「コメンテーターは1人で十分」
「ネット世論におずおず」
…グッときた著名人の苦言・至言
~今年のTV界総まくり
今年もいろいろあったTV界。相次ぐ不倫に若手芸能人の引退、小林麻央さんのがん死…。年末恒例のTV界総まくりは今回、ちょっと趣を変えて、私が直接取材、あるいは見聞きした中で、グッときたセリフや苦言、至言を紹介する形で振り返ります。(豊田昌継)
〈一つの番組にコメンテーターってあんなにいります? 彼らが専門外のことを無難に発言することに視聴者は飽きています。大上段に斬ることができる人が1~2人いれば十分ではないでしょうか〉
フリーアナウンサーの羽川英樹さんに取材したのは1月でした。現在64歳。最近はラジオ出演がメインとなりましたが、「11PM」や「2時のワイドショー」で培った切れ味は健在でした。僕もこの意見に大賛成です。
〈全国ネットになると縛りや規制もある。大きなグローブをはめて戦っているようなもの。こちらは素手でガチンコ。それが関西人の気性に合っているし、クレームがあるかもしれませんが数字は伸びます〉
久しぶりにメッセンジャー黒田有さんを単独で取材したのは4月のことでした。番組では“いじられ役”が多いですが、彼の目線に注目してください。常に冷静です。
〈『1億総文句言い』の現代では、どちらに判断を下しても矢が飛んでくる。きれいに裁けない。となると、影響力のある『ネット世論』を横目に、あいまいなまま、おずおずと模様眺めするしかない〉
6月、MBSテレビ「ちちんぷいぷい」の“ニュースのおっちゃん”の不倫報道をめぐり、碓井広義・上智大教授に、処分をためらう局の対応について聞きました。おっちゃんは10月改編でこっそりと番組を退きました。
〈僕のボケは、絵で言うと『お前、何を描いてるねん?』というボケなんですが、こいつ(小杉)が瞬時にパパッと色を塗ってくれる。『吉田が言いたかったのはこういうことか』と説明してくれるんです〉
9月、お笑いコンビ「ブラックマヨネーズ」の結成20年記念番組の制作会見がカンテレでありました。その際の吉田敬さんの発言です。同局では「村上マヨネーズのツッコませて頂きます!」「ウラマヨ!」のMCでコンビ仲の良さが際立つ2人。吉田さんと小杉竜一さんの笑いにおける関係性がわかるコメントでした。
〈政治的なコメントを求められたときは、仕事としてとか好感度を求めるとかではなく、50年後や100年後の日本がよくなるように、というのを心がけて、何の計算もなく発言させてもらっています〉
TBS系ドラマ「陸王」でも好演した吉本新喜劇座長の小籔千豊さん。最近はお笑いだけでなく、討論番組でも力量を発揮しています。彼の“真っ向発言”は時としてネットで炎上することもあるようですが、無難な番組に比べてよっぽどマシです。
〈名古屋の人はマイクを向けると基本は逃げはるそうです。でも、僕が行くと来てくれるんです。スタッフも不思議がっています。いっぺん、地元のおばちゃんには『関西人なのにガツガツしてないのがええ』と言われました〉
ほのぼのしたロケでおなじみお笑いコンビ「矢野・兵動」の兵動大樹さん。関西だけでなく、名古屋でも同様の番組をこなしています。この発言、裏を返せば“ガツガツ”は関西しか通用しないということでしょうか。
〈自分が思い描ける範囲なんて知れています。出演者や周囲からわけの分からん球が飛んできたりする。それを受け入れる方がオモロイものが作れると気づいたんです〉
読売テレビ「ダウンタウンDX」を人気番組に育て上げ、現在は「Nj」のアーティスト名でライブやラジオ番組でマルチに活躍する同局の西田二郎プロデューサー。すべてを受け入れる柔軟性こそが番組作り…いや、どの世界にも通用するコツかもしれませんね。今年最も感動した言葉でした。では皆様、よいお年を…。
(産経WEST【甘辛テレビ】 2017.12.27)