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週刊現代 『あまちゃん』緊急座談会 (前半)

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週刊現代(6月1日号)の『あまちゃん』緊急座談会に参加しました。

まあ、語る3人がそれぞれに熱いこと(笑)。

以下は、前半部分です。


【緊急座談会】
松平定知×碓井広義×中森明夫

じぇじぇじぇ! 
連ドラ『あまちゃん』にハマっちゃったべ


ありえない透明感

松平 『あまちゃん』のロケ地である岩手県久慈市はこのGW、観光客が押し寄せて大盛況だったみたいですね。これから夏にかけてもっと増えるでしょう。
中森 初回から安定して20%超えという高視聴率ですからね。単純計算すればおよそ2500万人が見ていることになる。
碓井 私は長年朝ドラを見続けていますが、『あまちゃん』は10年にひとつの傑作だと思っています。
松平 私も毎朝欠かさず、家内と一緒に見ています。数少ない夫婦団欒の時間になっています(笑)。
中森 私は脚本がクドカン(宮藤官九郎)で、小泉今日子が出るというから、見始めたんです。すると想定を超えて面白くって、毎朝ツイッターで実況しています。それに反応して達増拓也岩手県知事も連絡をとってきてくれたりして、盛り上がりは大変なもの。こういう中高年男性は案外多いんじゃないかなあ。
碓井 老若男女、どの世代にも受け入れられるつくりになっていますよね。能年玲奈演じるヒロイン・アキ、小泉今日子演じる母・春子、宮本信子演じる祖母・夏と3世代の物語を本当にバランスよく織り交ぜていますから。実際うちの母は80代ですが、私と同じように毎朝笑いながら見ています。
中森 私にとってはなによりヒロイン。能年玲奈ですよ。かわいい! 長年忘れていた「透明感」という言葉を思い出させてくれました。
碓井 魅力的な美少女ですよね。いやらしさを感じない。純朴な天然少女を演じてもわざとらしくない。一生懸命で応援したくなる。スター女優の才を感じます。
中森 ヒロインの能年玲奈と、その親友役の橋本愛は10年、映画『告白』ですでに共演しているんです。中島哲也監督はそのキャスティングの際、「中学生の話だから、役者も15歳以下に絞る」とこだわったんですが、唯一オーバーエイジで選んだのが当時16歳の能年玲奈だった。中島監督は当時から「彼女は特別だから」と明言していました。
 そんな美少女が、海女のかすりはんてんを着て海に飛び込み、潜る。その躍動する姿だけでも見る価値がありますよ。
松平 たしかに水しぶきをあげて飛び込むシーンは、清々しい気持ちになりますね。朝見るのに最適だと思います。
碓井 『あまちゃん』の素潜りの映像の力はすごいですよ。見ているだけで楽しい。海底の青い画面は美しいし、ボンベをしないから顔も見える。テレビドラマにおける発明だと思います。
中森 海から上がってきたら全身びしょびしょで、そこもまたかわいい。彼女を見ると幸せな気分になりますよ。

実在の小泉今日子について

松平 東北弁が織り込まれた台詞がまたいいですよね。エスプリが利いていて実に面白い。言葉そのものは平易なんですが、これが実際に掛け合いになると、途端に生き生きとしてくる。特に北三陸の地元民の方々の会話は傑作で、ずっと聴いていたいくらい。毎日一言一句聞き逃すまいとしていますよ。
碓井 ユーモラスな会話劇に定評のあるクドカン脚本ですからね。でも、やはり松平さんのような言葉のプロだとそういうところを気にされるんですね。
松平 一つだけ気になっていることがあるんですよ。皆さん「あまちゃん」の「ま」にアクセントを置いて発音されていますが、それでは「海女」ではなくて「尼」になってしまう。正しいアクセントは「あ」のところだと思うんです。
中森 言われてみればそうですね。
松平 もしかしたら東北の方言なのかもしれませんが、少し気になります。
碓井 方言と言えば「じぇじぇじぇ!」(東北の方言で、驚いたときに使う)ですよね。ヒロインの能年玲奈じだけじゃなく、登場人物がことごとく言うから、不思議に耳に残る。
中森 流行語大賞狙えるんじゃないでしょうか。私もツイッターやメールで頻繁に使ってます(笑)。
松平 しかし主演の能年さんだけでなく、杉本哲太さん、木野花さん、渡辺えりさん、荒川良々さんなど、バイプレイヤーも抜群ですよね。
碓井 キャスティングも本当に素晴らしいですね。おそらくこれほど舞台の実力者が出演している朝ドラはかつてなかった。
 それになんと言っても小泉今日子。かつてのアイドルが本当にいい女優になりました。あのキョンキョンがほとんどノーメークということで、旧来のファンからは少なからず批判もあるそうですが、おかげで40代女性のリアリティを表現できている。
松平 アキが新人海女として地元のアイドルになって、テレビ出演が決まりそうになったとき、あのキョンキョンが自分の娘に向かって「あんたみたいなブスがアイドルになれるわけないでしょ!」って叫ぶんですから、驚きましたよ。
碓井 でも彼女がそんなに激する理由も、物語が進展して、わかってきた。小泉今日子演じる春子は実は「アイドルを目指して上京して夢破れた主婦」だった。だから、たいした意志もなくアイドルになろうとしている娘に嫉妬していたわけです。
中森 アイドル中のアイドルである小泉今日子が、アイドルのなりそこないを演じるんだから、たまらないですよ。にくいキャスティングです。
碓井 上京した時のまま、時間が止まったように保存されている春子の部屋には、当時の春子の憧れのアイドル・松田聖子のポスターがでかでかと張ってある。
中森 その部屋を春子が出て上京したのは1984年という設定なんですが、なぜ1984年なのか。ここが重要だと思うんです。
 現実のその年、キョンキョンは『渚のはいから人魚』で初めてオリコン1位を獲得し、トップアイドルになっています。でもその部屋を埋め尽くすポスターやレコードには、松田聖子や山口百恵はいても、キョンキョンはいない。つまり『あまちゃん』の世界は、「小泉今日子がアイドルとして成功できなかった」パラレルワールド。言わば『あまちゃん』はクドカン版『1Q84』なんですよ。
松平 おお! なるほど!(笑)

(後半へ続く)


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