日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。
今週は、テレビ東京の年末特別ドラマ「東京センチメンタル」について書きました。
2015年もテレビ東京は
オトナの男の味方であってほしい
喧騒の年末特番に閉口していた12月30日夜。テレビ東京が放送した特別ドラマ「東京センチメンタル」に救われた。いや、大作とか問題作とかではない。中年オヤジの淡い恋物語なのだ。
しかし、主人公の和菓子職人を「花子とアン」の吉田鋼太郎が演じたことで俄然魅力的なドラマとなっていた。吉田はバツ3で現在は独身。結構惚れっぽい。10年ぶりで再会した高岡早紀と谷中の町を散歩しながら、また仕事上のつき合いがある黒川芽以と深川を食べ歩きしながら、つい「もしかしたら」という勝手な妄想が湧き上がる。
結局、子供と多額の借金を抱えた高岡は北海道の資産家を選び、若い黒川は結婚のお知らせを送ってくる。つまり片想いのままフラれるのだが、吉田は執着しない。「ま、いっか」という余裕の負けっぷりが微笑ましいのだ。オトナの男はこうでなくてはならない。
このドラマには「町歩きの楽しみ」という裏テーマがある。日常からのささやかな逸脱。オトナならではの趣味だ。ドラマの中に登場する谷中の「カヤバ珈琲」も、深川の「イベリコバル門仲」も実在の店だ。この辺りは「孤独のグルメ」を想起させる手法で、どの店も行ってみたくなった。
2015年もまた、テレビ東京はオトナの男の味方であってほしい。そんな願いが叶いそうな、オトナなドラマだった。
(日刊ゲンダイ 2015.01.07)