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Channel: 碓井広義ブログ
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2013年 テレビは何を映してきたか (4月編)

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ハワイ島 2013

日刊ゲンダイに連載している、番組時評コラム「TV見るべきものは!!」。

リアルタイムの記録を通じて、今年のテレビが何を映してきたかを
振り返っています。

今日はその4月分。

ついに、「あまちゃん」が登場しました(笑)。

各文章は掲載時のままで、文末の日付は掲載日です。



2013年 テレビは何を映してきたか (4月編)

マルチチャンネルドラマ「放送博物館危機一髪」 NHK

先週末、NHKがテレビ60年を記念して、マルチチャンネルドラマ「放送博物館危機一髪」をオンエアした。マルチチャンネルというのは地デジ化によって実現した機能。1つのチャンネルを、ハイビジョンと最大3つまでの標準画質に分けて放送することが可能なのだ。このドラマでは部分的にマルチにすることで、場所の違う2つのシーンを同時進行で見せていた。

主人公は、放送博物館からの中継番組を任された新人ディレクター(松井玲奈@SKE48)だ。愛宕山のNHK放送博物館でテレビ60年の企画展が開催されるという設定で、そこに幽霊騒動や淡い恋などがからむ。恋といっても松井ではなく、かつてアナンウンサーだった博物館長(本人も元NHKアナの野際陽子)のソレだけど。

最大の見せ場は何回か挿入されるマルチシーン。博物館にいる松井と放送センターにいる先輩ディレクター(秋元才加@AKB48)、視聴者は見たいほうをリモコンのボタンで選択する。片方だけを見ていても支障のないストーリーになっているが、逆にそれが物足りなかった。

このマルチチャンネル、特に災害時には有効だ。実際、東北エリアのNHK総合では、昨年春まで震災ニュースと通常番組をマルチで流していた。今回はいわば汎用性の実験だが、ドラマで生かすにはもうひと工夫必要だ。

(2013.04.02)


「あまちゃん」 NHK

迷走ストーリーと怒鳴り合いのNHK朝ドラ「純と愛」が終わり、「あまちゃん」が始まった。東京の女子高生(能年玲奈)が、母親(小泉今日子)の実家がある岩手の田舎町にやってくる。彼女がこの海辺の町で祖母(宮本信子)の後を継いで海女に、それも「アイドル海女」になっていくという物語だ。

スタートから一週間あまり、すでにこのドラマから目が離せなくなっているのは宮藤官九郎の脚本のお手柄だ。シンプルでわかりやすい展開。実体感のある登場人物たち。驚いた時の方言「じぇじぇ!」をはじめ、思わず口真似したくなるセリフ。何より全体のおおらかな雰囲気がいい。

そして、「母娘三代」の巧みなキャスティング。能年の天然度、小泉のヤンキー度、宮本のガンコ度と、それぞれの素の持ち味が生かされている。

中でもこのドラマの小泉は必見である。聖子ちゃんカットで家を飛び出した80年代から現在までの“女の軌跡”が全身から漂う役柄と、リアル小泉が重なって見えるのだ。昨年の「最後から二番目の恋」(フジ)でも光っていたが、今回の小泉ママはより一層“無敵の40代”と呼ぶにふさわしい。

そうそう、キャストで言えばヒロインの親友役の橋本愛、若き日の小泉を演じる有村架純など、能年の同時代ライバルと言える実力派美少女たちの競演にも注目だ。

(2013.04.09)


「めしばな刑事タチバナ」 テレビ東京

佐藤二朗と聞いて、すぐ顔が思い浮かぶ人は少ないかもしれない。しかし顔を見れば、「ああ、あの人ね」とすぐわかる。映画「20世紀少年」での警官役のような、ちょっと不気味なキャラクターをやらせたら右に出る者はいないからだ。最近は「勇者ヨシヒコと魔王の城」(テレビ東京)などを通じて若い衆の間にもファンが増えている。

先週から始まったテレビ東京「めしばな刑事タチバナ」(水曜夜11時58分)はこの佐藤が主役だ。ごく身近なB・C級グルメを愛し、豊富な実体験とウンチクを語り出したら止まらない。取調室で黙秘を続ける容疑者も、つい話に加わり墓穴を掘ってしまうほどだ。

栄えある第1回のテーマは立ち食いそば。吉そば「えび天そば」や、梅もと「薬膳天そばセット」などが熱く語られた。店や商品は実名。値段も明示される。しかも上司との立ち食いそば論争が事件の解決につながってしまうのが笑える。

ドラマのテイストは狙い通りのB・C級で、深夜にぴったり。敷居は低いが、病みつきになりそうな味だ。実際、見終わってすぐ、立ち食いそばへ駆けつけたくなった。

また、ドラマの原作が漫画というケースは多い。しかし、掲載誌が「アサヒ芸能」というところがオトナには嬉しい。もっさりした無精ひげの主役・佐藤は、まんま原作漫画のタチバナである。

(2013.04.16)


「TAKE FIVE〜俺たちは愛を盗めるか〜」 TBS

この春の新ドラマも刑事・警察物が多い。ある程度、視聴率の歩留りが読めるからだが、視聴者にとっては似たような料理が並ぶわけで、食傷気味にならないか心配だ。

そんな中、追う側(刑事)ではなく、追われる側(犯罪者)を主人公にする“逆張り”の発想で仕掛けてきたのが、TBSの金曜ドラマ「TAKE FIVE〜俺たちは愛を盗めるか〜」である。

「テイク・ファイブ」は義賊とも呼べる伝説の窃盗集団。かつてそのメンバーだった唐沢寿明は、現在足を洗って大学の教壇に立っている。ところが、謎のホームレス(倍賞美津子)からレオナルド・ダ・ヴィンチの絵画の写真を見せられたことから、泥棒チームの再結成へと動いていくのだ。

先週の第1回を見たが、全体がチャチな作りじゃないことに感心した。銀行の担保倉庫への侵入も、泥棒嫌いの女刑事(松雪泰子)たちの描き方も大人の鑑賞に堪えるものだ。何より映像センスと軽快なテンポがいい。

さらに、唐沢と窃盗団「テイク・ファイブ」が抱えている過去の謎も興味をひく。それは設定と登場人物の造形がしっかりしている証拠だろう。

原案脚本の櫻井武晴は、ドラマ「相棒」や公開中のアニメ映画「名探偵コナン 絶海の探偵」を手がけるベテラン。映画「麒麟の翼」でも組んだ、伊與田英徳プロデューサーとのコンビは期待大だ。

(2013.04.23)


「刑事110キロ」 テレビ朝日

“石ちゃん”こと石塚英彦が主役のテレビ朝日「刑事110キロ」(木曜夜8時)が始まった。タイトルに主人公の「体重」を入れ込んだドラマなんて、日本テレビが1980年に放送した「池中玄太80キロ」以来ではないか。80キロは主演だった西田敏行の当時の体重だが、それを30キロも上回っているのが笑える。

舞台は京都。交番勤務の警察官である石塚が、「捜査一課長付き刑事」に抜擢される。見込まれたのは長年の交番勤務で培われた人間観察力だ。交番に持ち込まれる用件を聞く前に当てたりする。だが、それ以上に力を発揮するのが、犯人でさえつい気を許してしまうその体型。つまりデブが武器になっているのだ。

このドラマの特色は、デブ刑事という“のほほん感”と、東映刑事物という“かっちり感”の不思議な融合にある。それを可能にしているのは、意外なほど達者な石塚の演技だ。

先週の第一回でも、あの市原悦子を相手に堂々の座長芝居だった。物語の軸は殺人事件とその解決だが、石塚のおかげで、おどろおどろしくない。午後8時枠でもあり、“ファミリー刑事ドラマ“として成立させている。一種の新機軸だ。

木曜のテレ朝は、この「刑事110キロ」と「ダブルス」で、刑事ドラマの二段重ね編成となる。水曜の「相棒」と併せて、お家芸・得意技で攻め続ける作戦と見た。

(2013.04.30)



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