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Channel: 碓井広義ブログ
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書評した本: 小林信彦 『名人』ほか

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週刊新潮に、以下の書評を寄稿しました。


小林信彦 『名人』
朝日新聞出版 713円

古今亭志ん生と志ん朝。不世出の落語家の肖像が甦る、2度目の文庫化だ。しかし単行本にも既刊の文庫版にも収録されていない、志ん朝と著者の対談を楽しむことができる。また著者の「あとがき」の新作も読める。それだけで本書を手にする価値は十分なのだ。


バードマン幸田 『JazzSpot Jの物語』
駒草出版 2,700円

著者がオーナーの「J」は今年40周年のジャズハウスだ。高校でアルト・サックスを始め、早大“ダンモ研”で鈴木良雄(ベース)、増尾好秋(ギター)とコンボを組む。タモリは1年後輩だった。チェット・ベイカーやジョージ・ベンソンも登場する贅沢な回想記だ。


井上 由美子 『ハラスメントゲーム』
河出書房新社 1,620円

現在、唐沢寿明主演の同名ドラマが放送されている。本書は脚本を手がけた著者による原作小説だ。主人公は大手スーパーのコンプライアンス室長。パワハラやセクハラはもちろん、育児時短制度を利用して副業に精を出す悪質社員などとも、したたかに向き合っていく。

(週刊新潮 2018年12月13日号)



片岡義男 『あとがき』
晶文社 2,916円

70年代の『ぼくはプレスリーが大好き』から、近著『珈琲が呼ぶ』までの「あとがき」が並ぶ。自称“あとがき好き”の著者だから、長いものも多い。それぞれの文章に時代と心象が刻印されていて、良質なエッセイ集のような味わいがある。まさに企画の勝利だ。


川澄浩平 『探偵は教室にいない』
東京創元社 1,620円

第28回鮎川哲也賞受賞作。舞台は札幌の中学校だが、殺人事件があるわけでも、名探偵が登場するわけでもない。だが、中学生たちにとっては確かに「事件」であり、「探偵」の存在感も際立っている。ミステリーというジャンルの奥深さを感じさせる連作集だ。

(週刊新潮 2018年12月6日号)




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