日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。
今回は、日本テレビ「偽装の夫婦」について書きました。
日本テレビ「偽装の夫婦」
“普通の人”がほぼ不在
秋ドラマの中で注目度も高い「偽装の夫婦」。
第1のポイントは、遊川和彦のオリジナル脚本である。大ヒット作「家政婦のミタ」(日テレ系)は4年前。その後のNHK朝ドラ「純と愛」も、「○○妻」(同)もやや肩透かしだったからだ。
図書館司書のヒロ(天海祐希)は、才色兼備のせいで妬まれたり、疎まれたりしてきた。今は自分の能力を封印し、他者と距離を置いて暮らしている。連ドラ主演は久しぶりの天海だが、芝居場での“支配力”に衰えはない。出てくるだけで画面がぐっと引き締まる。
そんなヒロが25年ぶりに元恋人・超治(沢村一樹)と再会。彼はいきなり自分がゲイだと告白し、余命短い母親(富司純子)のためにと“偽装結婚”を依頼してくる。
さらに、超治が勤める幼稚園に娘を通わせる母親(内田有紀、好演)は、ヒロに向かって「あなたが好き」などと言い出す。ゲイに続いてレズ? そしてDVも登場しそうだ。なかなか刺激的でトリッキーな仕掛けではないか。
またヒロの叔母(キムラ緑子)、その息子(佐藤二朗)や娘(坂井真紀)も尋常ではない。気がつけば、このドラマには“普通の人”がほぼ不在。ヒロインを揺さぶる、遊川流のエグイからみが期待できそうだ。
大人のラブストーリーを標榜しているが、そんなヤワなもんじゃないぞと思わせるに十分な初回だった。
(日刊ゲンダイ 2015.10.13 )