日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。
今回は、終戦特番の中から選んだ、TBS「生きろ〜戦場に残した伝言〜」について書きました。
意欲作だった報道ドラマ
「生きろ〜戦場に残した伝言〜」TBS
終戦特番のシーズンに入った。そのうちの1本が4日に放送されたテレビ朝日の「二十四の瞳」だ。誰もが知っているタイトルだが、無難な名作のリメイクという“後ろ向き感”は否めない。他に企画はなかったのだろうか。
その点、TBSが7日に流した報道ドラマ「生きろ〜戦場に残した伝言〜」は意欲作だった。
主人公は島田叡(しまだあきら)。戦中最後の沖縄県知事として、住民の命を守ることに専念した実在の人物だ。
内務省の役人だった島田が沖縄に赴任したのは終戦の5ヶ月前。戦況の悪化に伴い、一般人の犠牲者は増える一方だった。島田はさまざまな規制を取り払い、また軍にも抗議しながら、1人でも多くの沖縄県民が生き延びる道を探っていく。
島田を演じたのは緒形直人だが、その生真面目な雰囲気は役柄にぴったりだ。島田に心酔した警察部長(的場浩司)と共に最後は行方不明となる。
そんな“伝説の知事”の人間像と行動を描くために、番組は島田と身近に接した関係者の証言や資料に基づくドラマとドキュメンタリーで構成されていた。沖縄の人々が本土防衛の「捨石」とされる過程を伝える上でも、この手法は有効だった。
「軍隊は住民を守らない。住民たちが沖縄戦で得た教訓だ」というナレーションを聞きながら、島田は現在のこの国をどう見るだろうと思った。
(日刊ゲンダイ 2013.08.13)