発売中の「週刊SPA!」最新号に、「明日、ママがいない」に関する記事が掲載されました。
タイトルは、<大論争ドラマ『明日、ママ』 是か?非か?>
見開きの右ページには「全国初の児童養護施設出身の市長」である草間吉夫・茨城県高萩市長、左ページに私の談話が載っています。
記事全体は本誌をご覧いただくとして、私の部分を転載しておきます。
大人が子供を信用しなさすぎ!?
少女からもあがる擁護論
「偏見を助長する!」と批判の声があがり、「赤ちゃんポスト」を設置する慈恵病院がBPO(放送倫理・番組向上機構)の放送人権委員会に審議を申し立てる騒動にまで発展している『明日、ママ』。
だが、果敢にも擁護論を唱える人もいる。ナインティナインの岡村隆史は自身のラジオ番組で「これで放送中止になったら、もうテレビの未来はないです」とコメント。
“はるかぜちゃん”こと中学生タレントの春奈風花は、『明日、ママ』の裏番組に出演していながら、ツイッター上で「ちゃんとセリフを聞いて。役者の表情をみて。優しい作品だよ」と擁護しつつ、「今回の件で、子どもはおとなに本当に信用されてないんだなと思いました」と、騒ぎ立てる大人にカウンターパンチを浴びせたのだ。
元番組プロデューサーでメディア論が専門の碓井広義・上智大学教授も次のように話す。
「親が子をあやめてしまうニュースも流れる世の中で、その解決法は一向に示されていません。虐待などの児童問題に対する意識を喚起させる点においては、意義のあるドラマです。『ポスト』という過激なあだ名が問題視されていますが、ドラマをしっかり見れば、自分を捨てた親との関係を断ち切るために強い意志で『ポスト』を名乗っていることもわかる。
このドラマは子供から見た親を描きつつ、一般的に“弱者”と見られがちな子供の強さも描いているのではないでしょうか? 『児童養護施設の子供が傷つく』『親のいない子供が学校でイジメられる』という批判もありますが、『なんで、そこまで大人は子供を信用できないの?』という疑問をドラマのなかで投げかけているように感じます」
もちろん、制作サイドに落ち度がないわけではない。
「NHKの『あまちゃん』では壊れたジオラマと橋本愛ちゃんの表情だけで、東日本大震災の衝撃を見事なまでに描きました。津波の映像がたっぷりあるはずなのに、その映像を使わなかったのは、当然、被災者に配慮してのこと。その点、『明日、ママ』に両親のいない子供たちに対する思慮や想像力が欠けていたのは事実です。
脚本監修を手掛けたのは『家なき子』などで知られる野島伸司さんですが、『家なき子』がヒットした時代と今は違う。情報はすぐさまネットを介して拡散されるし、企業のコンプライアンス意識も格段に上がっている。そんな時代に、エグい表現を多用して数字を取ろうという手法は古い!と言わざるをえない」(碓井氏)
それでも、『明日、ママ』が注目を集めてしまうのは、「芦田愛菜ちゃんをはじめとした子役たちの圧倒的な演技力にくぎ付けになる」(碓井氏)から。
表現の自由なんて陳腐な擁護論を振りかざすまでもなく、完全に彼女たちはプロの仕事を見せているのだ。果たして打ち切りが望ましいのか?さらなる議論が必要だろう。
(週刊SPA! 2014.02.04号)