だいぶ涼しくなりました。
「読書の秋」とは言いますが、世の本好きの皆さんには季節も無関係だと思います。
「読書の四季」ってのもヘンですが、『この作家この10冊』に出てくる、50人の作家と500冊など眺めていると、1年中、読んでいたくなります。
「週刊新潮」の書評欄に書いたのは、以下の本です。
近藤正高 『タモリと戦後ニッポン』
講談社現代新書 994円
昭和20年生まれのタモリ。その歩みは戦後70年と重なる。福岡在住の勤め人が、いかにしてタモリとなり、自称「国民のオモチャ」にまで到達したのか。時代背景、メディアや文化の状況、そして人との出会いまでが徹底検証される。評伝と現代史の見事なコラボだ。
本の雑誌編集部:編 『この作家この10冊』
本の雑誌社 1849円
「作家の10冊」は、創刊40周年を迎えた「本の雑誌」の人気連載だ。本書には大江健三郎、開高健から村上春樹まで50回、500冊分が収められている。選者とのマッチングの妙でどんな10冊が並ぶか、予想した上で読むのも一興。渡辺淳一も「失楽園」だけではない。
辰野 隆 『フランス革命夜話』
中公文庫 799円
仏文学者としての学識と豊かな人間性に裏打ちされた名随筆集だ。元本の出版は昭和33年。登場するのは、ロベスピエールなどフランス革命の主役たちと、『フィガロの結婚』の作者・ボーマルシェだ。激動の時代を生きた彼らの人物像が、時を隔てて鮮やかに甦る。
半藤一利、宮部みゆき 『昭和史の10大事件』
東京書籍 1296円
二・二六事件を舞台とする『蒲生邸事件』の作家と、博覧強記の歴史探偵が、昭和金融恐慌から宮崎勤事件までを語り合う。興味深いのは憲法第九条をめぐる話。昭和3年の「不戦条約」が示され、押しつけ論議に疑問を呈している。複眼で捉える歴史はスリリングだ。
成毛 眞
『教養は「事典」で磨け~ネットではできない「知の技法」』
光文社新書 799円
書評サイト「HONZ」代表が勧める事典活用法だ。「ある分野の素人には、その分野を学んでいく過程を楽しむ権利がある」という。編者の個性が前面に出た事典は意外と古びない。小刻みな知のインプットを行うのに最適だ。図鑑もまた有効な教養書だと知る。
(週刊新潮 2015.10.15号)