<碓井広義の放送時評>
2018年のドラマ界を総括
新年早々の熱闘に期待
年明けということで、2018年のドラマを総括してみたい。まず1月クールだが、石原さとみ主演「アンナチュラル」(HBC)の面白さに圧倒された。「不自然死究明研究所(UDIラボ)」という設定自体が絶妙で、ミコト(石原)たち法医解剖医には捜査権も逮捕権もないが、徹底的な検査や調査で真相に迫っていく。野木亜希子の脚本と塚原あゆ子の演出がピタリと合い、予測のつかない新感覚サスペンスとなった。
次の4月クールには昨年最大の話題作「おっさんずラブ」(HTB)があった。女性にモテない33歳の男(田中圭)に、55歳の上司(吉田鋼太郎)と25歳の後輩(林遣都)がまさかの求愛。男たちの本音と建前をユーモアいっぱいに描いて新鮮だった。このドラマはSNSなどソーシャルメディアを通じて支持が広がった。リアルタイム視聴率の時代から、録画などのタイムシフト視聴率を加えた「総合視聴率」の時代へと転換が始まった昨年を象徴する1本だ。
7月クールで人気を集めたのが「義母と娘のブルース」(HBC)である。若き義母(綾瀬はるか)のキャラクターがユニークで、常にビジネスウーマンの姿勢を崩さない。何事にも戦略的に取り組みながら、他者への優しさも忘れない。夫(竹野内豊)との“ワケあり婚”も含め、夫婦とは、親子とは何かを考えさせてくれる出色の家族ドラマだった。
10月クールはかなりの豊作で、若年アルツハイマーのヒロイン(戸田恵梨香)と彼女を支える男(ムロツヨシ)を描いた「大恋愛~僕を忘れる君と」(HBC)は、単なる“重い病気系”ドラマを超えた秀作だ。また生きづらさを抱える人たちへの静かな応援歌だった高橋一生主演「僕らは奇跡でできている」(UHB)や、社会派エンタメの佳作である唐沢寿明主演「ハラスメントゲーム」(TVH)なども見応えがあった。振り返れば、全体として活気のある1年だったと言えるだろう。
さて今年のドラマ界だが、1月クールはいきなりの“女優対決”だ。ヒット作の続編である北川景子「家売るオンナの逆襲」(STV)。竹内結子が久々に地上波で主演する「スキャンダル専門弁護士 QUEEN」(UHB)。こちらも弁護士モノの常盤貴子「グッドワイフ」(HBC)。さらに真木よう子「よつば銀行 原島浩美がモノ申す!~この女に賭けろ~」(TVH)にも注目だ。女優たちの真冬の熱闘に期待したい。
(北海道新聞「碓井広義の放送時評」2019.01.05)