Media Times
バラエティー、演出どこまでOK?
イッテQ疑惑
日本テレビのバラエティー番組「世界の果てまでイッテQ!」に祭り企画の「でっち上げ」の疑いがあるとの報道を受け、各局の情報番組が大きく報じ、ネット上でも議論が盛り上がっている。バラエティーゆえに「でっち上げ」があっても問題ないと擁護する声も多いが「本当なら裏切られた気分」などの意見も。報道後の日テレの対応を疑問視する声も出ている。
■BPO、報告書提出求める
8日発売の週刊文春が、5月20日の放送でラオスの「橋祭り」に芸人が参加した企画を疑問視する記事を出すと、8日のフジテレビの情報番組「直撃LIVE グッディ!」は、40分にわたってトップでこの話題を放送。
本当に橋祭りが存在するのか意見を交わすなど、各局が連日、独自にラオス関係者への取材も交え疑惑を取り上げている。放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は9日夜、日テレに番組の映像と報告書の提出を求めたことを明らかにした。
ツイッター上では「やらせだったらショック」などの声が上がる一方「バラエティーなんてヤラセなのは前提では」「面白ければヤラセでもいい」「視聴者は織り込み済みで楽しんでいるのでは」などと訴える人たちも多い。
バラエティー番組ではどこまで脚色や演出が許されるのか。一つの考え方を示しているのが、2014年にBPOの放送倫理検証委が出した意見書だ。
このときBPOはフジのバラエティー番組「ほこ×たて」が架空の対決を放送したことについて重大な放送倫理違反があったと認定したが、一般論としては、「どこまで事実に即した表現をすべきかについての放送倫理上の判断は、ジャンルや番組の趣旨を考慮した幅をもつものになる」と説明。
判断基準は「出演者や視聴者をも含む人々の間において互いに了解された『約束』として築かれるもの」だと指摘している。
ケース・バイ・ケースでの判断が必要だとの指針だ。今回の場合はどうか。ジャーナリストの武田徹さんは、番組がこれまで芸人のイモトアヤコさんのエベレスト登頂企画で人気を博すなど「ドキュメンタリー性」を強く打ち出してきたことに注目する。「バラエティー番組ではあっても今回の場合は、その真実性を揺るがす問題に厳しい目が向けられるのは避けられないのではないか」とみる。
■日テレ「現地提案」に批判も
他の在京民放キー局の幹部は「イッテQの場合、ある程度の脚色は承知した上で楽しんでいる視聴者が多かったはず。今回の疑惑への反感はそれほど大きくないだろう」とみる。ただ、文春の報道後の日テレの対応には驚いたという。
同局が8日、「企画は、現地からの提案を受けて成立したもので、番組サイドで企画したり、セットなどを設置した事実はなく、番組から参加者に賞金を渡した事実もございません」との見解を出したからだ。
「現地のコーディネーターのせいにしているように読める。放送責任のあるテレビ局として絶対にやってはいけないことだ。看板番組に傷をつけないために守ろうとしたのだろうか」
元テレビプロデューサーの碓井広義・上智大教授(メディア文化論)も、「視聴者からみれば、エンドロールに名を連ねる以上、『現地』も番組制作陣の一員だ。人気番組だからこそきちんと検証し、視聴者が納得できるように説明する責任を日テレは負っている」と話す。
【真野啓太、河村能宏】
(朝日新聞 2018.11.10)