発売中の「週刊新潮」最新号に、秋ドラマの明暗に関する記事が
掲載されました。
この中で、解説しています。
「綾瀬はるか」「深田恭子」の明暗分かれた
秋の「視聴率最下層」
いい本が売れるとは限らない。しかし、売れた本はいい本である。出版界にはこんな言い伝えが存在する。が、果たしてテレビ界は――。ある番組はクオリティーを求め、またある番組はひたすらウケを狙う。数字と質から読み解く秋のテレビドラマ戦線。
今クールのテレビドラマには2つの傾向が見て取れるという。まず、
「視聴率が悪い番組ほど、玄人筋での評判がいいんですよね」(芸能記者)
実際、例えばNHKの『さよなら私』に対する上智大学の碓井広義教授(メディア論)の評価は、
「永作博美と石田ゆり子の人格が入れ替わるという映画の『転校生』を思わせる設定ですが、脚本を『最後から2番目の恋』の岡田惠和が担当し、ストーリーがしっかりしている。また2人の女優が、それぞれ『1人2役』を演じきっていて見事な『競演』。今クールのベストワンドラマです」
だが、第3話までの平均視聴率は4.77%と最下層に低迷。また、西島秀俊が公安の警察官を演じるTBSの『MOZU』も、
「映像の美しさが頭二つ三つ抜けている。西島と共演の真木よう子が格好いいし、香川照之も人間臭くていい」(ライターの吉田潮氏)
しかし、謎が謎を呼ぶ、作り込んだ展開が災いしたのか、第3話までの平均視聴率は6.63%と下位争いを強いられている。やはり、「いいドラマが売れるとは限らない」と言えそうだ。
16.13%対6.6%
そして、秋のドラマのもう一つの傾向は、
「映画『アナと雪の女王』の影響で、ダブルヒロイン、ダブルヒーローものが目立つことです」(前出記者)
事実、先の『さよなら私』がそうだし、深田恭子(32)と寺島しのぶが対照的な弁護士を演じるTBSの『女はそれを許さない』がダブルヒロイン、綾瀬はるか(29)を玉木宏と福士蒼太が奪い合う日テレの『きょうは会社休みます。』は、ダブルヒーローと言える。
これらのドラマの中で、評論家が揃って目を細めるのは『きょうは~』で、
「美人だけど少し天然、というのが綾瀬自身の魅力だと思いますが、30歳を目前にしながら男性経験がなく、男に言い寄られてドキドキする役柄が彼女にマッチしています」(碓井教授)
コラムニストの丸山タケシ氏も、
「綾瀬にぴったりのいじらしい役柄。女性が見ても嫌味を感じないでしょうし、眼鏡を掛けているキャラクターで、外した時に可愛らしさが一段と増します」
一方、『女は~』は、
「深田は弁護士に見えませんし、ほんわかした印象の彼女と、濡れ場も厭(いと)わない寺島の共演にも居心地の悪さを感じます」(碓井教授)
こちらは評価と数字が連動していて、『きょうは~』は第3話、『女は~』は第2話までの平均視聴率がそれぞれ16.13 %と6.6%。奇しくも同じホリプロ所属の綾瀬と深田の明暗が分かれた格好だ。
「いいドラマ」は振るわず、結局、綾瀬のキャラが数字を稼ぐ――。
長らく続くデフレ下で、ドラマもB級グルメに似た「軽さ」が受ける時代となったのだ。
(週刊新潮 2104.11.13号)