流行語大賞でクレーム殺到
“アベ政治”タブー化で沈黙
今年話題になった言葉を選ぶ「2015ユーキャン新語・流行語大賞」。12月1日に発表されたが、「世相をあらわしていない」と疑問の声が上がっている。
年間大賞の発表に先立ち、選考委員らは「今年は政治の季節だった」「政治色が強かった」「主役は永田町にいた」と「政治」を強調したにもかかわらず、大賞に選ばれたのは「爆買い」「トリプルスリー」。
「爆買い」は中国人ら訪日観光客が大量に日本製品を買うこと、「トリプルスリー」はプロ野球で打率3割、30本塁打、30盗塁以上の好成績を残したソフトバンクの柳田悠岐選手、ヤクルトの山田哲人選手の活躍を指すが、一体どれだけの人が聞いたり使ったりしただろうか?
「トリプルスリーは野球好きでないと知らないですよ。それって流行語なの?と思いました。我々の感覚とずれがあるのではないか」
上智大学新聞学科の碓井広義教授は不満をあらわにする。
トップ10には、「アベ政治を許さない」「一億総活躍社会」「SEALDs」と、政治に関わる言葉が三つ入った。ノミネート段階では50語のうち13語が政治に関わる言葉だが、それに対する「クレーム」があったという。
「ノミネートが発表されると一般の方から電話やメールがありました。これを入れないのはおかしい、というものから、政治関連が多すぎる、(選考委員の考え方に沿って)左寄りなのではないのかという意見までありました」(新語・流行語大賞事務局)
それを意識してか、選考委員のやくみつる氏は授賞式で「各委員にはそれぞれの政治スタンスはあるが、選考はそれに左右されることはない」と強調していた。
だが、政権に遠慮して、政治に関する言葉は大賞に選ばなかったのではないかとの疑念もくすぶる。
「今年は当然、『安保法案』や『イスラム国(IS)』が入っていておかしくない。むしろ、なぜ『安保法案』が入らないのか。安倍首相に配慮したのではないかとさえ勘ぐってしまう」(碓井教授)
選考委員長でジャーナリストの鳥越俊太郎氏は言う。
「大賞は言葉の存在感とインパクトで選ぶが、今回はバランス感覚も多分に働いた。政治には賛否両論があるが、どちらかを選んでどちらかを選ばないわけにはいかないでしょう」
物言えば唇寒し。
(週刊朝日 2015年12月18日号)
・・・「不満をあらわにする」って言われても(笑)。