日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。
今週は、先週から始まったNHKの土曜ドラマ「夫婦善哉」について書きました。
NHK「夫婦善哉」
森山&尾野の好演が光った!
面白い題材を見つけてきたものだ。NHK土曜ドラマ「夫婦善哉」である。原作は、今年生誕百年を迎えた織田作之助が昭和15年に発表した小説だ。貧しい生まれながら売れっ子芸者となった蝶子(尾野真千子)が、化粧品問屋の長男坊・柳吉(森山未來)と出会い、惚れてしまう。さあ、そこから波乱万丈の“女の人生”が展開していくという物語だ。
このドラマを見ていて、まず感じるのは大阪弁のもつ味わいだ。駆け落ちに失敗して、蝶子の稼ぎに頼っている柳吉。それなのに蝶子の貯金を新地で使い果たしてしまう。怒る蝶子に向かって「お前のほうがええ女や」と言い放ち、「堪忍してやあ」と逃げ回る柳吉が、なんとも憎めない、人間臭い男に見えてくるのは大阪弁の功徳だろう。
また、典型的な「ぼんぼん」で、困った男の代表選手のような柳吉を、「一人前の男に出世させたい」と頑張る蝶子。もちろん、このダメ男(森山、好演)は簡単に思い通りにならないが、それでも惚れ続ける健気さに泣ける。このあたり、尾野真千子の面目躍如だ。
このドラマには大阪の「うまいもん」がいくつも登場する。かつて豊田四郎監督作品で森繁久彌演じる柳吉が作っていた「山椒昆布」も出てきた。いわく言い難い男と女の関係と、大阪ならではの涙と笑いに、この名シーンは欠かせない。
(日刊ゲンダイ 2013.08.27)
・・・・このドラマ、色調もいい。
何より、映像に艶(つや)がある。
それが見事に内容と合っている。
いや、物語の内容に合わせた映像設計です(笑)。
放送は全4回で、今週末が2回目。
原作もオススメです。
織田作之助 「夫婦善哉 正続 他十二篇」 岩波文庫