北海道新聞に連載している「碓井広義の放送時評」。
今回は、1月に始まった連続ドラマについて書いています。
有力制作陣の新作ドラマ
「夫婦とは」問う異色作
1月から新たな連続ドラマが始まっている。注目したいのは、これまで確かな実績を残してきた制作チームによる新作3本だ。
1本目は真木よう子主演「問題のあるレストラン」(フジテレビ系)。真木、脚本の坂元裕二、そしてスタッフは「最高の離婚」のチームである。真木の勤務先は飲食会社だ。高校時代の友人で同僚でもある女性が、あまりにひどいセクハラを受ける。怒って大暴れした真木はクビになってしまう。
「いい仕事がしたい」と思うのは男性も女性も同じだが、まだまだ男性中心の会社は多い。女性たちはパワハラやセクハラに耐えながら働いている。
だが、人としての尊厳まで踏みにじられては黙っていられない。真木は仲間を集め、会社が経営する店の近くでレストランを開くという反撃に出た。シリアスとユーモアのバランスが絶妙な、働く女性への応援ドラマである。
次は、「家政婦のミタ」の脚本家・遊川和彦とスタッフが再結集した「○○妻」(日本テレビ系)。ニュースキャスターである東山紀之の妻・柴咲コウは夫を支えることにかけては完璧だ。ところが2人は正式な夫婦ではない。柴咲は「契約妻」なのだ。
なぜ契約なのか。「家政婦のミタ」同様、ヒロインの秘密が徐々に明かされるプロセスがスリリングだ。
しかし、それ以上に興味深いのは、契約妻という設定を通じて「夫婦とは何か」を問いかけていることだろう。遊川の脚本、柴咲と東山の好演に支えられて、異色の社会派ドラマとなっている。
有力制作チームの新作、3本目は「流星ワゴン」(TBS系)だ。脚本の八津弘幸とスタッフは「半沢直樹」のメンバー。そこに西島秀俊と香川照之という「ダブルフェイス」「MOZU」のコンビが加わった。
会社はリストラ、息子は家庭内暴力、妻からは離婚届と最低の状況にあった西島は、ふと乗り込んだ不思議なワゴン車で過去へと向かう。人生の分岐点に立ち戻り、修正しようというのだ。
しかも同伴者は若き日の父・香川。西島は誤解していた過去の事実や、後に長年の確執が続く父の意外な側面を知ることになる。同時に、息子の気持ちを分かっていなかった自分にも気づいていく。このドラマは、“こじれた”親子の再生物語なのだ。
西島と香川が向き合う場面は、やはり迫力がある。特に香川が演じる“昭和のオヤジ”は出色の出来だ。SF的な設定に抵抗があると言う人も、一見の価値は十分にある。
(北海道新聞 2015年02月02日)