日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。
今週は、TBS系「深夜食堂3」を取り上げました。
深夜のぜいたくな“しめの一本”
買ったばかりの漫画誌「ビッグコミックオリジナル」。最初に読むのは長年の習慣で「釣りバカ日誌」だ。そして最後に開くのが安倍夜郎の「深夜食堂」である。“しめの一杯”という感じがするからだ。
ドラマ「深夜食堂3」(TBS系)の、一見コワモテだが、どこか優しいマスター(小林薫)の佇まいは、シリーズを重ねても変わらない。
また相変わらず、「豚バラトマト巻き」や「紅しょうがの天ぷら」など出てくる料理もうまそうだ。しかも料理とストーリーのマッチングが押しつけがましくないことも嬉しい。
そして、このドラマの魅力の一つがキャスティングだ。たとえば第3話の石橋けい。「有言実行三姉妹シュシュトリアン」や平成のウルトラシリーズ以来の根強いファンを持つ。今回の「婚約者の浮気を知って別れ、興信所の調査員をしている30代独身女性」なんて、まさにハマリ役だった。
第4話で「男前な大阪女」を演じた谷村美月もいいキャスティングだ。強がりと健気さが同居したキャラクターを、NHK「さよなら私」の愛人役とは違ったタッチで見せていた。
このドラマ、演出陣に松岡錠司、山下敦弘、熊切和喜など手練れの映画監督が並んでいることも特色だ。30分の1話完結形式がそのまま競作の場となっている。深夜の贅沢な“しめの一本”だ。
(日刊ゲンダイ 2014.11.18)