発売中の「週刊新潮」最新号に、NHK「朝ドラ」と「大河」に関する
特集記事が掲載されました。
この中で、両番組について解説をしています。
以下は抜粋ですので、記事全体は本誌をご覧ください。
NHK
「朝ドラ」絶好調なのに
「大河」絶不調の明暗
●「あまちゃん」「ごちそうさん」について
「これまでの朝ドラにはなかった異色作でした。“女性の一代記”という常識を破り、脚本の宮藤官九郎さんのユーモアを取り入れながら、わずか4年間という異例の短い物語でした」
とは、上智大学の碓井広義教授(メディア論)。
「さらに、主役の能年玲奈のほか、小泉今日子、宮本信子も物語の中心人物として活躍する、トリプルヒロインのドラマでした。実際の出来事である、東日本大震災も取り込んで、朝ドラの既成概念を崩しましたね。朝ドラを見なかった新しい視聴者を多数呼び込んだと思います」
その『あまちゃん』に続いて放送したのが昨年度後半の杏主演『ごちそうさん』である。
「新しいファンに加えて、『あまちゃん』で離れていた固定客の視聴者も戻ってきたのではないでしょうか」(同)
視聴率は前作を上回る22.3%を稼ぎ出した。
・・・・記事では、ライター兼イラストレーターの吉田潮氏の<専業主婦が主人公。浮気騒動や小姑のいじめもあったり><『あまちゃん』の流行以来、朝ドラは職場や学校で話題に>という指摘があり、さらに、映画評論家・北川れい子さんの「料理」に関するコメントが載っています。
●『花子とアン』について
・・・・好調の理由を、先の北川さんが語っています。
「貧乏な話や女学校で苦労するエピソードもありますが、彼女がちゃんと家庭を築き、翻訳家として大成すること知っているので、安心して見ていられるんです」
「(主演の吉高は)癖のある女優だなと思っていました。見ていてハラハラさせられます。ドラマは筋書があるはずなのに、何かやらかすんじゃないかと思ってしまう。そういう彼女が主演なので、退屈しないのかもしれませんね」(同)
●「大河ドラマ」について
「豊作続きの朝ドラの一方で、(視聴者側に)大河ドラマを見る動機がない、というのが正直な感想です」
とは先の碓井教授。
「黒田官兵衛は歴史好きしか知らないし、軍師はあくまでサポート役。視聴者からは距離がある人物です。むしろ、彼が仕えている織田信長や豊臣秀吉の方が、これからどうなるのか気になってしまう。題材がマニアックなんです。
主役の岡田准一は悪い俳優だとは思いませんが、線が細く、どうしても大河ドラマの重さに比べると軽く感じです。『八重の桜』も同志社の創立者・新島襄は知っていますが、ほとんどの人がその奥さんは知りません。
『平清盛』にしても、清盛は日本人の歴史観では悪役のイメージが強すぎる。(視聴者は)悪役の話を1年間も見る気にはなれません」
大河ドラマは、主に源平、戦国、そして幕末などから素材を集めてきたが、
「もう、歴史上のスターが出尽してきた、という感じかもしれませんね」
こう言うのは作家の麻生千晶氏である。
「大河ドラマ2作目の『赤穂浪士』であれば、その後も大石内蔵助に焦点を当ててスピンオフ作品も作ることができます。でも、戦国武将や剣豪、幕末の英雄などでテーマとなりうる人物はそれほど多くない。NHKは大河からの引き際を間違えたといえるでしょう」
大河ドラマ自体そのものが時代と合わなくなった、と言うのは、映画評論家の白井佳夫氏である。
「以前、私が携わっていた徳島テレビ祭に朝ドラのプロデューサーを招いた時、彼は“現代の忙しい人々が意識を集中できるのは、せいぜい15分”と言っていましたが、正にその通り。大河は実在の人物のドラマを45分間、しかも1年間にわたって見なければいけない。15分しか集中できない今の日本人にはとても無理」
日曜日午後8時になると多くの人々がNHKにチャンネルを合わせる。そんな時代はとうに過ぎ去ったのかもしれない。
(週刊新潮 2014.05.01号)