NHK「路(ルウ)~台湾エクスプレス~」
癒やされること必至の秀作
先週から始まった「路~台湾エクスプレス~」(全3回)。タイトルだけ見ると、かつての「プロジェクトX」が思い浮かぶ。
だが、台湾新幹線実現への取り組みは物語の一面だ。軸となるのは日本人と台湾人の運命的な「つながり」である。
主人公の多田春香(波瑠)は学生時代からの台湾好き。大手商社に就職して4年目、台湾新幹線プロジェクトに参加する。
しかし春香には、日本に残してきた恋人に言えない秘密があった。最初の台湾旅行で出会った、エリック(アーロン)という台湾人青年への思いだ。
連絡先のメモを紛失して探し出せないままだが、会いたい気持ちはずっと変わっていない。
実はエリック、日本の設計会社で働いている。もちろん春香は知らない。互いのことを気にかけながら、居場所が入れ替わっていたのだ。
そして第1話のラストでは、2人が8年ぶりの再会を果たすことになる。
とはいえ、「国境を越えた熱愛」といったトーンの恋愛ではない。男と女ではあるが、何より「人」として好ましく、また「こころの支え」として大切な存在なのだ。
原作は吉田修一の小説。脚本は「篤姫」や「江」の田渕久美子。演出は「花子とアン」の松浦善之助だ。
どこか懐かしい台湾の風景を背景に、静かで抑制の効いた恋情が、波瑠とアーロンを通じて丁寧に描かれていく。癒やされること必至の秀作だ。
(日刊ゲンダイ 2020.05.20)