日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。
今週は、ドラマ「素敵な選TAXI」(フジテレビ)について書きました。
フジテレビ「素敵な選TAXI」
出来のいい連作短編集のような
掘り出し物の一本
いい意味で予想を裏切られた。フジテレビ系のドラマ「素敵な選TAXI(センタクシー)」である。タイムスリップするタクシー? 脚本がバカリズム? 大丈夫なのかと思っていた。ところが蓋を開けてみれば、肩の力が抜けた、癒し系SFドラマになっている。
何かトラブルを抱えている人物が偶然乗ったタクシー。それは過去へと戻れるタイムマシンだった。恋人へのプロポーズに失敗した売れない役者(安田顕)、駆け落ちする勇気がなかった過去を悔いる民宿の主人(仲村トオル)、そして不倫相手である社長と嫌な別れ方をした秘書(木村文乃)などが乗車する。
映画「バック・バック・トゥ・ザ・フューチャー」ではガルウイングドアのデロリアンだったが、こちらは40年前のトヨタ・クラウンのタクシーというのが嬉しい。
運転手は“お久しぶり感”のある竹野内豊だ。制服にヒゲという出で立ちで乗客の話をじっくりと聞き、彼らを「人生の分岐点」まで戻してくれる不思議なオジサンを飄々と演じている。ちょっとした新境地だ。
乗客は過去に戻って新たな選択をするが、必ずしも事がうまく運ぶわけではなく、もうひと波乱ある。バカリズムの脚本はその辺りのヒネリが効いており、“読後感”も悪くない。出来のいい連作短編集のような、今期掘り出し物の1本だ。
(日刊ゲンダイ 2014.11.04)