まず、「これは期待できそうだ」というのが、初回を見ての第一印象でした。
ドラマで最も大事なものは物語であり、ストーリーです。
吉田松陰を軸に、幕末から維新へと時代を動かした人物たちを描く。
基本的に面白くないはずはありません。
ただし今回は、吉田松陰の「妹」という、一般的には知られていない人物を主人公に据えたことの不安はあります。
主人公の設定が物語の幅を狭めないか。
まあ、それは初回だけでは判断できませんが、子役の山田萌々香さんの好演もあって、少なくとも文(ふみ)という女性が少女時代から“ひと味違う”魅力をもった人物であることは伝わってきました。
次回からは井上真央さんも本格的に登場するので、文のヒロインとしての存在感も増すでしょう。
松陰はもちろん、やがて最初の夫となる久坂玄瑞や高杉晋作との関わりも興味深い。
それから、初回で感心したのは、いい台詞がいくつもあったことです。
中でも、藩校「明倫館」の場面は秀逸でした。
幕府が禁じた書物をめぐる騒動を踏まえて、後の松陰、吉田寅次郎(伊勢谷友介)が一堂に問いかけます・・・・
皆に問いたい。
人はなぜ学ぶのか。
私はこう考えます。
学ぶのは
知識を得るためでも、
職を得るためでも、
出世のためでもない。
人にものを教えるためでも、
人から尊敬されるためでもない。
己(おのれ)のためじゃ、
己を磨くために人は学ぶんじゃ。
・・・・それに呼応するように、後に文の夫となる小田村伊之助(大沢たかお)が続けます。
人はなぜ学ぶのか。
お役に付くためでも、
与えられた役割を果たすためでもない。
かりそめの安泰に満足し、
身の程をわきまえ、
この無知で
世間知らずで
何の役にも立たぬ
己のまま生きるなど
ご免です。
なぜ学ぶのか。
この世の中のために、
己がすべきことを知るために学ぶのです。
・・・・この場面、そしてこれらの台詞には、このドラマを作っている人たちの「志」のようなものが込められていました。
それがあれば、大きく堕することはないのではないか(笑)。
「これは期待できそうだ」と思った所以です。
そうそう、池田秀一さん(あのシャア・アズナブルです)のナレーションも良かった。
以前、プロデューサー時代に仕事をお願いしたことがありますが、
とにかく上手い。聴いていて安心(笑)。
主観性と客観性のバランスが見事なんですね。プロの仕事です。
池田さん、長丁場ですが頑張ってください。