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今期ドラマにおける、各局ヒット作スタッフ再結集での勝負

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『ミタ』、『最高の離婚』、『半沢直樹』・・・
今期ドラマは、ヒット作スタッフ再結集での勝負
1月に始まった今期の連続ドラマも終盤に入った。前期(昨年10月~12月)の『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系)のようなメガヒットはないが、大人の男性が今から“参戦”しても楽しめるドラマが放送されている。注目したいのは、これまで確かな実績を残してきた、実力派制作チームによる3本だ。

『○○妻』日本テレビ系

まずは、『家政婦のミタ』(日本テレビ系)の脚本家・遊川和彦氏とスタッフが再結集した『○○妻』(同)を挙げたい。

ニュースキャスターである久保田正純(東山紀之)の妻・ひかり(柴咲コウ)は、夫を支えることにかけては完璧だ。家事全般はもちろん、服装のコーディネートから番組の感想まで手を抜かない。誰よりも尊敬する夫に尽くしたいからだ。

しかし、2人は正式な夫婦ではない。入籍の形をとらない「契約夫婦」なのだ。正純は普通の結婚を希望しているが、ひかりは断固拒否する。では、なぜ契約なのか。その裏には謎めいた過去があり、『家政婦のミタ』同様、ヒロインの秘密が徐々に明かされるプロセスがスリリングだ。

ただ、それ以上に興味深いのは、契約妻という設定を通じて「夫婦とは何か」「結婚とは何か」を問いかけていることだ。遊川氏の脚本、連ドラ初主演の柴咲、そして華のある東山の好演に支えられ、“異色の社会派ドラマ”と呼べる1本になっている。

それにしても、人を食ったタイトルである。「美人妻」や「昼顔妻」などを連想させながら、フタを開けてみれば「契約妻」だった。とはいえ、あえて『○○妻』としたのは、「契約」だけではない妻の真相が隠されていたからだ。

夫婦は、一種の鏡のようなものかもしれない。相手の中に自分の姿も映し出されている。夫にとって、妻が「極悪妻」となるか、それとも「極楽妻」となるか。それは夫自身の人間性と生き方にかかっている。

『問題のあるレストラン』フジテレビ系

2本目は、真木よう子主演の『問題のあるレストラン』(フジテレビ系)だ。真木、脚本の坂元裕二氏、そしてスタッフ共に、2013年に放送された『最高の離婚』(同)のチームである。

田中たま子(真木)は飲食サービス会社に勤めていたが、高校時代の友人で同僚でもある女性が、社長(杉本哲太)や男性幹部からあまりにひどい仕打ちを受ける。それに激怒したたま子は「バケツで水かけ」という復讐を決行、クビになってしまう。

「より良い仕事がしたい」と思うのは男性も女性も同じだが、まだまだ男性中心の会社は多い。女性たちは、パワハラやセクハラに耐えながら働いているというケースもある。しかし、人としての尊厳まで踏みにじられては黙っていられない。たま子は仲間を集め、会社が経営する店の近くでレストランを開くという反撃に出る。

リーダー的存在を演じる真木はもちろん、ひとクセある(=問題のある)仲間たちも実にパワフルだ。映画『私の男』(日活)の二階堂ふみ、NHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』の松岡茉優、同じく朝ドラ『ごちそうさん』の高畑充希などが集まり、若手有力女優の競演となっている。シリアスとユーモアのバランスも絶妙で、働く女性たちへの応援歌的なドラマだ

『流星ワゴン』TBS系

脚本の八津弘幸氏、演出の福澤克雄氏、プロデューサーの伊與田英徳氏と並べば、『半沢直樹』『ルーズヴェルト・ゲーム』(共にTBS系)を手がけた剛腕トリオだ。そこに西島秀俊&香川照之という『ダブルフェイス』『MOZU』(同)の強力コンビが加わった。『流星ワゴン』(同)は、ドラマ好きにとって見逃せない1本となっている。

主人公の永田一雄(西島)は、最低の状況にあった。仕事ではリストラに遭い、息子は家庭内暴力を振るい、妻(井川遥)からは離婚届を突きつけられる。そんな中、ふと乗り込んだ不思議なワゴン車で過去へ向かうことになる。人生の分岐点に戻り、未来のために“修正”しようというのだ。しかも、同伴者は若き日の父・忠雄(香川)である。

後に確執が続くことになる父との二人三脚で、一雄は自分が知らなかった過去の事実や、父の意外な側面を垣間見る。同時に、息子の気持ちをわかっていなかった自分にも気づいていく。しかし、過去を変えるのは容易なことではない。

また、ワゴンを運転する橋本(吉岡秀隆)も気になる存在だ。彼は、自分が起こした交通事故で幼い息子を死なせてしまった過去を持つが、抱えているのはそれだけではない。このドラマは、そんな3組の“親子再生物語”なのだ。

西島と香川が向き合う場面は、やはり見ごたえがある。特に、香川が演じるアクの強い“昭和のオヤジ”は、余人をもって代え難い。SF風の設定には抵抗があるという人も、一見の価値は十分にあるだろう。

(ビジネスジャーナル 碓井広義「ひとことでは言えない」2月26日)

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