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新春ドラマ放談 (1)

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オリコンが発行するエンタメ専門誌「コンフィデンス」。

その新年特別号に、「新春ドラマ放談」のタイトルで座談会が掲載されました。

この座談会で、産経新聞記者の三品貴志さん、ライターの吉田潮さんとご一緒しています。

放談ということで、かなり自由な発言、乱暴な話もしていますが(笑)、どうぞ、ご海容ください。


新春ドラマ放談
15年注目ドラマ振り返り&16年の期待の若手
ヒットドラマ・俳優ブレイクのカギを探る!
Part.1では情報番組やドラマプロデューサー、ドラマやアーティストに詳しい有識者へのアンケートをもとに16年期待の若手を紹介した。Part.2では、日頃からドラマをはじめテレビ関連の記事執筆で活躍する3名に登場していただき、15年の振り返り&16年の展望を語ってもらった。

(プロフィール)
碓井広義氏(上智大学文学部新聞学科教授)
慶應義塾大学法学部卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年、テレビマンユニオンに参加。20年にわたり番組制作を行う。慶應義塾大学助教授、東京工科大学教授を経て2010年より現職。専門はメディア論。著書に『テレビの教科書』ほか

三品貴志氏(産経新聞記者)
2005年に産経新聞に入社。静岡支社あんどを経て、2001年から文化部に配属。主にテレビ・ラジオ業界を取材・執筆

吉田潮氏(ライター)
編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて連載「TVふうーん録」を開始。おもな著書に『TV大人の視聴』(講談社)、『2人で愉しむ新・大人の悦楽』(ナガオカ文庫)、『気持ちいいこと。』(宝島社)、『幸せな離婚』(生活文化出版)など


境界線を揺さぶる作品群と
TBSの底力を感じた2015年

――15年のドラマを振り返ってみて全体で感じることはありますか。終盤にきてTBSの『下町ロケット』が大きな話題になったのが印象深くはありますが。

碓井氏 日曜劇場のタイトルを『流星ワゴン』『天皇の料理番』『ナポレオンの村』『下町ロケット』と4本並べてみた時に、1年を通じてドラマ制作力という面でTBSが非常に踏ん張ってくれていることは実感しますね。技術的なところも含めて、日本のドラマの質をキープしてくれている。いわばドラマ全体の底割れを防いでくれているのではないかと思うほど。世間ではドラマ離れ云々と言われてはいても、ちゃんと作れば、ちゃんと観てくれるじゃないの、というのを示した意義は大きい。

三品氏 平均視聴率で言えば、2ケタで御の字というのが、いよいよ普通になってきています。これは20時台くらいの浅い時間のドラマが減ってきている理由でもありますよね。深夜以外で新たな時間帯を開拓するなり、放映時間をもっと短くするなりといった対応も考えていくべき時期なのかもしれないと感じた1年でもありました。

吉田氏 数字が出ないのはある意味、もはや仕方がない状況ですよね。作品を評価する際に、視聴率という軸だけではライフスタイルの変化に対応できていないわけですから。録画視聴への評価をどうにか作品の評価に反映する手段を持つべきだとは思います。『下町ロケット』をはじめ、TBSがドラマの底を支えているというのも確かですが、一方で、テレビ東京が、実験的だったり、挑戦的な作品を投入することで、何らかの風穴をあけようと努力していることも注目しています。

碓井氏 『下町ロケット』では、キャスティングも画面も、隅から隅まできちんと作り込んでいる。かけるところにはお金も手間もかけています。本来、当たり前にやるべきことなんでしょうが、そこがきちんと成立していることが逆に今は新鮮であり、頼もしく感じてしまう。それと、1クールに2つのストーリーを圧縮していて、スピード感が凄かったじゃないですか。あれは『あまちゃん』以降、15分の長さでお話がどこまで展開できるのかを知ってしまった視聴者にとっては、とても心地良い凝縮感だったんだと思います。そういう意味では、1時間枠のドラマにこだわらず、時間帯も含めて新しいフォーマットを模索する試みも必要でしょう。

――なるほど。それでは、クールごとに印象に残った15年作品を振り返っていこうと思います。事前にお願いしたチェックリストでは、1月期では皆さん共通して『問題のあるレストラン』を挙げていらっしゃいます。これは、キャスティングの力も大きかったように思うのですが。

三品氏 真木さんはもちろん良かったのですが、特に二階堂ふみ、高畑充希、松岡茉優といった若手の女優さんたちの活躍が目立っていて、かつそれぞれの既成のイメージと少しズレているのが印象的でした。違った一面が観られた。男性社会の中で女性たちの抱える鬱屈を坂元裕二さんが非常にキメ細かく描いていて、さすがだと思いました。

吉田氏 安田顕さんの女装とかもなかなか完成度高かったですしね(笑)。実は菅田将暉さんも出ていたり。今振り返って思えば贅沢なキャスティングでした。個人的には大好きなドラマで、もう初回から泣きまくりでした。でも内容的には若い女性には重くて観ていられないという意見も意外に多かったようですね。実際に現実でそれに近い光景を観ていたら、改めてドラマで観なくても、という気分はわからなくもないのですが。

碓井氏 確かに、ある程度お客さんを絞っている印象はありました。でも、今どき老若男女にまんべんなく受け入れられるドラマを成立させるのは困難ですし、選択も重要ということだと思います。その意味でも突き抜けている感じはしましたね。女性が働いている現場に近いリアルさはしっかりありました。

――皆さん共通して挙げておられる作品がもう1つ、『山田孝之の東京都北区赤羽』です。

碓井氏 1つの挑戦として非常に面白かった。どこまでがフィクションで、どこからが実像なのかさっぱりわからない。でもそのわからなさも含めて、それでもドラマなんだな、という認識を提示していたんじゃないかなと思います。極端な話、情報番組でもグルメ番組でも、役者がいてカメラが回っていたらドラマなんだと。おそらくご本人も、演じている山田とリアルな自分をわざとズラしながらやっている。相当な高等戦術だと思います。これもまた、ちょっと不思議な山田さんだから成り立つ作品だと思います。

吉田氏 しかも、これを観ても赤羽に行きたいとも特にこちらに思わせないという(笑)。でも、全部見終わって、いったいこれ何だったんだろう、と心にモヤモヤを残すんですよね。改めて、テレ東の自由さ、冒険心も感じました。枠を越えようという意志のようなものを感じます。

三品氏 境界線が分からないという意味では、ある種、15年の特徴的な作品でもありますね。『LOVE理論』や『太鼓持ちの達人~正しい××のほめ方~』『廃墟の休日』など、バラエティなのかドキュメンタリーなのかドラマなのか枠が判然としない。これらも軒並みやはりテレ東さんなんですが(笑)。でもフジテレビの『She』などもフェイクドキュメンタリー風ですし。ある層の視聴者が純粋なフィクションに飽きてきているのかもしれない。

碓井氏 僕らはドキュメンタリーとドラマの境界が云々って気にしますけど、特に若い視聴者にとっては、そんなの関係ないことなんでしょうね。こんな変なのやってるよ、というSNS絡みのネタになるかどうかだったり、観たことのない面白いコンテンツかどうかが重要であって。枠組みにはこだわらない。


【3人が注目した作品/15年1月期】

碓井氏
『問題のあるレストラン』(CX系)
『山田孝之の東京都北区赤羽』(TX系)
『流星ワゴン』(TBS系)
三品氏
『デート 〜恋とはどんなものかしら〜』(CX系)
『問題のあるレストラン』(CX系)
『山田孝之の東京都北区赤羽』(TX系)
吉田氏
『怪奇恋愛作戦』(TX系)
『デート 〜恋とはどんなものかしら〜』』(CX系)
『山田孝之の東京都北区赤羽』(TX系)

・・・続く・・・

(オリコン「コンフィデンス」2016新年特別号)

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