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解説した、「NHK紅白」特集記事の全文

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解説した、アサヒ芸能の「NHK紅白歌合戦」特集記事。

その全文、以下の通りです。


「紅白」女の当落
「場外バトル」を生中継する!
歌は世につれ世は歌につれ、今年も出演者が決まりましたNHK「紅白歌合戦」。選ばれた人、選ばれなかった人、そして断った人。何より気になるのが紅組──女たちの場外バトルでございます。お茶の間をにぎわせる大みそかの歌の祭典の舞台裏。皆様に余すところなく生中継でお届けします。

11月26日にNHKが「紅白歌合戦」の出場歌手を発表した。全51組中、初出場は5組。今年は目玉なしとの声が強いが、決定まで話題になったのは大ヒットしたディズニー映画「アナと雪の女王」の「レリゴー」(「Let It Go~ありのままで~」)を誰が歌うのか? ということだろう。なぜならこれには「4人の女が絡み合う」からだ。

英語版ではイディナ・メンゼル(43)が歌い、日本語吹き替え版では、松たか子(37)が、エンディングではMay J.(26)が「レリゴー」を歌っているのだ。しかも神田沙也加(28)が挿入歌を担当している。もちろん、NHKは松に対して必死の交渉を繰り広げていた。

しかし、松は、「出演したら本業の歌手の方に失礼です」と、色よい返事をしなかったのである。その原因は今年1月に公開した映画「小さいおうち」だという。山田洋次監督との仕事により、再度、女優の楽しさに目覚めた松は、「今は、基本的にお芝居のお仕事をしたい」と周囲に主張していた。そんな松に対しNHKは10月頃、“最強の刺客”を差し向けた。

NHK関係者が語る。

「大河などで松さんときわめて近い関係にあるプロデューサーを通して説得を続けたんです。さすがに松さんも強く断れず、曖昧な受け答えをしていました」

この態度をNHKサイドは「好感触」と捉え、局内の紅白に関連する部署では「出そうだ」ということで盛り上がることになった。

今となってはむなしい“お祭り”騒ぎとなったが、松は発表翌日に妊娠6カ月であることを公表した。しかし、現在は8年ぶりに映画化される「HERO」の撮影中であり、妊娠が固辞の理由とは言えない。最後まで「出演辞退も怖くないわ」という気持ちだったのか‥‥。結局、NHKは「アナ雪」特設コーナーを設け、May J.と神田沙也加をスタジオに、本家のイディナ・メンゼルがNYから中継する形で放映する予定だ。

松に関してもいまだ諦めてはいないようで、「そこに松さんがサプライズ出演する可能性はわずかながら残っています」(NHK関係者)

しぶとく交渉は続いているようだ。

さて、今年で65回を迎える紅白だが、「時代遅れ」の感は否めない。上智大学文学部新聞学科の碓井広義教授(メディア論)が語る。

「紅白が変わったというより、視聴者側が変わったと言えるでしょう。視聴者のテレビに対するスタンスが変わってしまった。今の視聴者にとっての『メディアの優先順位』で、何が自分にとって大事か? と考えると必ずしもテレビは一番ではありませんから」

最高視聴率81.4%の記録を持つ大みそかの恒例行事は、すでに役割を終えているのか──。

碓井教授が続ける。

「家族・家庭のあり方が個人主義どころか『バラバラ主義』になってしまいました。家庭にテレビが一台、そこにみんなが集まって観るというスタイルが変わってしまったということです。そうした流れに紅白も巻き込まれていったということでしょう」

それでも一部の歌手にとって紅白出場は喉から手が出るほど欲しいもの。昨年“御大”北島三郎が「勇退」という名の「リストラ」にあった時点で、次のターゲットになっていたのは和田アキ子(64)だ。

「歌唱力は別として、CDが売れていません。3年前からNHKは、『アッコ切り』を本気で考えるようになった。ネックは綾瀬はるかも所属する事務所の力です。切るのはいいけど『一斉に引き揚げる』ということになりかねないので切れません」(NHK関係者)

和田は出演者リストに自分の名前があった瞬間、安堵の表情を浮かべたという。

泣きを見たのが小林幸子(60)である。今年は芸能生活50年の節目の年。武道館でのコンサートも行い、「NHKの人も見に来てくれた」と、紅白出演に執念を見せたが‥‥。

芸能記者が語る。

「派手な衣装でテレビに出ている姿が地方視聴者の反感を買い、抗議が来るようになって落選しました」

小林は、すでに紅白用のド派手電飾衣装も注文していたという。

そんな悲喜劇をよそ目に、驚きを与えたのが薬師丸ひろ子(50)の出演だ。彼女は82年に「セーラー服と機関銃」でオファーを受けるも大学受験を理由に辞退している。昨年は、あくまで朝ドラ「あまちゃん」の「鈴鹿ひろ美」として出場したことから、今回が初出場となった。話は「あまちゃん」に遡る。

「ドラマで歌を歌うということでボイストレーニングをしました。昨年の紅白で歌うと、想像以上の歌声でした」(NHK関係者)

そこをNHKがくすぐった。「ボイトレまでしてもったいない」「視聴者から大反響」──本人もすっかりその気になり、「ナマで歌うのもいいかも☆」と快諾したという。デビュー作「野性の証明」で高倉健と共演したこともあり、舞台プランが着々と練られているという。

「健さんとのデビュー作のワンシーンで登場し、『セーラー服──』を歌います。昨年亡くなった大滝詠一さん作曲の『探偵物語』にスイッチして、出演がかなわなかった竹内まりやさんが薬師丸さんのために書き下ろした『元気を出して』でシメる」(NHK関係者)

まさに薬師丸ひろ子歌謡ショー。本人も「カ・イ・カ・ン」になることは間違いない。現在、薬師丸は専用トレーナーの下でレッスンに励んでいるという。

もう一人のサプライズが12年ぶりに出演する中島みゆき(62)だ。朝ドラ「マッサン」の主題歌を歌っているが、本人はいたってマイペース。すでに年末年始を海外で過ごすことを決めており、「旅行のキャンセル料が発生するから出られない」と、断り続けていた。そんな中島が出演を決めたのは、なんと発表6時間前だったという。

「前回は黒部ダムからの中継でした。年明けから『マッサン』は北海道の余市編が始まります。当然、余市からの中継でしょう」(芸能記者)

ところで、ここで考えたいのが、外国人歌手がカタカナなのにもかかわらず、出演者にあまりにもローマ字の名前が多いことである。初出場の「SEKAI NO OWARI」という名前を見て「何じゃそら?」と首をかしげるのは、多くの中高年にとって自然なことだろう。

「ここしばらく紅白は『対症療法』を行っているという印象は否めません。何となく状況に合わせる形で、こっちで求められているものを用意し、あっちが欲しがるものも並べてみましたという、まるで潰れかけの総合デパートみたいです。本当はNHKとして『紅白とはこういうもの』という、『紅白の哲学』を考えるべきでしょう」(碓井教授)

ここまで場外バトルを紹介したが、今年の紅白はリアルバトルが勃発するかもしれない。そう、サザンオールスターズの特別出演と、長渕剛(58)の出演である。桑田佳祐(58)は20年前に「すべての歌に懺悔しな」で、「テレビにゃ出ないと言ったのにドラマの主役にゃ燃えている」などと、長渕をコキ下ろした。これに長渕が「絶対に許さない」と激怒。桑田がボディガードをつけることになったのだ。

「今回はコンサート会場からの中継です。演出も指示も一切しない。桑田さんは紅白で、突然、三波春夫さんのモノマネをするなど“前科”がありますので『すべての歌に──』をいきなり歌われたら‥‥」(NHK関係者)

最もスリリングな時間を提供するのは、ずばり、サザンであると言えよう。もはや歌とは無関係な話題ばかりが先行する紅白。なぜ、本来の意味を失っても番組を継続するのか、疑問に思うところだろう。

「視聴者にとってというより、公共放送にとっての『紅白』という思いがあるのかもしれません。NHKにとって、3大『記号』『シンボル』は『朝ドラ』『大河』『紅白』です。『朝ドラ・大河』がドラマの看板、エンターテインメントの看板が『紅白』です。やめるのは簡単ですが、手放したらNHKは多くのテレビ局のワンノブゼムになってしまうのではないか、という思いがあるのではないでしょうか」(碓井教授)

除夜の鐘を前に、戦いのゴングは鳴るか──。

(アサヒ芸能 2014.12.11号)



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