「週刊新潮」に、以下の書評を寄稿しました。
鎌田 慧 『声なき人々の戦後史』上・下
藤原書店 各3024円
『自動車絶望工場』などのルポルタージュで知られる著者が、半世紀以上にわたる活動の軌跡を振り返った。取材対象である現場に潜り込み、実際に体験するという「手法」の内幕が明かされる。一貫しているのは権力や支配に対する反骨精神と市民への共感だ。
飯島敏宏+千束北男
『バルタン星人を知っていますか?
~テレビの青春、駆けだし日記』
小学館 2160円
バルタン星人は、『ウルトラマン』シリーズに登場した怪獣・宇宙人の中で、今もダントツの人気を誇る。その生みの親が飯島監督であり、千束北男はシナリオを書く際のペンネームだ。半世紀前、特撮テレビ映画の金字塔はいかにして制作されたのかが明かされる。
孫崎 享
『日米開戦へのスパイ~東條英機とゾルゲ事件』
祥伝社 1836円
ゾルゲ事件とは何だったのか。著者は綿密な検証によって既成概念を打ち壊していく。見えてくるのは、近衛内閣を倒して日米開戦へと駒を進めようとする東條英機の影だ。また戦後の冷戦下でも行われた事件の政治的利用は、現代社会にまで影響を及ぼしている。
小野民樹 『増補版 60年代が僕たちをつくった』
幻戯書房 2700円
著者は1947年生まれ。岩波書店で『同時代ライブラリー』『岩波現代文庫』などを創刊した編集者だ。本書を読むと、70年前後に大学を出た全共闘世代が何を思い、何をしながら60年代を過ごしたのかを垣間見ることができる。共感も反感も覚悟の上の増補版だ。
(週刊新潮 2017年9月14日号)