仕事の合間に、村上春樹さんの『村上さんのところ』(新潮社)を、パラパラと読んでいます。
どこから読んでもいいし、どこでやめてもいいので、“ちょっと一休み”にぴったりなんですね。
何ヶ所かで、「親切心」という言葉に遭遇しました。
たとえば、「相手にメッセージを送る時に意識している事は何ですか?」という質問に対し、「親切心です。それ以外にありません」。
また、「どれくらい推敲するのでしょうか?」という質問への回答の中で、「推敲は僕の最大の趣味です。(中略)推敲においてもっとも大事なのは、親切心です」と。
気づいていない「親切心」が、他のページにもあるかもしれません。
うーん、親切心かあ、面白いなあ、などと思いながら読んでいると、あっという間に時間が過ぎてしまうので、危険です。
そもそも、この本自体が、村上さんの、読者への親切心の産物でした。
「週刊新潮」の書評欄に書いたのは、以下の本です。
渡辺京二 『気になる人』
晶文社 1620円
著者が気になるという9人が登場する対談集だ。小さな本屋の女性店主。ミカン栽培をしながら絵を描き続けている兼業画家。共通するのは著者と同じく熊本在住であること、そして瞠目すべき取り組みをフツーに行っていることだ。文化が生まれる「場所」を知る。
鹿島 茂 『大読書日記』
青土社 3888円
週刊誌連載の書評エッセイ、15年分である。対象は純文学から漫画まで300冊を超え、厚さ4㌢の大部だ。一冊でも気になる本を見つけたら、それで十分元は取れる。前書きに曰く、「理由は聞くな、本を読め」。読書本来の醍醐味と知の悦楽がここにある。
藤吉政春 『福井モデル~未来は地方から始まる』
文藝春秋 1404円
地域経済の低迷や過疎化など、地方に関する暗い話題は多い。しかし、福井県はちょっと違う。低い完全失業率、い障害者雇用率、小中学校の全国テストで上位、女性就業率の高さも目立つ。本書は、いくつもの「なぜ?」を手掛かりに、地域再生のヒントを探る。
(週刊新潮 2015.07.30号)