孫崎 享:著『戦後史の正体 1945-2012』(創元社)の主旨は極めて明快です。戦後の日本は、常に存在(君臨?)する米国からの圧力に対して、「自主」路線と「対米追随」路線の間で揺れ動いてきた、というのです。
しかも著者は、外務省国際情報局長や駐イラン大使を歴任した、日本外交の内幕を知る人物。政治家や官僚がすべて実名で登場する刺激的な一冊となっています。
記述は編年体であり、敗戦・占領の時代から始まっています。敗戦後、吉田茂の「対米追随」路線と、重光葵の「自主」路線が激しく対立していました。重光は当然のごとく追放されます。また自主路線派だった芦田均も、わずか7カ月で首相の座を追われました。
そして冷戦の開始、朝鮮戦争の勃発により、アメリカの対日政策が変化します。アメリカは、日本に経済力をつけさせ、その軍事力も利用することを狙ったのです。
やがて安保条約が結ばれましたが、それはひたすら米国側に都合のいい内容でした。講和条約は安保条約成立のためであり、その安保条約は米軍を日本に駐留させる行政協定を結ぶために必要だったのです。
「日本の最大の悲劇は、占領期の首相(吉田茂)が独立後も居座り、占領期と同じ姿勢で米国に接したことにある」と著者は言います。読み進めるうち、その後の日本が、いかに敷かれたレールを走ってきたかが、はっきりとわかってきます。