サントリー ほろよい
「グレープもあの味だ」編
設定・配役の妙、化学反応に酔う
ドラマでは、登場人物たちが出会うことで発生する一種の「化学変化」が物語を動かしていく。脚本家・倉本聰さんの言葉だ。2人がどんな人間で、いかなる人生を歩んできたか。そんな見えない過去のぶつかり合いが重要なのだ。それはCMも同じかもしれない。
ほろよい部のカウンターをはさんで向き合っているのは、黒木華さんと佐藤二朗さんだ。「葡萄ではなく、グレープだと思って飲んで」と佐藤さんに促され、「グレープ、グレープ」と呪文のように唱えながら試す黒木さん。「あの味や!」と関西出身らしい感激ぶりが楽しい。
そこには、困った男たちと離れて自立した「凪のお暇」の凪ちゃんと、独りごと一歩手前のおしゃべりを続けていた「勇者ヨシヒコ」の仏さまが、それぞれ進化した形で存在している。そして不思議な化学反応が起きている。
設定と配役の妙が生み出す、予測不能なサスペンスとユーモア。見る側はそれに酔うのだ。
(日経MJ「CM裏表」2020.06.01)