週刊新潮に、以下の書評を寄稿しました。
笹原和俊
『フェイクニュースを科学する』
化学同人 1620円
フェイクニュースはなぜ生まれ、いかに拡散し、私たちの脅威となるのか。その仕組みを解明しようという試みだ。計算社会科学を専門とする著者は、情報の生産者と消費者の関係を「情報生態系」の中で考察。「見たいものだけ見る」時代の危うさが見えてくる。
小谷野敦
『近松秋江伝~情痴と報国の人』
中央公論新社 3240円
この評伝から浮かんでくる人物像は、文学以外ほぼ社会的失格者だ。妻は愛想をつかして家出。おかげで出世作『別れたる妻に送る手紙』が書けた。また著者が「ストーカー」と呼ぶ、女性に対する執着ぶりも、『黒髪』などの作品を生む。実践=表現の作家だった。
(週刊新潮 2019年2月14日号)
なかにし礼
『がんに生きる』
小学館 1404円
著者は二度のがん闘病を経験した。切らない選択をし、珍しかった陽子線治療に挑んだ。しかし最も大きいのは、「善き人」から「正直な人間」へと意識が変わったこと。その上で、がんを理想的な病と捉え、自身を成長させようとしてきた。これは生き方の指南書だ
図書館さんぽ研究会
『図書館さんぽ』
駒草出版 1512円
週末に一日楽しめる場所として、図書館と学校と博物館を兼ねたような日比谷図書文化館、子どもたちと本をつなぎ、町の産業も支援する岩手県の紫波町図書館などを紹介する。また全国の注目すべき105館のリストも充実。図書館が目的の旅も悪くない。
小谷野敦
『とちおとめのババロア』
青土社 1512円
純次は38歳になる仏文学の准教授。ネットお見合いで知り合った相手は、なんと皇室の一員だった。ラブホテルの外でSPならぬ側衛が待機するデート。奇にして貴なる恋愛の一部始終を描いた表題作が秀逸だ。他に風俗遍歴を淡々と語る「五条楽園まで」など全5編。
(週刊新潮 2019年2月7日号)
フェイクニュースを科学する 拡散するデマ、陰謀論、プロパガンダのしくみ (DOJIN選書)笹原和俊化学同人
近松秋江伝-情痴と報国の人 (単行本)小谷野敦中央公論新社
がんに生きるなかにし礼小学館
図書館さんぽ -本のある空間で世界を広げる-図書館さんぽ研究会駒草出版
とちおとめのババロア小谷野敦青土社