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Channel: 碓井広義ブログ
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NEWS ポストセブンで、「告白バラエティー番組」について解説

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曙VS相原勇など告白番組が増加 
芸人のトーク番組失速も影響
 芸能人の知られざる過去が次々に明らかにされる告白バラエティー番組。3月下旬に放送された『今夜解禁!ザ・因縁』(TBS系)では、曙と相原優が破局騒動以来、20年ぶりに対面したことが注目を集めた。レギュラー番組では、『爆報!THEフライデー』、『結婚したら人生劇変!◯◯の妻たち』(ともにTBS系)、『解決!ナイナイアンサー』(日本テレビ系)、『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(テレビ朝日系)など、このジャンルの番組はどこの局でも人気が高い。もともと特別企画として始まった『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)の「本音でハシゴ酒」も、一コーナーではなく番組そのものとなっている。

いったいなぜ、これほどまで告白バラエティーが増えているのか。元テレビプロデューサーで上智大学教授(メディア文化論)の碓井広義さんに訊いた。

 * * * * * *

 芸能人やスポーツ選手、経営者などの有名人は、一般人よりも幸せに暮らしていると思われがちです。しかし現実にはそうではない部分もあり、人それぞれ苦労を重ねています。華やかな舞台に立つ有名人は、普段そういったことを秘密にしていますが、告白バラエティー番組はそれを明らかにすることにより、視聴者の「そうだったのか」「もっと知りたい」といった好奇心を刺激しています。

 昔から「他人の不幸は蜜の味」というように、自分よりも幸せそうな人の幸せでない部分を知る痛快さもあるでしょう。順風満帆で幸せな人生を送っている人から幸せな出来事だけを告白されても見ているほうは「ふーん」で終わってしまいます。かといって、まだいい思いをしていない無名の芸能人の苦労話を聞かされても全くおもしろくない。やはり人間の浮き沈みあるストーリーが求められていて、幸せと不幸せの落差が大きい人の話ほど視聴者のウケもよくなります。

 また告白バラエティー番組には、有名人に対する羨望や嫉妬、ひがみのような感情を解消してくれる側面もあります。今の自分の現状に不満を抱えている人が有名人の苦労話や失敗談を聞いて、「この人もうまくいかないことがあるんだな」と留飲を下げることもあれば、優越感や親近感を得ることもあるでしょう。逆に何の不満もなく充実した毎日を送っている人からすれば、この手の番組はほとんど刺激がないと思います。

◆芸人のトーク番組に取って代わったのが告白バラエティー

 近年、このような番組が増えてきたことは、少し前まで隆盛を誇っていた芸人同士のトーク番組の勢いが失速していることと無関係ではないかもしれません。ひな壇芸人を集めての身内話に、視聴者もさすがに飽きてきた。今も人気番組は残っていますが、本当かどうかもよく分からない芸人同士の会話よりも、もっとリアリティーを求めるようになったのでしょう。告白バラエティーは、出演者がカメラの前ですべてを語っていないにしても、ある程度はさらけ出してくれているので、フィクションよりはノンフィクションに近いエンターテイメントといえます。

 制作サイドの事情でいえば、制作費がかからないという利点もあります。当事者をゲストとして呼ぶだけなので、大掛かりなセットも要らない。発言内容の責任についてもその人に負わせることができます。「最近テレビに出ていないけど有名なことは有名」というレベルの有名人をゲストに呼ぶことで、画面に映るスタジオ全体の風景を少しぜいたくにも見せられます。

◆ワイドショーに代わって一次情報が出せる

 かつてワイドショーが盛んだった頃は、テレビ局は自分たちで取材をして一次情報を発信していました。ところが制作費が削られていく中で、独自取材をするのも難しくなってきた。今では週刊誌や新聞などが報じた内容を焼き直して二次情報を伝える番組ばかりになってしまいましたが、これは話題になっていることをただ広めているに過ぎません。

 そんな中でも、初告白であることが前提の告白バラエティーなら、テレビ局が一次情報を発信することができます。テレビで有名人が告白をすると、それがすぐにネットメディアの記事になって番組の宣伝にもなる。今はテレビの作り手も「ネットで話題になってナンボ」というところがあるので、告白バラエティー以外のジャンルの番組でも有名人の告白シーンが増えてきました。

 告白バラエティー番組というのは昔からあるジャンルで、とりわけ「あの人は今?」のような企画は、テレビだけでなく雑誌等でも王道の企画として定着しています。これは世間でも多くの人が有名人に憧れを持っていることの裏返しでもあります。さすがに今は番組数も増えすぎているかもしれませんが、有名人への憧れがある限り、告白バラエティーは今後も形を変えながら続いていくと思います。

(NEWS ポストセブン 2017.04.08)

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