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週刊現代で、フジテレビ「月9」についてコメント

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フジテレビ上層部
今クールも大コケ! 月9を「やめる」「やめない」大モメ会議

『家政婦のミタ』や『半沢直樹』『逃げ恥』『ドクターX』など、テレビ離れが叫ばれる昨今でも、大ヒット作は現れる。ただしフジテレビ以外から。

かつてあれだけ若者を魅了した月9はどうなるのか?

■竹野内豊に逃げられた!

もう誰も驚かない。フジテレビの看板ドラマ枠「月9」が今クールも大ピンチに陥っている。

西内まりや主演の『突然ですが、明日結婚します』は、第1回(1月23日)の視聴率が8.5%と無残な結果に終わった。これは初回視聴率としては月9歴代ワーストだ。

「局内では『もっと低いと思っていたよ』と公然と言う社員もいました。そもそも今回は竹野内豊が主演し、脚本家・山田太一の長女でフジのドラマ班のエース、宮本理江子が演出する予定でした。宮本はこれまで中井貴一主演の『風のガーデン』や小泉今日子主演の『最後から二番目の恋』を手がけていました。現場はこれまでにない見応えのある作品を作ろうとしていたんですよ。ところが、企画内容が竹野内の所属事務所と折り合わず、白紙になってしまった。まったく違う企画で急遽代わりの主演を探し、たまたまスケジュールが空いていた西内を起用することになったんです」(フジテレビ関係者)

かつて誰もが主演したいと願った月9の権威は消えてしまった。放送前の会見で、西内は「実は海外留学の予定でした」と明かし、相手役のミュージシャン・山村隆太もオファーは「11月末の突然の話」と告白。共演する沢村一樹には年末に打診があったという。

「主要キャストに舞台ウラのドタバタをバラされてしまったわけです。第1回も放送の2日前まで撮影しており、スケジュールもギリギリ。このままでは途中で打ち切りになるのではないでしょうか」(スポーツ紙担当記者)

ストーリーもいまの時代に求められているものとは言い難い。西内が演じるのは大手銀行勤務のキャリアウーマン。結婚願望の強い彼女が、独身主義のイケメンアナウンサーと恋に落ちる。

元テレビプロデューサーで上智大学教授の碓井広義氏が言う。

「視聴者はちゃんと見るべきドラマを見極めています。美男美女が紆余曲折を経て最後は幸せになるという流れが見なくても分かる。見る動機がないんです。視聴者と感覚がズレてしまっている。この作品はテレビマンとして本当に作りたいドラマなんでしょうか」

月9は昨年放送の4作品が、いずれも平均視聴率ヒトケタに終わっている。

福山雅治主演の『ラヴソング』が8.5%、ジャニーズの山田涼介主演の『カインとアベル』が8.2%で、歴代ワーストの数字を次々と更新したが、今クールはさらに低調に終わる可能性が出てきた。

『月9 101のラブストーリー』の著者で評論家の中川右介氏が語る。

「俳優を決めてから脚本を作っていくスタイルで、月9がピークを迎えたのは'97年頃です。昨年は、月9の凋落を決定づけたような年でしたね。恋愛モノが時代の雰囲気に合わなくなったという声もありますが、TBSの『逃げ恥』がヒットしたことを考えるとそうでもない。フジは試行錯誤するものの、放送前に『今回もダメだ』という声が広まり、視聴者側もどこか色眼鏡で見てしまうんです」

フジが月曜9時から連ドラを撤退する日がついに現実味を帯びてきた。

■若い女性が見てくれない

昨年10月の定例会見でフジの亀山千広社長は、月9の終了について、「微塵も考えていない」と断言したが、別のフジ関係者は次のように語る。

「エースだった加藤綾子アナの退社がスポーツ紙に報じられた際、亀山社長は『絶対ない』と否定したものの、結局、加藤は独立しました。亀山社長がどんなに月9撤退を否定しても、むしろ信じられるものではありませんよ。実際には、月9の主演をやりたがる大物俳優がどんどんいなくなっているのが現状なんです」

フジテレビ局内でも、編成担当者は「月9」が役割を終えたことは十分に理解しているという。

「月9のターゲットはF1層と呼ばれる20~34歳の女性です。まず、今のこの世代は連ドラを見る習慣がありませんし、恋愛をドラマで学ぶ世代でもない。しかも実は25年前に比べて、この年代の人口は約25%も減少しています。単純計算で視聴率を10%取っていたものが、7.5%しか取れない。月9の視聴率が下がるのは宿命づけられていると言えます」(番組制作会社プロデューサー)

視聴者が不在。ならば月9は路線を変更して、若い女性ではなく、年配の男性に向けて、『半沢直樹』のような人間ドラマがメインの重厚な作品を作ればいいのではないかと思いがちだが、そう簡単でもないという。

「『半沢直樹』がヒットしたのは、日曜夜だからです。月曜9時はサラリーマンが帰宅して、ゆっくりテレビを観られる時間帯ではありません。在宅していても、年配の男性層はNHKの『ニュースウオッチ9』を見る習慣がある。だから、月9はそれと重ならない若い層を狙ってきたんです。すでにTBSがサスペンス系の2時間ドラマを放送しており、月9を年配の男性向けにシフトしても失敗は目に見えています」(前出・プロデューサー)

■そこそこ儲かるから……

どうすればヒットが生まれるのか、フジの制作の現場は会議で頭を悩ませているという。

「このままでは視聴率がとれないことは分かっていますが、'90年代に上層部がお世話になったしがらみがあって、主演級のキャストは大手芸能事務所の若手を起用しなければならない。そうすると必然的に恋愛モノになる。人間ドラマは演技力が必要ですから……」(フジテレビドラマ制作関係者)

制作の現場は上司からこの2つだけを厳命されているという。

「大物を起用しろ」
「原作モノをとってこい」

前出の関係者が続ける。

「このどちらかでなければ、企画が通りませんから、粛々と従うだけです。制作費も減らされて、2年ほど前から月9でさえ、ロケバスの使用やエキストラの人数を節約しています。もはや中身を変えたくても、変えられません。ドラマの制作担当者が一堂に集まる会議は恒常的にはありませんので、月9の今後をどうするかを話し合うことはありませんが、危機感は共有していると思います。ただそれを上に吸い上げてもらう機会がないんですよ」

別のフジの中堅社員はこう明かす。

「編成担当者の会議では、月9を中心としたドラマ枠を今後どうするか話し合っています。『月9は看板だから続けるべきだ』という考えの社員もいますし、低迷が続くだけだから、月9のドラマは終わらせたほうがいいという意見も当然あります。ただ、その後に何をやるのか。数字を獲れるようなバラエティの企画なんてありません。しかも月9はこれだけ低迷しても広告の単価が他のドラマより高いんです。月9ドラマを終わらせてもこれまでと同じようにスポンサーから広告を取れるかどうかわからない」

月9を終わらせたくても、現状から変えられないのが、実情のようだ。

「ドラマの現場責任者である制作局長とその直属の部下2人が月9低迷の対策を話し合っているようですが、結局のところ月9をゼロから見直すという案を役員レベルに提案することができていない。それが一番の問題だと思います」(フジ関係者)

月9の絶頂期を知る日枝久会長、亀山千広社長の元では、なかなか抜本的な改革はできないという事情もある。

「亀山社長はプロデューサーとして'90年代に『あすなろ白書』や『ロングバケーション』『ビーチボーイズ』などを手がけて大ヒットさせた。月9に対する思い入れがとにかく強い。なんとしても現状のまま立て直すということしか考えていない。

昨年から幹部の間では『月9不要論』は何度も浮上しています。しかし、いまの日枝体制では目立つ失敗をすれば、すぐに左遷させられる。月9がジリ貧なのは分かっていても、広告収入はそこそこ入る『儲かる枠』なので、大きなリスクを冒してまで月9を改革しようという部長、局長はいないんですよ」(フジ関係者)

■またジャニーズかよ!

八方塞がりのなか、月9は春から「ジャニーズ攻勢」に出る。

「4月クールの主演は、NHK紅白歌合戦の司会も務めた『嵐』の相葉雅紀で、人気ミステリー小説『貴族探偵』を映像化する予定です。共演者に大物女優をキャスティングすることに躍起になっていましたが、なんとか仲間由紀恵が内定しそうだと聞いています。

さらに7月クールには、これもジャニーズのアイドル、山下智久主演で医療ドラマ『コード・ブルードクターヘリ緊急救命』のパート3が内定しています」(前出・フジ関係者)

そして10月クールには、満を持して、木村拓哉が主演するという。

「キムタクは'96年の『ロングバケーション』から始まって、月9には計10作品に主演しています。『ラブジェネレーション』('97年)で30.8%、『HERO』('01年)で34.3%という怪物的な平均視聴率を叩きだした木村に『夢をもう一度』と託すわけです。これがコケたら、さすがに亀山社長も月9を終わらせる決断をするしかないでしょうね」(前出・関係者)

キャスティング頼みと視聴者に揶揄されているなかで、ジャニーズのタレントを3連投。さらに月9のイメージを支えてきたキムタクで最後の大勝負に出るというわけだ。

だが、「またジャニーズか」という感は否めず、厳しい戦いになるのは目に見えている。

「枠そのものが復興するには、キムタクだけでは足りない。月9という枠としての衰退はもはや止められない。月9ブランドを一度壊すという選択をしたほうがいいでしょうね」(前出・碓井氏)

フジの制作現場でも、いまのキムタクが20%を獲るのは難しいということは分かっている。

別のフジの社員がタメ息まじりで明かす。

「現場には厭世観が漂っていますよ。『テレ朝の「ドクターX」なんて、まるで「水戸黄門」のような古臭いドラマだよ』なんて軽口を言う幹部もいますが、自分たちは数字をまったく取れていない。月9の制作費には直接影響しませんが、昨年、トヨタが月9のスポンサーから降りたことも大きい。このままでは営業サイドも黙っていない。東芝の経営危機で、『サザエさん』だってどうなるか分からない時代ですから。

基本的にテレビ局の営業は半年かけて広告を売っていきます。10月にキムタクドラマが始まるときには、すでに次のドラマの営業活動は始まっています。だから月9のドラマ枠がなくなるとしたら、来年春からでしょうね。どうせ低視聴率なら、もっと実験的な番組を始めたほうがいい。それにしても『笑っていいとも!』『SMAP×SMAP』に続いて、月9まで終わったら、フジには何が残るんでしょうか……」

フジテレビが再び面白いドラマを作り出してくれるのを待っている視聴者もいる。

(週刊現代 2016年2月11日号)

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