テレ東「フルーツ宅配便」
嬢たちが抱える事情の中に
ナマの人間の姿が映し出されている
フルーツ宅配便は、咲田真一(濱田岳)が雇われ店長をしているデリヘルの店名だ。在籍する女性たちには、みかん(徳永えり)やイチゴ(山下リオ)といったフルーツの名前が付いている。
そんなメンバーに加えて、新人が毎回入ってくる。どんな女優が、どんな女性として登場するのか。それがこのドラマの大きな見どころだ。
たとえば、詐欺に引っかかり借金を背負ったモモ(成海璃子)。客に本番をさせておいて後から金をゆする、困ったタイプがサクランボ(筧美和子、好演)だ。そして先週のブルーベリー(中村ゆり)は、一度は逃れた覚醒剤に再び手を出し、自首することを選ぶ。
咲田は確かに主人公なのだが、彼を軸にドラマが展開されるわけではない。主体はむしろ嬢たちだ。それぞれが抱えた事情やトラブルの中に、今の社会や生(ナマ)の人間の姿がさりげなく映し出されているのだ。また嬢たちは密室で客と向き合うが、サービス行為そのもののシーンはない。それは鈴木良雄の原作漫画も同様で、その抑制と禁欲ぶりが好ましい。
ドラマは終盤に入ってきた。咲田が付き合っているえみ(仲里依紗)が所属する、悪徳デリヘル店の経営者・沢田(田中哲司)と、フルーツ宅配便のオーナー・ミスジ(松尾スズキ)の対決も迫っているようだ。そして、咲田自身はこれからどうするのか。気になる。
(日刊ゲンダイ 2019.03.06)