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産経新聞で、「レコード大賞」について解説

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「出来レースでは?」
国民的番組『レコ大』の存在意義は
視聴者に認められているか
三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBEの「R.Y.U.S.E.I.」に決まった、昨年末の第56回日本レコード大賞(レコ大)。TBS系での発表の生中継は長年、年末年始を代表する国民的番組として親しまれてきたが、昭和50年代をピークに視聴率はこの20年近く、20%を超えられないでいる。識者からは賞の存在感低下を危ぶむ声が上がる一方、関係者は“復権”に向けた模索を続けている。

 ■「作品をランク付けするのか」

レコ大は昭和34年、日本作曲家協会会長だった作曲家の古賀政男と、服部良一、音楽評論家の平井賢が中心となって創設された。前年に始まった米グラミー賞をヒントに、対象年度に発売された作品の中から、その年度を代表する大きな支持を集めたものを顕彰する賞だ。

ただ、TBS社史「TBS50年史」によると、賞創設当時はレコード会社が「われわれの作品にランク付けするのか」と怒り、大半が共催を断るなど、理解は得られなかったようだ。そんななか、テレビ局で唯一、理解を示したのがTBS(当時はKRT)。賞に出資し、毎年、受賞発表の様子を放送した。

昭和40年代中頃からテレビ歌謡曲の全盛期が到来すると看板番組に成長し、52年の第19回(大賞は沢田研二「勝手にしやがれ」)の視聴率は、過去最高の50・8%を達成。ほかの民放局が「新宿音楽祭」「日本歌謡大賞」といった音楽祭や音楽賞を相次いで放送する先駆けにもなった。

 ■「賞レース」の功罪

だが、こうした盛り上がりは同時に、その年の「賞レース」の行方に注目が集まることにもつながっていった。音楽評論家で、現在レコ大の常任実行委員を務める富澤一誠氏は「賞レースの盛り上がりが、ファンには音楽業界の利益優先の『腐敗』や『出来レース』のように映るようになり、大衆から支持を失っていった」と指摘する。

平成に入ると、NHKが紅白歌合戦の放送開始時間を午後9時から午後7時台へと大幅に早めていく。出場歌手もバッティングするようになり、紅白出場歌手がレコ大会場からNHKホールへ急いで移動する様子が新たな風物詩になる一方、レコ大の視聴率は徐々に低迷。平成17年には10・0%と過去最低を更新した。厳しい状況を打開するため、翌18年には放送日を12月31日から前日の30日に変更した。

上智大の碓井広義教授(メディア論)は、レコ大のターニングポイントの一つとして、平成13年から浜崎あゆみが3年連続で大賞を受賞したことを挙げる。「もちろん浜崎さんは悪くないが、同じ歌手が3年連続で受賞することで、視聴者は『またか』としらけてしまったのではないか」と推測する。

また、平成20年から25年までの大賞受賞者は、EXILE(4回)とAKB48(2回)の2組のみ。昨年の三代目―もEXILEの兄弟グループだ。碓井教授は「音楽の趣味が細分化、多様化し、1年を代表する曲を選ぶことが難しくなっているのは理解できる。しかし、結果として持ち回りになってしまっており、グループのファンだけが喜ぶような賞になってしまっていないか」と問題提起する。

 ■スターを生む舞台に

一方、放送日を12月30日に変更した平成18年の番組視聴率は17・0%と、前年より7ポイント上昇した。その後、視聴率は一進一退を続けているが、23〜25年は14・9%、16・6%、17・6%と3年連続で上昇するなど、復調の兆しも現れつつある。なお、昨年は15・6%だった。

富澤氏は「CDの売り上げが伸び悩むなか、音楽業界を盛り上げる環境作りが必要になっている。テニスの錦織圭選手やフィギュアスケートの羽生結弦選手のように、スーパースターは華やかな舞台がないと生まれ得ない。レコ大はそんな受け皿にならないといけない」と強調する。

昨年のレコ大では、優れた企画作品に贈られる「企画賞」に、過去最多の11作品を選出した。富澤氏は「賞の乱発とみられるかもしれないが、レコード会社の優れた企画を紹介することで歌手にも番組出演の機会が生まれ、ファン獲得の裾野が広がるチャンスになる。視聴者の趣味の多様化に応える狙いもある」と語る。

レコ大以上に長い歴史を持つNHK紅白も、プロデューサーの制作費着服事件などが発覚し、低迷した時期もあった。だが、近年は視聴者の予想を裏切るような出演者発表や番組演出などが奏功し、再び高い注目を獲得している。番組演出を含め、どう賞を視聴者に説明し、どう見せていくか−という点は、確かにカギになるかもしれない。

上智大の碓井教授は「いろいろいわれても、日本の音楽シーンを総括し、顕彰する番組はレコ大以外にない。今の時代、誰もが納得するような賞選びは不可能かもしれないが、視聴者の声が反映されるような『参加性』のある試みがあってもいいのではないか」と提案している。

*文中の視聴率はすべてビデオリサーチ調べ、関東地区

(産経新聞 2015年01月10日)

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