日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。
今回は、「明日、ママがいない」(日本テレビ)について書きました。
日テレの判断と対応、BPOの見解に注目
期せずして、この冬最大の話題作になってしまった「明日、ママがいない」(日本テレビ)。
初回放送直後に熊本県の病院などが放送中止や内容改善を要求したことに始まり、批判や批難の拡大、スポンサーのCM自粛と騒動は現在も進行中だ。
まず、当たり前だが、これがドラマでありフィクションであることを再確認したい。その上で、このドラマは子どもから見た親を描きつつ、一般的に“弱者”と思われがちな子どもの強さも描いている。
また経済的事情から虐待まで、様々な理由で自分の親に養育してもらえない子どもたちの問題を提起していることも事実だ。芦田愛菜をはじめ子役たちの圧倒的な演技力も評価できる。
もちろん、主人公に「赤ちゃんポスト」からとった「ポスト」というニックネームを付けるなど、当事者も含む視聴者に対する想像力と思慮に欠けていたことは否めない。
これまでもエグい物語展開や人物設定で名を馳せてきた野島伸司を脚本監修に置いたことで、「クレーム上等!」くらいに思っていたのかもしれないが、同じ野島の「家なき子」の時代と今では社会の環境や意識が大きく変わっている。それはスポンサー企業も同様だ。
とはいえ、物語の全体像が見えていない現段階で放送を中止することがいいとは思えない。日テレの判断と対応、BPOの見解にも注目したい。
(日刊ゲンダイ 2014.01.28)
・・・・日テレは27日の定例記者会見で、放送継続の意向を明らかにしたそうです。
日テレ「明日、ママがいない」
スポンサー全社がCM見合わせ
日本テレビの連続ドラマ「明日、ママがいない」が児童養護施設の団体などから内容改善を求められている問題で、番組スポンサーの花王、三菱地所、小林製薬の3社は27日、CMの放送を見合わせると決めた。番組を提供しているスポンサー全8社がCM放送を見合わせることになった。一方で同局の大久保好男社長は同日、放送を継続する意向を明らかにした。
3社は29日放送の第3話のCMをACジャパン(旧公共広告機構)の公共CMに差し替える。契約は継続しているが、スポンサー全社がCMを見合わせるのは異例。
日本テレビ総合広報部は「当社では番組の契約に関する個別の事項についてはお答えしていません」としている。
また、大久保社長は定例記者会見で「抗議や申し入れは重く受け止めるが、最後まで見れば私たちの意図を理解していただける」と述べた。当初の予定通り全9話を放送する方針。
会見で佐野譲顕制作局長は脚本や演出の大幅な変更は予定していないと明言。「子どもたちの視点から愛情とは何かを描きたい」と、あらためてテーマを説明した。
ドラマをめぐっては「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)を設置する慈恵病院(熊本市)や全国児童養護施設協議会が「養護施設の子どもや職員への誤解や偏見を与えかねない」として放送の中止や内容改善を求めている。
ビデオリサーチによると、関東地区の視聴率は第1話で14・0%を記録、注目を集めていた。(共同)
放送評論家こうたきてつやさんの話
「インターネットの普及などもあって、スポンサーは視聴者の批判に敏感になっているのだろう。視聴者を引きつけるためのセンセーショナルな“つかみ”を重視しているように見える表現や、関係者への説明に丁寧さを欠いている点など今回のドラマに問題はあるが、日本テレビは最後まで放送を続けるべきだと思う。放送を中止すれば、制作者の表現が萎縮してしまうと懸念する」
(サンスポ 2014.1.27)