たけし、りえ、小泉…
大物の「転機」で芸能界も変化か
「背負ってきたものをいったんおろしたい」
所属事務所にこう申し出たのは、タレントで映画監督のビートたけし(71)。所属事務所のオフィス北野を3月末で退社し、2015年に設立した新会社を4月からの拠点とするという。
今年2月に独立を発表したのは、女優の小泉今日子(52)。俳優・豊原功補(52)との不倫関係も公表し、「一個人として全てをこの身で受け止める覚悟」と決意をにじませた。
3月16日には、女優の宮沢りえ(44)が再婚を電撃発表。相手はV6の森田剛(39)で、一部報道によれば、長女(8)と3人で共同生活をスタートさせているという。
芸能界では、人気アイドルの結婚は敬遠され、事務所からの独立・移籍はタブー視されてきた。タレントの実力以上に、事務所の力がものをいう風潮が根強いからだ。コラムニストの今井舞さんは言う。
「テレビを筆頭に、事務所ありきの起用は当たり前。いわば、既得権益がものをいうやり方がまかり通っている業界でもあります」
にもかかわらず、大物芸能人が続々と、その風潮に反するような決断を下したのはなぜか。
「今の世の中の流れから“所属タレントの結婚を認める”ことは事務所にとってプラスになります。昨年12月のV6の岡田准一と宮﨑あおいの結婚もしかり。世間を意識した事務所の意図も感じます」(今井さん)
近年、テレビ離れが進み、これまでのやり方では立ち行かなくなりつつある。上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)は言う。
「だから、自分をしっかり持った芸能人ほど、危機感を持つのは自然な流れ。仕事も人生も自らの判断で動くべき時代だと気づいている。それは今回、話題になった3人ともに共通していることでは」
一方、以前に比べ、事務所の存在意義が薄れているという指摘も。例えばファンとのコミュニケーション。ネットやSNSが発達した今、事務所の介入なしも可能になった。
「“育成”に重きを置く一方、売れてからのマネジメントが弱いというのも日本の芸能事務所の特徴」
芸能評論家の三杉武さんは、こう指摘する。「売れたもん勝ち」の傾向が強く、発掘・育成には注力する一方、仕事の幅を広げ、新しい道を模索するなどのブレーク後のマネジメントがおろそかになりがちだった。
「つまり、名を上げた芸能人ほど、事務所に所属しているメリットが少ない。実力と経験を積んだ芸能人が独立を選択する傾向は、今後強まるかもしれません」(三杉さん)
自己責任、自己判断が求められる時代、芸能人も自らの意思で人生をどう切り開くか、注目されている。【本誌・松岡かすみ】
(週刊朝日 2018年4月6日号)