「週刊新潮」の書評欄に書いたのは、以下の本です。
川本三郎 『サスペンス映画 ここにあり』
平凡社 3024円
既刊『時代劇 ここにあり』の姉妹編。1940~60年代の名品、55本が並ぶ。映画ファンでも知らないと思われるものが多いが、本書を読むだけで見たくなる。著者はサスペンス映画の魅力を「暗さ」だと言う。明るく楽しいハリウッド映画だけが映画ではない。
津野海太郎 『百歳までの読書術』
本の雑誌社 1836円
60年代から活躍した編集者であり、花森安治や植草甚一の傑作評伝の著者でもある。本書は今年喜寿を迎えた書物の達人による、老年読書の極意だ。本選び、蔵書の心得、図書館活用法など、豊富な知識と経験からくるヒントを、ユーモアと苦味を交えて語っていく。
宇都宮 聡、川崎 悟司 『日本の白亜紀・恐竜図鑑』
築地書館 2376円
映画『ジュラシック・パーク』では、バイオテクノロジーで蘇った恐竜たちが大暴れする。白亜紀はジュラ紀に続く地質時代だ。その頃の日本の陸や海に、どんな動物たちが生息していたのか。ページをめくる毎に、1億4500~6000万年前の世界が広がっていく。
相倉久人 『されどスウィング~相倉久人自選集』
青土社 2376円
今年7月に83歳で亡くなった音楽評論家の遺作である。50~60年代に孤高のジャズ評論家として活躍しながら、71年には撤退。翌年のディープパープル来日公演を機にロック評論を開始した過激派でもある。『新書で入門 ジャズの歴史』(新潮新書)も併読したい。
ジュリカ・カジェ:著、山本知子・相川千尋:訳
『なぜネット社会ほど権力の暴走を招くのか』
徳間書店 1728円
著者は新進気鋭の女性経済学者。トマ・ピケティ夫人でもある。本書では新聞など活字ジャーナリズムを救う方策として、財団と株式会社の中間形態「非営利のメディア会社」を提案している。情報が社会を支える“公共財”であることを再認識すべき時なのだ。
(週刊新潮 2015.09.10号)