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Channel: 碓井広義ブログ
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中日新聞・東京新聞で語った「テレビドラマの現在地」

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テレビドラマの現在地

家族そろって茶の間のテレビでドラマを楽しむ。そんな時代があった。高い視聴率を記録した人気ドラマもあった。しかし、最近のドラマはつまらないという声もある。面白いドラマとは?

 

自由な発想で実験を 

メディア文化評論家・碓井広義さん

面白いドラマは、見ている人の気持ちを動かします。一つのせりふ、一つの動きにでも人間の真実があれば、人の気持ちは揺さぶられます。

人間のいいところも悪いところも丸ごと描く。それがドラマです。だから、作り手には自分たちが作り出す人物や物語に対する「熱狂」が必要になります。誰か一人だけでもいい。作り手の熱狂は、画面を通して必ず伝わります。

話題のドラマ「半沢直樹」の場合、まず池井戸潤さんの原作がそうです。若い頃に勤めた銀行に対する愛着、その裏返しとしての、ある種の怒り。それが底流にあるような気がします。めりはりの利いた演出には、ディレクターの福沢克雄さんの強い思い入れが表れています。顔のアップで攻め、引いた画面で緩める。緩急自在です。

そして、堺雅人さんをはじめとする出演者。普通、役者は役に入り込みます。ところが、このドラマでは、役が役者に憑依(ひょうい)し、入り込んでいるように見えます。熱狂が重なり、響き合ってエネルギーが生まれます。

映画が「非日常」の体験であるのに対し、テレビは「日常」のメディアです。テレビドラマは、われわれと地続きの世界です。人は自分の人生しか生きられません。しかし、ドラマを見ることで、こんな生き方もあるのかと発見する、もしくは忘れていたものを再発見することもあります。

若者のテレビ離れが指摘されますが、彼らが会員制交流サイト(SNS)で話題にしていることの多くはテレビだったり、中でもドラマだったりします。彼らの意識にネットとテレビの区別はありません。いいドラマを作れば受け止めてくれます。

コロナ禍でドラマの制作現場は苦労しています。普段と同じことができない。ならば、それをポジティブに捉えたらどうでしょうか。定型やスタイルを崩し、普段ならできないことを試してみる。リモート制作ドラマで、離婚した元夫婦が電話で話すだけの作品がありました。二人芝居の舞台を見ているようで面白い作品でした。

ドラマは箱ではなく、風呂敷です。何でも包み込める。少しでこぼこして見てくれが悪かろうと、それもドラマです。コロナをてこにして、自由な発想でドラマの可能性を広げてほしい。そう思っています。【聞き手・越智俊至】

(中日新聞・東京新聞 2020.08.31)

 


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