週刊新潮に、以下の書評を寄稿しました。
川本三郎 『あの映画に、この鉄道』
キネマ旬報社 2700円
『網走番外地』の根室本線から、『男はつらいよ 寅次郎真実一路』の指宿枕崎線まで。日本映画と全国の鉄道をテーマに書き下ろされた最新エッセイ集だ。映画の内容を確かめながら、彼方の鉄路を想像する。巻末の地域別と作品別、二つの誠実な索引も有難い。
平野啓一郎『 考える葦』
キノブックス 2160円
ここ4年の間に書かれた批評・エッセイ集だ。谷崎潤一郎と三島由紀夫における小説の「構造的美観」。ハンナ・アーレント「反ユダヤ主義」の考察。かと思うと昭和プロレスの“リアリティ”や「自己責任」論も。67篇の連なりから著者の現在の立ち位置が見えてくる。
デイヴィッド・ゴードン:著、青木千鶴:訳
『用心棒』
早川書房 1278円
『二流小説家』の著者による濃密なハードボイルド。主人公のジョーはハーバード中退、元陸軍特殊部隊所属で現在はクラブの用心棒だ。マフィアから、あるヤマのドライバーを依頼されるが、窮地に陥ってしまう。ひりひりするような逃亡と反撃の始まりだ。
佐藤優子
『はじまりは、いつも楽しい
~デザイナー・彫刻家 五十嵐威暢の
つくる日々』
柏艪舎 1296円
デザイナーとしてサントリーやカルピスなどのロゴを手がけた五十嵐威暢(たけ のぶ)。90年代には彫刻家に転身し、JR札幌駅の巨大なテラコッタ作品「テルミヌスの森」などを生み出してきた。「つくることはあそぶこと」を信条とする創造の軌跡を自身の言葉で伝えている。
(週刊新潮 2018年11月29日号)