「捨ててよ、安達さん。」で振り返る
自分は何に執着していたのか?
リモート勤務で在宅時間が増えた。すると家の中が気になってくる。「モノが多いなあ」と思った人、このドラマは必見だ。安達祐実主演「捨ててよ、安達さん。」(テレビ東京系)である。
安達が演じるのは「女優の安達祐実」。全体はもちろんドラマだが、安達が「不要の私物を捨てる」という雑誌の連載企画を引き受けるのだ。
これまでに、見ないまま死蔵していた出演作の「DVD」、ため込んだ「レジ袋と輪ゴム」、懐かしい「ガラケー」、そして若い頃に背伸びして買った「高級ハイヒール」などを捨ててきた。
しかも夢の中で、こうした品々が人間の姿となって安達の家を訪問してくる。彼らと対話しながら思い出や記憶を映像で振り返り、最後には気持ちよく、納得した上で手放していくのだ。
秀逸だったのは「本」をめぐる回だ。安達の愛読書である小池真理子の恋愛小説「狂王の庭」。その単行本(松本まりか)と文庫本(徳永えり)が現れ、「どちらかを捨てて」と迫る。さらに、そこへ少女がやってくるのだが、シレッとした彼女は電子書籍版だった。シュールな舞台劇みたいで笑える。
確かにモノを捨てるのは面倒で、後回しにしたくなる。このドラマでの発見は、モノと向き合い、自分が何に執着していたのかを知ることの効用だ。安達さんにならって、心の重荷も捨てちゃおう!
(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2020.06.10)