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朝日新聞で、「コメンテーターの降板」について解説

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【メディアタイムズ】
情報番組 発言の修正要求?
降板のコメンテーター「告発」
意見の幅 狭まる懸念
番組の責任者から発言内容の修正を求められていた――。日本テレビ系の情報番組を降板するコメンテーターのこんなツイートが話題になっている。真相がはっきりしないままメディア不信が広がり、言論空間が細ってしまう、と危惧の声も出ている。

このツイートをしたのは評論家の宇野常寛氏(38)。自らのツイッターで8月31日、出演する朝の情報番組「スッキリ!!」を9月で降板すると公表。政治的発言が理由でトラブルになったことを明らかにし、投稿へのリツイートは2万件を超えた。

宇野氏はツイッターで、日中戦争中の南京事件に否定的な本を置いていたアパホテルについて、1月19日の放送で「歴史修正主義だ」と批判したことを紹介。その結果、「(日本テレビに右翼の)街宣車が押し寄せ」たため、番組側が問題視したのではないかと主張した。ユーチューブにも自ら説明する映像を投稿し、「僕は事実上のクビだと解釈しています」などと約30分語った。

宇野氏は朝日新聞の取材に対し、3月2日の森友学園問題についての打ち合わせで、「(番組内で)安倍政権のナショナリスティックな言動を批判する」と予告したところ、当時のプロデューサーから発言内容を修正するよう求められたとも主張している。

プロデューサーは理由として、「政治的公平」を定めた放送法を挙げたという。宇野氏は、修正の要求について「別のスタッフから、1月の『歴史修正主義発言』が番組上層部の怒りを買ったことが原因、と聞いた」と語った。それ以降も、コメントをめぐって「何度か摩擦があった」という。

日本テレビは朝日新聞の取材に対し、「番組の制作過程に関する詳細についてはお答えしていない。10月期の番組リニューアルに伴う通常のコメンテーターの交代。交代される方は他にも複数いらっしゃる」としている。(湊彬子、滝沢文那、高久潤)

■メディア不信広がる可能性

こうした出演者の発言をめぐる舞台裏は、以前なら視聴者の目に触れにくかった。碓井広義・上智大教授(メディア文化論)は、ツイッターなどの発信手段が多様化したことで、「番組の制作過程が見えやすくなっている」と指摘する。その一方で、「コメンテーターの発言が局の都合に合わないと『切る』んだな、という思いを視聴者は抱くだろう。メディア不信が広がるのは間違いない」とも語る。

情報番組での意見の幅が狭まることを懸念する声もある。

元共同通信記者で、民放各局に出演する青木理さんは「発言内容に不当な縛りをかけられたことはほとんどない」としつつ、「面倒を避けるために物言うコメンテーターを避ける傾向が強まるかもしれない。当たり障りのないコメンテーターが増えれば、言論空間は閉じていくだけなのではないか」と指摘する。

コメンテーターの起用・降板、発言内容も含めてテレビ局には放送責任があるだけに「組織の論理があるのは現実」(青木氏)だ。事実、テレビ局側は近年ますます、コメンテーターの発言に神経をとがらせているといい、ある民放キー局のディレクターは「論争を生むコメンテーターは番組にとってリスクでしかない。発言内容に口を出すことはないが、人選には気をつかう」と打ち明ける。

碓井教授は情報番組の現状を「単なるまとめサイト化を招いている」と指摘。「以前は情報番組も、もっと独自に取材していたが、いまはネットや週刊誌の話題に飛びついて、井戸端会議をするような傾向が強まっているように思う。それだけに、番組の中での言論や議論の幅が狭まれば、視聴者の利益にもならない。テレビ離れがますます加速するのではないか」とみる。(田玉恵美)

■「ミヤネ屋」でもトラブル

日本テレビ系の午後の情報番組「ミヤネ屋」(読売テレビ制作)でも今夏、コメンテーターの発言をめぐって騒動があった。

7月25日放送の番組で、元宮城県知事の浅野史郎氏の発言をめぐり、番組のスポンサー(関西エリア)で美容外科を経営する高須克弥氏が反発。ツイッターで「とりあえずミヤネ屋の提供降りるか。詫(わ)びを急いだほうがいいと思うけど・・・」「浅野史郎先生とミヤネ屋さん、今日で全てが決まります」「スポンサー降りて身軽になり、名誉毀損(きそん)と業務妨害で提訴して総攻撃します」などと投稿した。

すると、翌26日の放送で、番組は「浅野さんが裁判の内容を誤解していた。高須院長、視聴者の皆様に誤解を与える放送を行ったことに対しおわび申し上げます」などと述べた。司会の宮根誠司氏は「高須院長、これからも仲良くしていただけますでしょうか」とカメラに呼びかけた。

「おわび」はスポンサーへの配慮だったのか。読売テレビは朝日新聞の取材に「スポンサーであるかどうかは関係ありません。提訴の意向のあるなしも謝罪とは関係ありません」と答えた。「浅野氏は、番組の中で高須クリニックが問題を抱えている美容外科であるかのようにも受け取られる発言をされたが、ご本人にはその意図がなかった」としている。浅野氏は取材に応じなかった。

(朝日新聞 2017年9月9日)

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