一 
『Mr.トルネード 藤田哲也 世界の空を救った男』
文藝春秋 1,944円

1997年6月、『天気に捧げた我が人生』という特番の制作で、オクラホマ大学を訪れた。当時、ここは竜巻研究の一大拠点。映画『ツイスター』のモデルにもなった、「トルネード・チェイサー」と呼ばれる研究チームが活動していた。彼らはドップラー・レーダーなどの機器を満載した車で命がけの観測を行う。そのデータは、気象庁が出す竜巻予報や避難勧告に生かされていた。

取材した佐々木嘉和名誉教授やジョス・ワーマン助教授との会話に、「F」という言葉が何度も出てきた。これは竜巻の強さを示す尺度で、F0からF5まである。たとえばF2は毎秒50~69メートルの風速で、列車脱線や大木倒壊が起きる規模だ。この「Fスケール」の生みの親がシカゴ大学の藤田哲也博士であり、Fは藤田の頭文字からきていた。

本書は、藤田哲也という天才気象学者の軌跡を追ったものだ。しかも「Mr.トルネード」とまで言われた竜巻研究の陰に隠れた、もう一つの偉大な功績にスポットを当てている。それは70年代に多発した飛行機事故の原因究明だ。着陸直前、突然コントロール不能に陥った事故の背景に、「ダウンバースト」という猛烈な下降気流があることを突きとめたのだ。その後、様々な対応策が講じられるようになり事故は激減していく。

「Fスケール」、そして「ダウンバースト」の藤田哲也。ノーベル賞級の人類への貢献であり、日本でその名が知られていてもおかしくない。しかし、なぜかほぼ無名だ。著者は彼の歩みを丹念に追い、「Mr.トルネード」が日本だけでなく、アメリカの学界においても微妙な位置にあったことを明らかにしていく。そこには、あまりに独創的な研究方法とユニーク過ぎる研究者の姿がある。

98年に藤田が没してから約20年。本書によって、ようやく正当な評価と共に実像が示された。あらためて、「こんな日本人がいた」事実に驚かされ、勇気づけられるのだ。



アンディ松本 
『勝新秘録 : わが師、わがオヤジ勝新太郎』
イースト・プレス 1,620円

俳優・勝新太郎はなぜ魅力的なのか。妥協を許さない演技。豪快にして繊細な人柄。そして男としての愛嬌かもしれない。著者は元マネージャー。『影武者』降板騒動や勝プロの倒産から私生活までを語っている。「プラマイゼロ」の人生観が、いかにも勝新らしい。


平川克美 
『「移行期的混乱」以後』
晶文社 1,728円

約7年前の『移行期的混乱――経済成長神話の終わり』では、社会運営の考え方自体が変化している現代を、パラダイムの移行による混乱期と位置づけていた。本書はその続編だ。人口と家族、日本人の家族観などを検証しながら、家族再生への道を探っている。

(週刊新潮 2017年7月27日号)

オープンキャンパス2017 新聞学科「体験授業」 満員御礼!

ゴールまで2ヶ月。猛暑に負けない熱気を帯びてきた『ひよっこ』

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ゴールまで、あと2ヶ月となったNHK連続テレビ小説『ひよっこ』ですが、このところ、猛暑に負けないほど熱気を帯びてきています。

物語の厚みが増してきた『ひよっこ』

奥茨城から集団就職で上京した主人公、谷田部みね子(有村架純)。最初に勤めたトランジスタラジオの工場が閉鎖されてしまい、現在は赤坂にある洋食店のホール係をしています。

舞台が赤坂に移ってから、物語の厚みがぐっと増したように思います。みね子が働く「すずふり亭」店主・牧野鈴子(宮本“夏ばっぱ”信子)や、鈴子の息子でシェフの省吾(佐々木蔵之介)たちが、右肩上がりの経済成長に浮かれる当時の世の中において、地に足をつけて生きる大人の世界を見せてくれています。

また、みね子が住むアパート「あかね荘」では、謎のOL・久坂早苗(シシド・カフカ)や漫画家志望の若者たちなど、多彩な青春像が描かれています。 加えて人気女優・川本世津子(菅野美穂)の出現と、思いがけないテレビ出演も、みね子の人生を大きく左右しそうです。

しかも、みね子はこの町で恋をしました。相手は同じアパートの住人で、慶応大学の学生である好青年、島谷純一郎(竹内涼真)。地方で会社を経営する名家の後継ぎ息子です。

しばらくの間は幸せな2人でしたが、純一郎の実家が経営する会社が傾き、父親から“政略結婚”ともいえる縁談が舞い込みます。悩んだ純一郎は、親と縁を切ってでも、みね子と一緒にいることを選ぼうとしました。

市井に生きる私たちの物語

7月24日放送の第97回。

純一郎は、みね子に事の経緯を説明し、自分の意思を伝えます。

「大学もやめる。仕事も探さなきゃ。貧乏になっちゃうかもしれないけど、ごめんね。でもさ、いいと思うんだ。お金なんてなくてもさ、自分らしく生きられれば」

そんな純一郎に対し、今度はみね子が決意を込めた表情で語り始めます。それは2分を超える長いセリフであり、このドラマの「本質」に迫る一人語りでした。流れては消えてしまうドラマの言葉ですが、今回は、あえて以下に完全再現してみたいと思います。

「島谷さん。まだ子供なんですね、島谷さん。そんな簡単なことじゃないです。貧しくても構わないなんて、そんな言葉、知らないから言えるんです。貧しい、お金がないということがどういうことなのか、わからないから言えるんです。いいことなんて一つもありません。悲しかったり、悔しかったり、さみしかったり、そんなことばっかしです。お金がない人で、貧しくても構わないなんて思ってる人はいないと思います。それでも明るくしてんのは、そうやって生きていくしかないからです。生きていくのが嫌になってしまうからです。そうやって頑張ってるだけです。私は貧しくて構わないなんて思いません。それなのに島谷さんは持ってるもの捨てるんですか? みんなが欲しいと思っているものを自分で捨てるんですか? 島谷さん、私・・私・・親不孝な人は嫌いです」

みね子の、ささやかな、いじらしい「赤坂の恋」は終わりを告げます。

しかし、近年の朝ドラで、これだけ真実味のあるセリフを聞いたことがありません。ドラマというフィクションだからこそ伝えられる人生のリアルであり、生きることの重みが込められていました。

この秀逸な脚本を書いているのは、『ちゅらさん』などを手がけてきた岡田恵和さん。ヒロインの谷田部みね子は、『とと姉ちゃん』の小橋常子や、『べっぴんさん』の坂東すみれのように、「功成り名遂げた実在の人物」がモデルではありません。『ひよっこ』は、いわば市井に生きる私たちの物語なのです。

「ACジャパン・NHK 共同キャンペーン」の飯豊まりえさん

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日経MJ(日経流通新聞)に連載しているコラム「CM裏表」。

今回は、ACジャパン・NHK 共同キャンペーン「合言葉 家族を守る愛言葉」篇について書きました。


ACジャパン・NHK
「合言葉 家族を守る愛言葉」篇
実の孫のような飯豊さんの笑顔
家族などをかたる振り込め詐欺の手口を聞くと、「なぜ引っ掛かるのか」と思ったりする。しかし侮ってはいけない。昨年度の被害額は何と375億円。しかも被害者の多くが高齢者である。

その対策として有効なのが家族の間で決めた合言葉、いや愛言葉だ。たとえばこのCMの飯豊まりえさんは、一人暮らしのおばあちゃんにかけた電話で、「タマ(祖母の飼い猫)、まっしろけ」と言う。これで本人と確認できるのだ。優しくて、気が利いて、お茶目なおばあちゃんと談笑する飯豊さんは、まるで本当の孫のように見える。

この夏、飯豊さんはドラマ『パパ活』(dTV)で親子ほど年の離れた大学教授(渡部篤郎さん)を好きになる女子大生。また『マジで航海してます。』(TBS系)では、船を操縦する航海士を目指す女子学生を演じている。シリアス系とコミカル系、どちらもイケる実力派として今後が楽しみだ。

(日経MJ 2017.07.31)


80年代の原作を生かして、現代を描くドラマ2本

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北海道新聞に連載している「碓井広義の放送時評」。

今回は、ドラマ「黒革の手帖」と「ハロー張りネズミ」について書きました。


「黒革の手帖」「ハロー張りネズミ」
80年代の原作を生かして現代を描く
ドラマ「黒革の手帖」(テレビ朝日―HTB)が好調だ。原口元子(武井咲)は銀座にある高級クラブのママ。しかし以前は派遣の銀行員だった。銀行が隠す不正な預金を横領し、それを元手に店をオープンしたのだ。

原作は1980年に出版された松本清張の同名小説で、これまでに何度もドラマ化されてきた。中でも13年前の米倉涼子主演作の印象が強い。同じ役を武井が演じると報じられた時は、「若過ぎる」とか「銀座のママのイメージと違う」といった声も聞こえたが、杞憂だったようだ。

普通のOL役では、やや浮いてしまうような武井の美貌が、夜の銀座という“異世界”で存分に生かされている。また衣装やメイクだけでなく、その落ち着いた立ち居振る舞いと表情で造形された「銀座で一番若いママ」が見事にはまった。

さらに今回のドラマ化のオリジナル部分として、亡くなった父親が残した借金のために、元子と母親が苦労した過去をきちんと描いている。そのため、悪女であるはずの元子に、見る側が“肩入れ”する余地が生まれた。脚本の羽原大介の作戦勝ちである。成功を収めたかに見える元子だが、この先に試練が待ち受けていることは必至で目が離せない。

瑛太主演「ハロー張りネズミ」(TBS―HBC)の原作は弘兼憲史の漫画。こちらも80年代の作品だ。やはり何度か映像化されているが、今回の演出・脚本は、「まほろ駅前番外地」(テレビ東京―TVH)や「リバースエッジ 大川端探偵社」(同)の大根仁監督である。

「あかつか探偵事務所」は、所長の風かおる(山口智子)、調査員の七瀬五郎(瑛太)と木暮久作(森田剛)という3人だけの小さな所帯だ。大手が請け負わない「こぼれ仕事」や「汚れ仕事」が回ってくる。

たとえば交通事故で娘を失った男(伊藤淳史)の依頼は、同じ事故で危篤状態の妻に、娘の元気な姿を見せたいというものだ。五郎たちは、その娘に似た女の子を求めて奔走する。また自殺した父親(平田満)の汚名を晴らそうとする娘(深田恭子)が現れる。こちらは前後編で、爆破シーンもある豪華版だ。深田の「謎の美女」ぶりも板についている。

瑛太の飄々とした演技が心地よく、また森田と山口も大根演出のおかげで、笑える“ヤンチャ感”が出ている。さらに情報屋がリリー・フランキー、平田満の右腕だった男が吹越満といったキャスティングも効いている。猥雑さや品のなさを作品の熱量に転化させる“大根ワールド”全開の一本だ。

(北海道新聞 2017年08月01日)


【気まぐれ写真館】 ホテルニューオータニ ガーデンラウンジ  2017.08.03

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西に住む友と、久しぶりの再会。

夕暮れのガーデンラウンジでお茶を飲む。

明朝、仕事で英国へ向かうという。

”東京トランジット”の貴重な時間。

「会おうよ」と立ち寄ってくれたことが嬉しい。


同じ年の生まれ。

同じ年の大学入学。

日吉の丘、三田の山という風景の共有。

卒業後は西と東で仕事。


そして今、就職した会社の経営者となった友。

大学で仕事をしている私。

違った場所にいるからこそ、どんな話もできる。

しかも、30年前に偶然出会ってから、互いに中身はほとんど変わっていないのだ(笑)。


楽しい時間は早く過ぎる。

次に会えるのは、いつになるのか、わからない。

それもまたよし。

よき旅を祈る。



「黒革の手帖」武井咲の“銀座で一番若いママ”

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日刊ゲンダイに連載しているコラム「TV見るべきものは!!」。

今週は、ドラマ「黒革の手帖」について書きました。


テレビ朝日系「黒革の手帖」
米倉涼子のイメージ払拭
武井咲に“銀座で一番若いママ”の貫禄
ドラマ「黒革の手帖」(テレビ朝日系)が好調だ。原口元子(武井咲)は銀座にある高級クラブのママ。しかし以前は派遣の銀行員だった。銀行が隠す不正な預金を横領し、それを元手に店をオープンしたのだ。

原作は1980年に出版された松本清張の同名小説で、これまでに何度もドラマ化されてきた。中でも13年前の米倉涼子主演作の印象が強い。同じ役を武井が演じると報じられた時は、「若過ぎる」とか「銀座のママのイメージと違う」といった声も聞こえたが、杞憂だったようだ。

普通のOL役では、やや浮いてしまうような武井の美貌が、夜の銀座という“異世界”で存分に生かされている。また衣装やメークだけでなく、その落ち着いた立ち居振る舞いと表情によって「銀座で一番若いママ」を見事に造形している。

さらに今回のドラマ化のオリジナル部分として、亡くなった父親が残した借金のために、元子と母親が苦労した過去をきちんと描いている。そのため悪女であるはずの元子に、見る側が“肩入れ”する余地が生まれた。羽原大介の脚本の功績だ。

脇役陣も充実している。銀座ママの真矢ミキ、病院長の奥田瑛二など、いかにも“らしい”面々が若い武井を支えている。成功を収めたかに見える元子だが、試練が待ち受けていることは必至。当分は目が離せない。

(日刊ゲンダイ 2017.08.02)

NEWSポストセブンで、『黒革の手帖』の脇役たちについて解説

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黒革の手帖 好調理由の1つは
脇固める役者のキャスティングの妙
武井咲(23)主演の『黒革の手帖』(テレビ朝日系)が好調だ。平均視聴率は初回放送が11.7%、第2回が12.3%とともに二桁越えをマーク。下馬評では「CM女優のイメージが強い武井にこの大役は務まらないのでは?」との声も多かったが、「銀座のママ」という色気ある役どころで新境地を開拓している。

ただ、忘れてはならないのは彼女の脇を固める俳優陣の活躍。元テレビプロデューサーで上智大学教授(メディア文化論)の碓井広義さんも、好調な滑り出しを見せた要因の一つは「キャスティングの妙にある」と分析する。

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今回の『黒革の手帖』放送前には、23歳の武井さんが銀座のママを演じるのは「若すぎる」という指摘がありました。正直私も「大丈夫かな」と思いましたが、ふたを開けてみたら「大健闘」といえる内容だと思います。ただ、武井さんが「若い」というハンデを克服できたのは、彼女の裏で支える制作陣の創意工夫があったことも忘れてはいけません。

まず挙げられるのは、「銀座最年少のママ」という設定です。将棋の藤井聡太四段に代表されるように、今年のキーワードの一つは「最年少」。その言葉ををさりげなく入れているのがいいですよね。2004年放送の『黒革の手帖』で主演を務めた米倉涼子さんの強烈な印象を払拭するのに、「いい設定を見つけたな」と思います。

そして武井さんの脇を固める俳優陣のキャスティングにも光るものがありました。武井さんは彼らが引き起こす波に乗っかるだけで充分というくらい、一人ひとりが見事にそのキャラクターを演じきっています。

真矢ミキさん(53)は、お母さん役からキャリアウーマン役まで幅広くこなしますが、銀座のママがぴったり似合います。「こんなママがいるお店に通ってみたいな」と思わせるくらいの風格が漂っています。「古きよき銀座のママ」を演じている時の真矢さんは、『ビビット』(TBS系)に出ている時よりも生き生きしているように見えます(笑い)。

◆私生活の鬱憤を晴らすかのような高畑淳子の迫力

奥田瑛二さん(67)は第2話での中心人物。単なるお金持ちのクリニック院長ということではなく、「女好き」というところが奥田さんの私生活と重なって見えて面白い。安藤和津さん(69)にバレないようにこういうことをしてきたのかな、と思っちゃいますよね(笑い)。ちなみにクリニック院長が「国有地をタダで手に入れる」というエピソードは、まさに森友学園問題とリンクするタイムリーなネタで、ドラマはこうあるべきだと改めて思いました。作品の中に風刺を入れてチクチクやるのは、歌舞伎も同じですから。

そして高畑淳子さん(62)は、私生活の鬱憤を晴らすかのような鬼気迫る演技を見せてくれました。奥田さん演じる院長を長く支えてきた看護師長であり、愛人という役どころで、最初は悪役のようなキャラでしたが、院長に裏切られた途端に人間らしい一面が垣間見えて「これはつらいよなぁ、かわいそうだなぁ」と同情を誘いました。やはり息子さんの不祥事の余韻が残る中での出演ですから、幸せオーラのある女を演じるわけにはいかない。そういう意味ではいいポジションに収まったと思います。

若手の中では仲里依紗さん(27)が光っています。『あなたのことはそれほど』(TBS系)に続いて重要な役どころで、じわじわ来ている感じがあります。女優としての彼女の武器は、素朴なキャラから悪役にギアが入る時の表情の変化です。派遣銀行員の時は気弱だった女性が、ホステスに転身して男を手玉に取る女に豹変する。したたかで現実的な女性の二面性をうまく出しながら、主人公・元子の足元をすくう最大のライバルになりそうです。

◆今後の展開に期待を抱かせる滝藤賢一、高嶋政伸

登場回数はまだそれほど多くないキャストも、この後の展開で何かとんでもないことを起こしそうな雰囲気をすでに感じさせています。元子に嵌められた銀行員を演じる滝藤賢一さん(40)なんかは、出てくるだけで「ただごとでは済まないな」という空気になる。予備校理事長を演じる高嶋政伸さん(50)も、独特の怪しさがあって“冬彦さん”を彷彿させるところがあります。伊東四朗さん(80)はまさに政界のフィクサーという感じ。「いかにもな感じだなあ」と思いますね。江口洋介さん(49)演じる代議士秘書も、腹に一物ありそうですね。亡くなった議員の地盤を継いで秘書が立候補するというくだりは、故・中川一郎氏と鈴木宗男さんの関係をなぞっているかのようです。

派遣銀行員が1億8000万円の横領をして銀座のママになるという、現実離れした設定ながらも、話の節々に現実とリンクする場面があるのが今回の『黒革の手帖』の見どころだと思います。

今後のストーリーの展開として、元子に嵌められた人たちの復讐が始まるでしょうが、脇役といっても一人ひとりが濃いエピソードを持っていそうなキャラばかりなので、一筋縄ではいかないと思います。何も持たない元子がゼロから這い上がり、叩き落されてはまた這い上がる。そののぼりくだりの人生を視聴者も楽しむというドラマ。個性的なキャラたちが次はどんな波乱を巻き起こすのか、いろんなパターンが考えられるので最後まで目が離せません。

(NEWSポストセブン 2017.08.02)

【気まぐれ写真館】 今年も猛暑 戦後72年8月6日 合掌

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