週刊朝日で、ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」と、「逃げるは恥だが役つ」について解説しました。
秋のドラマ 実況中継(2)
女王の栄冠は米倉涼子の頭上に輝くのか──。秋のテレビドラマ視聴率争いでトップを独走中なのが、第4シリーズを迎えた米倉涼子主演の「ドクターX~外科医・大門未知子~」(テレビ朝日系)だ。
「シリーズを重ねながら質を落とさないための、作り手の努力が伝わります」
と、この結果にうなずくのは上智大学文学部の碓井広義教授(メディア論)だ。例えば、キャスティング。今シリーズから、“渡鬼”の泉ピン子が、中華料理店の白衣から病院の白衣に着替えて参戦した。
「アンチも多いピン子さんを引っ張ってきたのは、中途半端に若い視聴者を増やすのではなく、大人を狙った証拠です」(碓井教授)
狙いはぴたり。安定した“米倉座長”のもと、泉ピン子や西田敏行のようなアクの強い役柄が生き、中高年層を楽しませている。
だが、ここにきて「ドクターX」を猛追するのが、TBS系“逃げ恥”こと「逃げるは恥だが役に立つ」だ。星野源と新垣結衣が“雇い主と従業員”という形で契約結婚。2人ともちょっと変わったインテリだが、その設定が魅力だという。
「新垣さんと星野さんが真面目にやればやるほどにおかしい。ベースはマイルドなコメディーだが“新商品”的ドラマです」(同)
テレビウォッチャーの吉田潮さんも、同様に新鮮味を感じている。
「男女2人の思考回路が丁寧に表現され、合理性を求める2人の性格に説得力があります。ガッキーの小ざかしい役もさることながら星野の童貞役がいい。ジャニーズの誰かがやったらふざけんなってなるけど」
吉田さんは、共演の石田ゆり子にも注目する。
「今まではしっとり色っぽい役が多かったけど、年齢的にもつらくなってきた。そんななかで“天然ボケのまま五十路を迎えたキャラ”がハマりましたね」
さて、今秋ドラマで、異彩を放つのが、TBS日曜劇場「IQ246~華麗なる事件簿~」だ。主演は久しぶりの連ドラの織田裕二。1話完結の推理もので、貴族の末裔にしてIQ246という異能の探偵役の織田が事件を解決する。ただ、織田の話し方がヘンなのだ。「古畑任三郎ソックリ」「刑事コロンボのまねだ」「相棒?」など、視聴者がザワついている。
制作側の意図を、番組プロデューサーの植田博樹さんに聞いてみた。すると意外な事実が明らかに。
「このキャラは、基本的には織田さんが考えたもの」
織田といえば役作りに徹底的にこだわることで有名だ。植田さんによると、ポスター撮りの段階で“格好いい”か“斜に構える”か、とさんざん悩んだ末に、本読みのときに現在のキャラが生まれたという。
「織田さんの演技がネットで突っ込まれていますが、図らずもドラマの形式が影響したかもしれません。ミステリーの倒叙法(最初に犯人が明かされて物語が展開)のため、IQ246と古畑任三郎と刑事コロンボには共通点があるので」
決して「パロディーではない」と植田さんは強調したものの、織田自身がこう漏らしたそうだ。
「どれにも似せないようにしようとしたら、結局全部似ちゃった……」
今後、倒叙法ではない回もあるようなので、さらなる織田のキャラ進化もありえるかも。
(週刊朝日 2016年11月18日号)