週刊新潮に、以下の書評を寄稿しました。
門井慶喜 『にっぽんの履歴書』
文藝春秋 1566円
『銀河鉄道の父』で第158回直木賞を受賞した著者のエッセイ集。誰も触れてこなかった「宮沢賢治の父」に注目したように、独自の視点で歴史や社会を語っていく。元号と政権。大正11年の女子野球部。島ではない竹島。過去に遡って現代を眺める楽しさを知る。
小林紀晴 『見知らぬ記憶』
平凡社 1944円
写真家は写真で表現する。当たり前のことだ。しかし現場に立つ写真家の内側に蓄積された言葉もまた貴重な表現となる。たとえば、タイのアユタヤでカメラを向けながら体験した空白の瞬間と滑り込む過去の記憶。写真と散文の絶妙な融合が生み出す快感がここにある。
垣谷美雨 『定年オヤジ改造計画』
祥伝社 1620円
大手企業を定年退職した庄司常雄。しかし悠々自適の日々は大いなる勘違いだった。妻は庄司と一緒にいると閉所恐怖症に陥るほどの夫源病。息子一家の孫の面倒をみるのに四苦八苦し、娘にはアンタと呼ばれて馬鹿者扱い。さあ、定年オヤジの明日はどっちだ!
芦屋小雁 『笑劇(しょうげき)の人生』
新潮新書 778円
芸能生活70年目を迎えた著者。「番頭はんと丁稚どん」「てなもんや三度笠」など人気番組の裏側はもちろん、ケタ外れの映画愛と収集癖、驚きの金銭感覚、さらに3度の結婚までが語られる。NHK朝ドラ「わろてんか」だけでは分からない上方芸能が見えてくる。
(週刊新潮 2018年3月15日花見月増大号)