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北海道新聞「碓井広義の放送時評」 2015.03.02

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北海道新聞に連載している「碓井広義の放送時評」。

今回は、NHKのドラマと、日本テレビ・札幌テレビ制作のドキュメンタリーについて書きました。


原発再稼働 矛盾を問う
そこに暮らす人たちの「地元」とは?
過疎と高齢化が進み、社会的な共同生活を維持することが困難になった地域が全国各地で増えている。それが「限界集落」だ。

2月28日に最終回を迎えた、NHK土曜ドラマ「限界集落株式会社」。その舞台である山村もギリギリの状態だった。ある者は病に倒れ、またある者は村を去る。そんな地元に帰ってきたのが、かつて有機農業の夢に破れて逃げ出した大内正登(反町隆史)だ。

もう一人、突然現れたのが経営コンサルタントの多岐川優(谷原章介)である。村人たちに「やり方次第で農業は儲かる」と説き、後押しする。もちろん簡単に成功はしないが、地元で働き、暮らすことへの可能性を示す。

ドラマでは正登と多岐川をつなぐのが正登の娘・美穂であり、NHK「あまちゃん」に登場した地元アイドルグループ「GMT47」(GMTは地元の略)のメンバーだった松岡茉優の好演が光った。

この3人の個性と配置のバランスが功を奏して、地域活性化という一見地味なテーマが豊かなエンターテインメントになっていた。


来週、東日本大震災から4回目の3月11日を迎える。それは同時に福島第一原発の事故から4年でもあるが、今なお12万人もの避難者が不自由な生活を強いられている。

その一方で、全国各地の原発が、国の後押しで再稼働されようとしている。2月8日放送の「NNNドキュメント'15」(日本テレビ―STV)は、「再稼働元年~ここは原発の地元ですか?~」と題して、原発の“関係自治体”とは何なのかを掘り下げていた。

番組が取材したのは鹿児島県の川内原発、福井県の高浜原発、そして青森県に新設される大間原発だが、そこには共通の問題がある。

国は法律を改正して、住民が避難すべき範囲を大幅に拡大した。しかし、再稼働への同意を求められる「地元」の範囲は、福島での事故の前と変わっていないのだ。

たとえば高浜原発から4キロの位置にある京都府舞鶴市も、大間原発から23キロの函館市も国が決めた30キロの避難区域に入るが、原発の「地元」とは認められていない。

一旦事故が起きれば、市民が生命の危機にさえ直面するというのに蚊帳の外だ。そこには大きな矛盾があり、昨年、函館市が国と電源開発を相手に裁判を起こしたことも頷ける。

番組によれば、福島の12万人の避難者の大半が「地元」ではなく、「周辺」の町や村の住民だったという。私たちはこの事実をもっと重く受けとめるべきだろう。

(北海道新聞 2015.03.02)

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