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「本当にうまい役者」ベスト100人を選考&解説(女優編)

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発売中の「週刊現代」最新号に、特集「いま日本で本当にうまい役者ベスト100人を決める」が掲載されました。

この記事で100人の選考に参加し、解説しています。

以下は「女優編」です。




いま日本で
「本当にうまい役者」
ベスト100人を決める
〈女優編〉ベスト50
いま日本で一番うまい「女優」は誰か――。ここからは、男優編に続いて、女優のベスト50を一挙公開し、今年注目すべき女優、抜きんでて演技が巧みで、画面によく「映える」女優たちを一緒に確認していこう。

この女優たちが出演するドラマや映画をチェックしておけば、きっと素晴らしい作品に、今年も出会えるはずだ。

それでは早速、ランキングを見ていこう。今回、栄えある第1位に輝いたのは――満島ひかり(29歳)である。

上智大学文学部教授(メディア論)の碓井広義氏は満島を推した理由をこう語る。

「彼女はまさに『全身女優』のような存在です。ベスト50に入った女優たちは、みなすばらしい演技力を持っていますが、彼女らと比べても、全身を使って役に成りきるという点では、彼女は一番でしょう。泣きの演技から、笑いの演技、怒りの演技まで何でもこなせる全方位型の女優です」

元々は『フォルダー5』というアイドルグループの一員だった満島は、園子音監督の映画『愛のむき出し』(’09年)での体を張った演技で、注目を集めた。昨年もドラマ『若者たち2014』や『ごめんね青春!』に出演し、気合いの入った演技で、視聴者をくぎ付けにした。

コラムニストの山田美保子氏も満島についてこう絶賛する。

「彼女はとにかく演技に対して真面目で真摯なんです。ドラマ『woman』(’11年) では、2人の子供を抱えるシングルマザーを見事に体現しました。生活に困窮しながらも健気に頑張るその姿に、涙が止まりませんでした。彼女の演技は、見る者の心を揺さぶる力があるんです」

その満島に続き、2位に入ったのが寺島しのぶ(41歳)である。

『仁義なき戦い』の元プロデューサーの日下部五朗氏は、寺島を高く評価する。

「さすが往年の名女優・富司純子さんの娘だけあって、その演技力には舌を巻く。彼女は、決して美人のタイプではないが、あの体当たりの演技には、誰もが心を奪われる。しかも、彼女は必要とあれば、脱ぐことも厭わない。今の映画界にとって非常に貴重な存在です。女優というのは、セリフだけでは語れないものが絶対にあるんです」

寺島が、映画『キャタピラー』(’10年)で見せた、戦争により四肢を失った夫と性行為に及ぶシーンは、もはや伝説となっている。まさに「魂」で演じた濡れ場だった。その演技は海外でも高く評価され、ベルリン国際映画祭で最優秀女優賞を受賞した。

「役者は観念ではなく、本能で芝居をしないと心の表現まではできない。全身全霊で芝居に向き合ってこそ、寺島のような『本物』の女優になれるんです」(日下部氏)

そしてなんと3位に輝いたのは、今年の大河ドラマ『花燃ゆ』で主演を務める井上真央(27歳)だ。

「ここ最近の井上の成長には、目を見張るものがあります。彼女は元々ドラマ『キッズ・ウォー』(’99年~’03年)で子役としてブレイクした。そのため子役のイメージがなかなか抜けずにいたんですが、永作博美(44歳)と共演した『八日目の蝉』(’11年)で完全に化けました。原作は角田光代で、母だと思っていた女性(永作)が、実は、自分を誘拐した犯人だったという重たい設定です。そんな影のある役を演じることで、子役から大人の女性へと脱皮したんです」(アイドル評論家の中森明夫氏)

同じく、碓井氏も井上を高く評価する。

「今年の『花燃ゆ』の主役にも抜擢されたように、彼女は、最近では珍しくなった古き良き日本女性を体現できる20代の女優なんです。箸の持ち方から、字の書き方まで、すごく綺麗なんです。普段の生活から演技のことを心掛けている証拠でしょう。着物も似合うし、まさに大和撫子と呼ぶにふさわしい女優です」

4位には、四十路を超えて新境地を切り開いた宮沢りえ(41歳)がランクイン。映画『紙の月』(’14年)での濃厚なベッドシーンは観客に衝撃を与え、2月に決る‘14年度日本アカデミー賞の主演女優賞の最有力候補とのうわさもある。

「10代の時に『Santa Fe』でヌードを披露してから約25年。40歳を超えてさらに大人の色気に磨きが懸かりました。宮沢の人生は波乱万丈だった。貴乃花との婚約破棄、元夫との離婚、そして去年は二卵性母子とも言われた最愛の母を亡くした。しかし、それらすべての経験を宮沢は、演技に活かしているからすごいんです」(日下部氏)

そして5位には、ドラマ『時効警察』でのコミカルな演技から、シリアスな演技まで幅広くこなす麻生久美子(36歳)が、選ばれた。

「顔は美人だけど地味。その特徴を演技に最大限活かしているところがいい。 ドラマ『泣くなハラちゃん』(’13年)で、かまぼこ工場で働く独身女性を演じた時は、見ているだけでせつなさが伝わった。そういう空気感まで表現できる女優なんです」(山田氏)

6位は松たか子(37歳)。昨年は『アナと雪の女王』で歌手としての話題が先行した彼女だが、映画『告白』(’10年)で魅せた鬼気迫る演技は、観客に強烈なインパクトを与えた。歌舞伎一家に生まれ、舞台で鍛えた演技力は健在だ。

7位には昨年、映画『そして父になる』やドラマ『最高の離婚』に出演した尾野真千子(33歳)が入った。尾野は中学3年生の時、地元奈良の中学校で偶然、河瀬直美監督の目にとまりスカウトされるという珍しい形でのデビューだった。

「河瀬監督によれば、その時の尾野の立ち姿がスクリーンに『映える』と瞬間的に思い、スカウトしたみたいです。それくらい彼女は、見ている者を惹きつける雰囲気を持った女優なんです。もともと男っぽく、サバサバしていて、神経が太いので、演技も大胆で見ていて気持ちがいいですね」(中森氏)

8位には、いまや若手演技力№1と言われる二階堂ふみ(20歳)がランクインした。彼女は昨年『軍師官兵衛』で淀役を熱演し、一躍全国にその名を売った。満島ひかりや吉高由里子を見出した園子音監督によると、彼女は演技に対する理解度が、圧倒的に優れているという。また、映画の知識量、読書量は若手の中でも群を抜いており、演技に対しての研究は、他を寄せ付けない。まだ20歳と若いが、海外からも注目される逸材なのである。

9位には、岩井俊二監督の『リリィ・シュシュのすべて』(’01年)でデビューし、『フラガール』(’06年)でブレイクした蒼井優(29歳)が入った。

「同世代の中でも特に、個性派女優として知られる彼女ですが、年を取るごとに『若いころの大竹しのぶさん』に似てきましたね。居るだけで芝居ができる生まれつきの女優です」(山田氏)

10位に入ったのは、綾瀬はるか(29歳)だ。昨年は主演を務めた『明日、会社休みます』が大ヒットし、改めて世間に綾瀬はるか人気を印象づけた。

「普通この歳の女性が、『処女』で恋に臆病な女性を演じると、どうしても違和感が出てくるんですが、彼女がやるとわざとらしくないんですよね。今回の『こじらせ女子』は、まさに彼女のハマリ役でした。天然と言われるけど、ハマった時の爆発力はすごい」(碓井氏)

11位以降にも画面に「映える」注目の女優は、まだまだいる。昨年、映画『まほろ駅前狂騒曲』やドラマ『MOZU』で存在感を発揮した真木よう子は19位に入った。NHK『花子とアン』で無邪気な演技から、大人の演技を魅せた吉高由里子(26歳)は20位。

遅咲きながら、今回のランキングで上位の13位に入ったのが、高畑淳子(60歳)だ。

「ドラマ『白い巨塔』(’03年)で石坂浩二の妻を演じ、注目を集めてから12年。昨年のドラマ『昼顔』では、上戸彩(29歳)の姑役で安定感のある演技を披露しました。先頃、紫綬褒章を受章するなど、今もっとも必要とされるベテラン女優です。彼女の演じる母親はとにかく存在感がある。ヒステリックになったり、優しく慰めてくれたり、いろんな顔を見せてくれるんです」(山田氏) 

‘80年代を代表するアイドルから、近年、女優として再評価された小泉今日子(48歳)が18位にランクインし、薬師丸ひろ子(50歳)も31位に選ばれた。

「キョンキョンも薬師丸もNHKの『あまちゃん』でアイドルから、本物の女優に進化しました。二人のアイドル時代を知っているだけに感慨深い。あえてノーメイクで撮影に挑むなど、年齢どおりのリアルな演技は素晴らしい」(山田氏)

1位の満島ひかりと同じ世代には、16位の貫地谷しほり(29歳)、21位の石原さとみ(28歳)、39位の宮崎あおい(29歳)、49位の長澤まさみ(27歳)など、まだまだ多くの実力派女優が存在する。

「今の20代後半の女優は黄金世代なんです。10代の頃から演技力が高く、映画やドラマで主役を務めてきた。ここ10年の芸能界を牽引してきたのは、彼女たちだといっても過言ではない」(中森氏)

一方、若手女優からは、30位の橋本愛(18歳)、32位の有村架純(21歳)48位の能年玲奈(21歳)のNHK『あまちゃん』トリオと、NHK『花子とアン』で醍醐役を演じた高梨臨(20歳)が50位にランクインした。

「橋本は、18歳になった瞬間に、大人の色気や演技を学ぶためポルノ映画を観に行ったそうです。『あまちゃん』のイメージが強い能年ですが、天才的な女優であることは間違いない。これから更に進化するはずです。有村はドラマからCMまでなんでも、できる器用さがある。万人受けする演技ですね」(中森氏)

脇役ながら、確実に実績を積み上げランクインした女優もいる。15位に入った安藤サクラだ。

「奥田瑛二さんと安藤和津さんの娘だけあって、演技力は抜群です。普通の女性を演じさせたら、右に出る女優はいません。また『百円の恋』でボクサーを演じたと思ったら、『0.5ミリ』では、介護ヘルパーの役をやったりと、どんな職業でも演じられる器用さがある」(山田氏)

木村多江(43歳)、吉田洋(40歳)も脇役を中心として演技力を磨き、そして今やドラマや映画では欠かせない存在となっている。

脇役から、次はおそらく主演に抜擢されるほど力をつけたのが、15位の黒木華(24歳)だ。

「初めて彼女の演技を見たとき驚きました。とにかく女優としての芝居の勘がいい。出るときは出る、下がるときは下がる。そのタイミングが絶妙なんです。松たか子さんが主演を務めた『小さいおうち』で、主役じゃないのに、第64回ベルリン国際映画祭の最優秀女優賞を受賞したくらいですからね。個性派女優として、今後も存在感は増してくるでしょう」(山田氏)

今回ランキング入りした「本当にうまい女優」50人は、今年どんな作品に登場し、どんな演技をみせてくれるのだろうか。彼女らが演じる物語を見るのが、今から待ち遠しい。

(週刊現代 2014.01.17/24号)



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