このところ、なぜか漱石がマイブームとなっています。
わけもなく、モーレツに読み返したい(笑)。
年齢的なこともあるのかもしれません。
主だった作品を連続して読んでから、気がつけば数十年が過ぎています。
今年、日常の中で時間を作って、少しずつ読んでみようと思っています。
もちろん、「吾輩は猫である」から始めてもいいのですが、祖父江慎さんがブックデザインを手がけた「心」からスタートしました。
この本、手にとった時の感触がとてもいいのです。
特にページというか、紙の手触り。
というわけで、1年がかりの、ゆっくり漱石再読ツアーです。
今週の書評本は以下の通りです。
『芸能人の帽子~アナログTV時代のタレントと芸能記事』
中山千夏
講談社
天才子役として登場し、人気女優として、また参議院議員としても活躍した著者。自分について書かれた当時の芸能記事を読みながら、その軌跡を振り返るという一風変わった回想記だ。芸能界の内側と社会の動きをリンクさせながらの検証は貴重な現代文化史でもある。
『ある昭和の家族~「火宅の人」の母と妹たち』
笠 耐
岩波書店
物理教育者である著者は、壇一雄の父親違いの妹だ。明治生まれの母トミは3度の結婚を経験しているが、一雄はこの生母を終生大切にした。本書で回想されるのは、世間から見れば一風変わった大家族の人間模様。日常的に接した者にしか描けない作家の素顔がある。
『時代を刻んだ貌~田沼武能写真集』
田沼武能
クレヴィス
今年86歳になる著者が65年間に撮った肖像の集大成。火鉢の前に端坐する永井荷風。書棚を背にした若き三島由紀夫。カメラの傍らに立つ黒澤明。他に歌舞伎役者、落語家など240名に及ぶ昭和の顔が並ぶ。巻末の取材ノートも当時の彼らを浮かび上がらせて貴重だ。
(週刊新潮 2015.02.05号)