「週刊新潮」の書評欄に書いたのは、以下の本です。
鈴木宗男 『ムネオの遺言~逆境から立ち上がる37の方策』
講談社ビーシー 1000円
波乱の半生を語る自伝だ。鈴木宗男という政治家は何を考え、いかに行動してきたのかが分かる。特に、秘書として支えてきた中川一郎の自死とその後の顛末が興味深い。平成29年4月、著者の公民権停止が解ける。本書は遺言どころか、堂々の闘争宣言である。
入江泰吉記念奈良市写真美術館:編 『回顧 入江泰吉の仕事』
光村推古書院 4104円
戦前の「文楽」に始まり、未発表のスナップ写真、代表作の奈良大和路、晩年の「万葉の花」まで、入江泰吉の世界が一望できる写真集だ。“耐えて待つ”を信念とした入江だからこそ撮ることのできた逸品が並ぶ。生誕110年にふさわしい机上の回顧展である。
村上春樹 『ラオスにいったい何があるというんですか?』
文藝春秋 1782円
「何があるのか?」と問われた作家は、「その何かを探すために」行こうとしていると答える。それが旅行というものではないかと。「ノルウエイの森」を書いたミコノス島。2年間生活したボストン。旅から持ち帰ったものは、いくつかの光景の記憶だけだ。
佐藤 優 『官僚階級論~霞が関といかに闘うか』
モナド新書 994円
なぜ官僚が存在するのか。官僚とは何なのか。本書は現政権を支える官僚階級を放置すれば、「戦争とそれによる国家的破滅は避けられない」という強い危機感から生まれた。マルクス、ハーバーマス、柄谷行人などを援用しながらの思想的・哲学的アプローチだ。
門田隆将
『日本、遥かなり~エルトゥールルの「奇跡」と邦人救出の「迷走」』
PHP 1836円
イラン・イラク戦争でのテヘラン空爆やイエメン内戦。現地の邦人が命の危機に直面した時、日本はどのようにして彼らを救ったのか。いや、救わなかったのかをリアルに描くノンフィクションだ。120年前の出来事と対比しながら、この国の現在のあり方を撃つ。
(週刊新潮 2016.01.14号)