北海道新聞に連載している「碓井広義の放送時評」。
今回は、ドラマ「オー・マイ・ジャンプ!」について書きました。
50作達成の深夜枠「ドラマ24」
意欲的コラボ「オー・マイ・ジャンプ!」
先月23日、「オー・マイ・ジャンプ!~少年ジャンプが地球を救う~」(テレビ東京―TVH)が最終回を迎えた。「ドラマ24」の50作目となる記念作品だ。
これまで「湯けむりスナイパー」(09年)、「勇者ヨシヒコ」シリーズ(11~16年)、「まほろ駅前番外地」(13年)などが流され、昨年も「バイプレイヤーズ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら~」、「孤独のグルメ・シーズン6」と話題作が続いた。
ドラマとはいえ低予算。有名俳優も望めない。そこで深夜ならではの実験的・刺激的なドラマを目指した。ゴールデンタイムでは成立しないマニアックな内容。多少は過激な表現もOK。知名度に縛られない自由なキャスティング。大根仁や福田雄一など気鋭の監督の起用。弱点を個性に変える逆転の発想だ。
50作目の「オー・マイ・ジャンプ!」は、今年創刊50周年となる「週刊少年ジャンプ」とのコラボ企画だった。まず物語の舞台である秘密クラブ「オー・マイ・ジャンプ!」に集う人々が強烈だ。「ジャンプ」にやたら詳しいマスター(斉木しげる)。「NARUTO」の格好をした智子(生駒里奈)。「Dr.スランプ」アラレちゃんと同じサロペットと帽子の美樹(佐藤仁美)。そして「聖闘士星矢」の聖衣を着た水川(寺脇康文)もいる。
そこに元愛読者で営業マンの主人公・月山(伊藤淳史)が加わり、毎回一つの作品をめぐるエピソードが展開された。たとえば第8話では月山が上司(ケンドーコバヤシ)から「魁!!男塾」さながらのハードな特訓を受ける。月山は「ジャンプ」が成功するまでの苦難の歴史(後発だったため)を知って発奮し、厳しい試練に耐えていく。
そして最終話。マスターが100年後から来た未来人であることが判明する。しかも未来社会で漫画は「邪悪なもの」として迫害されているというのだ。メンバーはマスターと共に未来へと向かい、「検閲するAI」(鈴木梨央演じる双子姉妹)と対決。もちろん命がけの「ジャンプ愛」で勝利した。
超マニアックなこのドラマ。ジャンプ好きにはたまらないし、そうでない人も出演者たちの予想を超える熱演に見入ってしまう。ドラマ24らしい「こだわり」と「ゆるさ」のブレンド具合が抜群だった。
来年は「ジャンプ」のライバル誌、「週刊少年マガジン」と「週刊少年サンデー」の創刊60周年だ。それぞれのファンも多いので、今回のようなコラボ企画を期待したい。
(北海道新聞 2018年04月03日)