大阪都構想批判に苛立った
「橋下維新」の「放送介入」動かぬ証拠
「グレートリセット」。かねて橋下徹大阪市長(45)は「大改革」を行うと宣言してきたが、言論の自由まで改革、いや改憲するつもりらしい。大阪都構想の是非を巡る住民投票が5月17日に予定されている最中、旗色が悪いと焦っているのか、「橋下維新」はついに「放送介入」に乗り出したのだ。
まずは都構想の現状を、
「朝日新聞と朝日放送が2月7、8日に行った大阪市民への世論調査では、都構想に賛成が35%だったのに対して、反対は44%に達しました」
と、『橋下徹、改革者か壊し屋か』の著書がある在阪ジャーナリストの𠮷富有治氏が解説する。
「反対派には投票に行くつもりがないという人も多く、その分を差し引いて考える必要がありますが、橋下市長にとって苦しい状況には変わりない。いずれにしても、住民投票に先立つ4月12日の大阪府議会で維新が勝てなければ、都構想は事実上、頓挫する可能性が考えられます」
こうして世論に批判的な声があるなか、橋下氏が目下、最大の「ターゲット」としているのが、内閣官房参与を務める京大大学院教授の藤井聡氏(46)だ。
1月27日、藤井氏が都構想における「議論の問題点」を指摘すると、橋下氏は彼を「バカ」「こチンピラ」と罵倒。挙句、橋下維新はメディアに2通の文書を送り付けたのだ。
「藤井を使うな」
一つ目の2月12日付の文書には、
<藤井氏が、各メディアに出演することは、放送法四条における放送の中立・公平性に反する>
こう記されていて、続く同月16日付のものには、
<先日、皆様に藤井聡に関するお願いを送付させて頂き・・・・>
と、藤井氏を呼び捨てにした上で、
<藤井氏が、維新の会、大阪都構想に中立なわけがなく、番組内で虚偽の中立宣言をした藤井氏を出演させる放送局の責任は重大>
とある。要はテレビ局に対して「藤井を使うな」と圧力を掛けているに等しく、これぞ言論封殺と言わざるを得まい。
文書の差出人である同党の松野頼久幹事長は、
「維新の党は行政上の権限を持っておりませんので、圧力というご指摘には該当しない」
こう弁明するのだが、上智大の碓井広義教授(メディア論)は呆れる。
「放送法四条が規定している『公平』とは、意見が対立するテーマの場合、両論を報道すべきという意味です。圧力を掛けて一方の論者を出演させるなというのは、放送法の趣旨を明らかに誤って解釈しています」
最後に、橋下維新の標的となっている藤井氏が憂う。
「橋下氏のような市長や公党顧問といった公権力者が暴挙に出れば、容易く言論の自由は侵されてしまいます。大阪の放送メディアは今、市長の取材拒否等が怖くて自由な報道ができなくなっている。市長側にどれだけ不当な振る舞いがあっても、『いつものことだから』と、取り上げない。結果、言論封殺がさらに助長されています」
こうした橋下維新の「やり口」を許すのか否か――。
住民投票では有権者の良識、すなわちプライド高き大阪の民の「威信」も問われることになりそうだ。
(週刊新潮、2015年3月12日号)