上白石萌音「ボス恋」
“菜々緒ストリープ”
怒涛の快演がすべて吹き飛ばす!
地方出身の女子学生、鈴木奈未(上白石萌音)が東京の出版社に就職する。配属先は志望していた「備品管理部」ではなく、新創刊のファッション誌「MIYAVI(ミヤビ)」。そこで待っていたのは鬼編集長の宝来麗子(菜々緒)だ。
これって映画「プラダを着た悪魔」じゃん。初回を見て、そう思った人は少なくないはずだ。笑ってしまうほど設定を寄せているが、オリジナル脚本だから参考とかオマージュのつもりか。
映画で雑誌「ランウェイ」の敏腕編集長を演じていたのはメリル・ストリープ。ヒロインであるアン・ハサウェイを「小間使い」のように酷使する。コーヒーの用意、チケットの予約、車の手配、メモの伝達、そして荷物運び。麗子のパワハラ的無理難題も、奈未の反発も映画そのままだ。
上白石は例によって「やがて輝く平凡女子」を好演。しかし、それを凌駕するのが菜々緒のインパクトだ。才能のある人間を引きつけ、意のままに操るカリスマ性。目的のためなら白いコートで土下座も辞さない。「雑用もまともにできないあなたが、普通や人並みを求めるなんておこがましい!」と奈未を一喝する。
偶然知り合ったカメラマン・潤之介(玉森裕太)が実は麗子の弟で、資産家の御曹司だといった展開は「いかにも」だが、“菜々緒ストリープ”の怒涛の快演がすべてを吹き飛ばしていく。
(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2021.01.20)